研究課題/領域番号 |
23K27840
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補助金の研究課題番号 |
23H03150 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤吉 奏 広島大学, IDEC国際連携機構:PHIS, 助教 (20805808)
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研究分担者 |
丸山 史人 広島大学, IDEC国際連携機構:PHIS, 教授 (30423122)
飯野 隆夫 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソース研究センター, 専任研究員 (50550323)
浅田 安廣 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60610524)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
2024年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 水道水 / 微生物群集 / 抗酸菌 / 化学分析 / ネットワーク |
研究開始時の研究の概要 |
日本は人口あたりの非結核性抗酸菌(Non-Tuberculosis Mycobacteria, 以下NTM)症罹患率が世界で最も高い。そのためNTM症は公衆衛生上の課題となっているが、現在のところ有効な治療法はほとんどなく、治療をしても高い確率で再発する。そのため感染拡大の防止には伝播経路の遮断が有効な手段と考えられる。本申請ではNTMの伝播経路を明らかにするため、各浄水処理過程の水に存在するNTMと患者由来のNTMとの遺伝子型別を実施、さらにNTMの増減に関与する水の物理化学的・微生物学的環境条件を見出す。本申請研究は伝播経路の遮断と浄水処理過程に おけるNTM増殖制御に資する。
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研究実績の概要 |
日本は人口あたりの非結核性抗酸菌(Non-Tuberculosis Mycobacteria, 以下NTM)症罹患率が世界で最も高い。そのためNTM症は公衆衛生上の課題となっているが、現在のところ有効な治療法はほとんどなく、治療をしても高い確率で再発する。そのため感染拡大の防止には伝播経路の遮断が有効な手段と考えられる。本申請ではNTMの伝播経路を明らかにするため、各浄水処理過程の水に存在するNTMと患者由来のNTMとの遺伝子型別を実施、さらにNTMの増減に関与する水の物理化学的・微生物学的環境条件を見出す。現在までに84試料に関して、新型シークエンサー(Illumina社MiSeq)を用いて微生物群集構造解析を実施し、試料中の微生物群集構造ならびに群集に占めるNTMの割合に関する情報を取得した。その結果、塩素を加えた後の水は処理方法に関わらず均質な微生物群集であり、微生物の量も季節によりわずかにしか変動しないことが明らかとなった。また、浄水処理方法による微生物の除去は、塩素添加後に特に顕著であるが、原水(河川水・井戸水)と濾過処理後の水では、むしろ濾過後の水の方が微生物量が増加していることもあった。浄水中に含まれるMycobacteriumの割合は、浄水場から離れた場所で採水された試料の方が、塩素を加えてからすぐ採水した試料よりも低くなっていた。Mycobacterium属の代わりに割合が高くなっていたのは、Phreatobacter属(主に綺麗な淡水に生息)であった。浄水過程によるMycobacterium属細菌の量的な変化を捉えるため、Mycobacterium属に特異的なプライマーを用いた定量的PCRを実施したところ、濾過水ではほとんど検出されなかったが、むしろ塩素添加後に増加していることも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに、広島県内5箇所の浄水場にて、各季節(4, 7, 10, 1月)に原水および浄水処理の各工程における水を予定通り集めることができている。同時に試料の化学分析(pH、TOC 、電気伝導度、総アルカリ度、遊離塩素濃度(採取したその場で測定))を測定、水試料に含まれる環境菌とNTMも分離培養した。このように、試料採取を予定通り実施、浄水場ならびに浄水処理過程におけるMycobacterium属についても少しずつ知見が増えてきていることから、本研究課題は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、広島県内4箇所の浄水場にて、各季節(4, 7, 10, 1月)に原水および浄水処理の各工程における水を集める(昨年度、浄水場の1か所が閉鎖された)。同時に試料の化学分析(pH、TOC 、電気伝導度、総アルカリ度、遊離塩素濃度(採取したその場で測定))を測定、水試料に含まれる環境菌も分離培養する。これらのデータを 、ネットワーク解析等の統計解析に用いる環境データとする。各浄水場では、微生物用に最低5 L(原水は2 L)、化学分析用に1 Lの水を採取する。得られた水試料を、ポアサイズ0.22 μmのメンブレン上にろ過濃縮する。DNA抽出およびNTM分離培養には、申請者らが河川水、地下水、 浄水処理前後の水試料に対して有用性を確認している独自の手法を適用する。試料から分離した菌は16S rRNA遺伝子を標的に設計したプライマーを用いてサンガーシーケンサーで塩基配列を取得、非結核性抗酸菌と同定された株については19種類のプライマーセットを用いたVNTR(Vari ableNumbers of Tandem Repeats)型別を実施する。同時に、研究協力者から分与された臨床由来のMycobacterium aviumについてVNTR型別を実施する。また、新型シークエンサー(Illumina社MiSeqおよびMiniSeq)による微生物群集解析を行い、試料中の微生物群集構造ならびに群集に占めるNTMの割合に関する情報を取得する。全細菌群集の解析には16S rRNA遺伝子の、全真核生物群集の解析には18S rRNA遺伝子の保存領域をそれぞれ増幅するユニバーサルプライマーを用いる。得られた塩基配列は遺伝学的な系統解析を行うとともに、取得した環境データと群集構造データをネットワーク解析することでどのような環境要因が群集に影響を与えるかを情報学的に明らかにする。
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