研究課題/領域番号 |
23K27841
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補助金の研究課題番号 |
23H03151 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58020:衛生学および公衆衛生学分野関連:実験系を含む
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
堀中 真野 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80512037)
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研究分担者 |
安田 周祐 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10643398)
酒井 敏行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (20186993)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,330千円 (直接経費: 14,100千円、間接経費: 4,230千円)
2026年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | がん予防 / 先制医療 / MEN1 / RB / 膵NET |
研究開始時の研究の概要 |
遺伝子診断技術の進歩に伴い、がん抑制遺伝子の変異に起因する「がん体質」に対する積極的予防法『先制医療』の重要性が高まっているが、その開発が追い付いていない。多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)は発症前診断が可能だが、膵臓など複数の臓器に腫瘍が多発する。MEN1遺伝子の変異により、内分泌組織においてp27、p18の発現が低下し、RBの失活、細胞のがん化が促進することが明らかとなっている。 本研究では、未発症MEN1遺伝子変異保有者に対する先制医療戦略として、p27、p18の機能を代償しうる薬剤や、RBを再活性化しうる素材の活用について、MEN1で特に頻度の高い膵がんを対象に、基礎医学的に検証する。
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研究実績の概要 |
遺伝子診断技術の進歩に伴い、がん抑制遺伝子の変異に起因する「がん体質」に対する積極的予防法である『先制医療』の重要性が高まっている。多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)は発症前診断が可能だが、膵臓など複数の臓器に腫瘍が多発する。MEN1遺伝子の変異により、内分泌組織において、がん抑制遺伝子RBがタンパク質レベルで失活し、細胞のがん化が促進することが明らかとなっている。研究代表者らは、RBの再活性化によるがんの発症予防を長年研究してきた。本研究では、未発症MEN1遺伝子変異保有者に対する先制医療戦略として、MEN1で特に頻度の高い膵がんの予防を目的とし、RB再活性化戦略の可能性について基礎医学的検証を開始した。 MEN1遺伝子に変異を有するヒトおよびマウスの膵NET細胞株を用い、単層培養系において候補化合物の感受性を検証した。候補化合物は、経口可能なHDAC阻害剤SAHA、がん細胞に対するRB再活性化能を有する、研究室の産学連携成果のRB活性化果実飲料、食用果実の粉末A,B,Cである。まず、二種類のヒト膵NET細胞株と、マウス膵NET細胞株に対し、MEK阻害剤trametinibをリファレンス化合物としながら、個々の候補化合物の曝露濃度や曝露時間を検討し、細胞増殖能や細胞周期への影響を検証した。その結果、曝露条件によっては、各種膵NET細胞に対し、有意な細胞増殖抑制能、細胞周期停止能、細胞死誘導能を示すことが明らかとなった。細胞増殖抑制能が認められる条件において、RBの活性や細胞周期関連分子の発現の変化について、Western blottingによって検証した結果、RBの活性化やRB活性化因子の発現量の増加や、RB不活化因子の発現量の減少が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵NET細胞株の入手にやや時間を要したが、その後は順調に単層培養系における各種評価試験が進行中である。研究室として使用実績の無い細胞株であったが、既報においてRB活性化能が報告されているMEK阻害剤trametinibをリファレンス化合物として使用することで、早い段階で表現型の確認と検証ができた。有効性が期待されるHDAC阻害剤、RB活性化果実飲料、および食用果実の粉末の評価も行いつつ、並行して多検体のスクリーニング系の構築にも着手することができた。
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今後の研究の推進方策 |
【HDAC阻害剤、MEK阻害剤およびRB活性化果実飲料の有効性評価】 引き続き、MEN1遺伝子に変異を有するヒトおよびマウスの膵NET細胞株を用い、単層培養系において候補化合物の作用機序について解析を進める。初年度の実験的検証から、個々の単独効果として、細胞増殖抑制能や細胞周期停止能、細胞死誘導能を有していることが明らかとなった。さらに、それらの分子機序の解明のため、Western blottingによって、RBタンパク質のリン酸化修飾によるRB活性への影響、細胞周期の調節、細胞死に関わる各種分子の発現量に対する影響を評価していく。分子によっては、mRNAレベル、プロモーターレベルでの調節因子についても検証を進める。さらに、個々の候補化合物の組み合わせによる相加相乗効果の有無などの評価を行う。
【新規RB活性化化合物の探索】 膵NET細胞株の中で、リファレンス化合物の評価の結果、G1期細胞周期停止能、およびRB活性化が最も明瞭に認められた細胞株を一株選択した。この細胞株を用い、さらに多検体を評価対象とした新規RB活性化化合物のスクリーニング系の構築を進める。具体的には、G1期において核内で蓄積されるタンパク質と蛍光タンパク質とを共発現する膵NET細胞株を樹立する。RBが活性化すると、DNA合成期であるS期に移行せずに、G1期の細胞が増加する。その特徴を活用し、細胞周期を可視化するツールであるFucciを用いる。上記のスクリーニングで得られたヒット化合物に対し、個別に細胞周期解析やRB活性化能の確認試験を実施する。 さらに膵NETオルガノイド培養系での評価の準備も進めていく。実験系の構築は研究代表者の堀中が全て行い、再現性確認実験を研究分担者の安田と研究協力者の西幹が行う。また、実験データの解釈や既報も含めた議論は、研究代表者と研究分担者の酒井が中心となって行う。
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