研究課題/領域番号 |
23K27867
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補助金の研究課題番号 |
23H03177 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58040:法医学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高橋 史樹 信州大学, 学術研究院理学系, 准教授 (40754958)
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研究分担者 |
金 継業 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (40252118)
瀬戸 康雄 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, グループディレクター (10154668)
小林 寛也 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (00826886)
原山 雄太 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (40969036)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
2027年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2026年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 13,260千円 (直接経費: 10,200千円、間接経費: 3,060千円)
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キーワード | 法薬毒物 / 電気化学発光 / ワイヤレス給電 / センサ / 非接触給電 / 法薬毒物分析 / センサー / オンサイト分析 |
研究開始時の研究の概要 |
電気化学発光(ECL)は高感度分析法として着目されている一方,操作性が比較的煩雑であり,実際の現場分析への適用例は限定的であった。 本研究では日常の給電システムに利用されている非接触給電技術に着目し,薬毒物分析を指向したECL検出法の確立に向けた安全で簡便な「置くだけ分析チップ」を開発する。 ① 給電のための電気的なコンタクトを必要としない新奇分析システムを構築し, ② 法科学分析および法薬毒物分析領域へ展開させる。 開発した現場分析技術の基盤を整えることで,当該分野のみならず,世界情勢の不安定化に伴う現場における化学剤スクリーニングへ展開し,我が国の危機管理体制を一段階向上させる取り組みを行う。
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研究実績の概要 |
ケーブル類を必要とせずに給電できる非接触給電(WPT)デバイスに着目した安全で簡便な分析化学デバイスの開発について検討した。電磁誘導法を利用した給電システムは小型で低コストの給電デバイスとして日常的に用いられており,高い電力伝送効率を有する非接触充電器として汎用されている。このシステムを電気化学発光(ECL)法と組み合わせることで,実際の現場分析でのハードルとなっていた3つの課題(① 簡便性,② 安全性,③システムの容易性)を根本的に解決できる新奇分析チップの開発について検討した。令和5年度では,下記の項目について研究を実施した。 (1)WPT-ECL測定システムの試作と評価 市販の充電器(駆動コイル)に,エナメル線を巻き付けた安全な給電システムを設計し,電気化学およびECLセンサとして評価した。その結果,Ru(bpy)32+をECLエミッターとして用いることで覚醒剤のメタンフェタミンを定量的に検出できることが分かった。このWPTによる給電システムでは,水没した条件など従来の電気化学(発光)測定では使用が困難な使用状況でも安全に分析評価・測定を行うことができた。また,非接触給電回路中の誘導起電力は二次コイルの巻き数を制御することで最適化できるため,麻薬,向精神薬および化学剤前駆化学種に対して定量的に検出可能な測定条件を調査し,基礎的な知見の取得を行った。 (2)WPT-ECL測定法の選択性の向上に向けた取り組み ECLは選択性が比較的低いことが課題に挙げられていた。そこで,分子認識が可能な分離検出を目的とした分子インプリントポリマー(MIP)と組み合わせたWPT-ECL測定への基礎検討を行った。MIPの合成について基礎的な合成方法の最適化と分析化学測定への展開について評価したところ,処方薬および市販薬中に含まれていたジヒドロコデイン,セチリジンおよびブロムヘキシンを選択的に分離検出できるMIP-ECL測定条件を決定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の記載のとおり,覚せい剤であるメタンフェタミンを含む溶液について,WPT-ECL分析システムによって感電の危険性が低減された安全な検出方法としての可能性が示唆された。また,ECL検出原理の本質的な課題である選択性に対して,MIP法と組み合わせることで,分析ターゲット化学種とその類似化学種と区別した検出法としての展開が期待された。そのため,法薬毒分析を指向した安全で簡便なスクリーニング分析法としての基礎および応用研究の遂行状況は上記区分とした。現在,尿や血液などの生体資料中に含まれる複雑なマトリックス成分共存下における選択的で簡便な分析技術としての展開に向けて引き続き検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
WPTによって印加される電極電圧は原理的に高周波となるため,従来の定電位-ECLまたは直流-ECL測定とは異なるECL挙動を示すことが予想された。そこで,現在,WPT-ECL測定回路に安価な整流ダイオードを組み込んだところ,発光強度が劇的に向上することを確認している。ECL反応中で生成した中間体化学種が高周波電圧の印加時に電極反応によって消費されたと推察された。そのため,整流ダイオードの特性とWPT-ECL挙動の関係を詳細に評価することで,反応機構中の中間体化学種の安定性や寿命に関する情報が得られると考えられたことから,その基礎的な評価を行う。 同時に,WPT-ECL分析用の分析チップの試作と評価を行う。現在のWPT-ECLは,二次コイルから得られた誘導起電力をコネクタを介して電極に接続することで計測している。そのため,現場分析での使用を想定して,一層の簡便な分析方法に展開させるため,スクリーン印刷技術を利用した分析チップの設計を行う。ガラスおよびセラミック基板に螺旋状にカーボンをプリントすることで受電コイルを形成させた上で,センシング部分であるカーボン電極部分をスクリーン印刷する。そのプリント基板をラミネートさせることで絶縁部を形成し,電極部分のみ露出することで分析チップを構成する。覚醒剤,麻薬および向精神薬,ならびに化学剤成分を分析対象化学種とした分析チップの評価について,電気化学およびECL挙動の解析と合わせて行う。また,試作した分析チップについて電極としての特性を評価するため,理化学研究所 Spring-8における放射光マイクロイメージングによって分析デバイスとしての堅牢性および安定性を含めた正確な構造決定を行うことで,高い信頼性を要する法薬毒分析への応用を視野に基礎的な評価を行う。上記の分離分析を含めた方法について,結果を取りまとめた上で学会発表および論文発表を行う。
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