研究課題/領域番号 |
23K27878
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補助金の研究課題番号 |
23H03188 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分58050:基礎看護学関連
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研究機関 | 広島大学 (2024) 人間環境大学 (2023) |
研究代表者 |
森田 克也 広島大学, 医系科学研究科(医), 研究員 (10116684)
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研究分担者 |
讃井 真理 広島大学, 医系科学研究科(医), 研究員 (20412330)
土肥 敏博 広島文化学園大学, 看護学部, 非常勤講師 (00034182)
光畑 智恵子 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (10335664)
酒井 規雄 広島大学, 医系科学研究科(医), 教授 (70263407)
吉屋 寿則 人間環境大学, 松山看護学部, 助手 (20909923)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,980千円 (直接経費: 14,600千円、間接経費: 4,380千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 10,790千円 (直接経費: 8,300千円、間接経費: 2,490千円)
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キーワード | 慢性疼痛 / 誘導型PAF 合成酵素(LPCAT2) / LPCAT2阻害薬 / 疼痛の発生と維持(難治化)機構 / 変形性膝関節症 / 血小板活性化因子(PAF) / 誘導型PAF合成酵素(LPCAT2) / 鎮痛作用 / 疼痛の発症と難治化 / 難治性疼痛 / 鎮痛薬開発 / LPACT2 |
研究開始時の研究の概要 |
誘導型血小板活性化因子(PAF)合成酵素(LPCAT2)阻害薬により,『疼痛の難治化防止』が可能ではないかとの独自の発想のもと,理想的な疼痛治療法・治療薬の開発に向け,難治性疼痛の発症と維持におけるLPCAT2の役割について,活性化,発現調節等の多面的アプローチから明確にし,『新しい作業仮説』の妥当性についての実証と,疼痛の難治化防止の観点から新しい画期的な疼痛治療戦略を構築する.さらに,得られた成果を臨床研究へ進む科学的エビデンスを構築することで老人性変化に起因する「高齢者の疼痛疾患の支持・緩和療法」に画期的な新しい治療法・治療薬の開発に資する.
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研究実績の概要 |
血小板活性化因子(PAF)が脊髄で疼痛の発症とその難治化に重要な役割を果たしており,PAF受容体阻害薬や誘導型PAF合成酵素LPCAT2阻害薬が原因の異なる疼痛モデル動物において強力な鎮痛効果を有すること,加えて,LPCAT2の誘導によるPAF産生のpositive feedback loopを断ち切ることで疼痛の難治化防止が実現できる可能性について報告してきた. 本研究では,LPCAT2誘導阻害により,『疼痛の難治化防止』 が可能との作業仮説の実証と,理想的な疼痛治療法・治療薬の開発に向け,LPCAT2の活性化,発現調節等の多面的アプローチから検討する. 原因の異なる様々な難治性疼痛モデル,PAF i.t.投与による持続性疼痛モデルにおいて脊髄LPCAT2発現誘導が1カ月以上にわたり継続して増加していること,この発現増加はpositive feedback loopを断ち切る処置(LPCAT2ノックダウン,LPCAT2阻害薬,PAF阻害薬の頻回連続投与,PAF受容体ノックダウン)により,ほぼbasalレベルにまで減少し,そのまま安定して推移した.さらに,loopを断ち切る処置1カ月後に疼痛モデルを作成してもLPCAT2発現動態は無処置マウスと同様に持続した増加を示し,アロディニア動態とよく関連していた.LPCAT2の発現誘導を介したPAF産生の維持が疼痛の難治化に重要な役割を果たすエビデンスを示すことができた. 膝OAモデル動物において,持続した疼痛行動及び膝関節組織の炎症に伴う腫れ,脊髄でLPCAT2誘導を認めた.前述のloopを断ち切る処置は疼痛行動及びを膝関節の腫れ強力に改善し,LPCAT2誘導を抑制した. 神経障害性疼痛モデル,慢性炎症性疼痛モデルにおいてPAFの上流にLet-7b-5p →TLR7活性化が関与することを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の計画では,原因の異なる各種難治性疼痛モデル動物で誘導型PAF合成酵素LPCAT2による持続したPAF産生が疼痛の難治化に機能している可能性について詳細に検証することを目的とした. 様々な難治性疼痛モデル動物で疼痛行動と脊髄LPCAT2発現動態がよく一致しており,PAF産生のpositive feedback loopを断ち切る処置で疼痛行動とLPCAT2発現上昇は共に消失することが示された.そこで,脳脊髄液中および脊髄でのPAF含量の変動についてELISA kitをもちいて検討をこころみたが,PAF濃度は検出限界以下であった.現在,洗浄血小板凝集を指標としたbioassayによる検証を行っているが予想以上に時間を要している. 加えて,安定した膝OAモデルマウスの作製に時間を要した.このため膝OAによる疼痛,LPCAT2発現誘導に対し,feedback loopを断ち切る処置が有効であることは示されたが,詳細な解析には至っていないした.次年度は,これらの課題を早期に克服して,より直接的なエビデンスを集積し,「難治性疼痛からの解放」にむけた新しい画期的な治療戦略の構築を目指す.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,前年度の実施した研究を引き続き進め,疼痛の発症とその難治化におけるPAF/LPCAT2の役割について分子・細胞生物学的,行動薬理学的に解明する. ①脳脊髄液中および脊髄でのPAF含量動態を詳細に検討し,疼痛の難治化に持続したPAF産生亢進が寄与するとのエビデンスを強固なものにする.②PAF i.t.投与による疼痛発症にNO/cGMP系を介した抑制性グリシン神経の脱抑制が寄与する.疼痛の難治化過程にこの脱抑制が含まれる可能性や抑制性GABA神経の関与について詳細に検討する.③Let-7b-5pおよびTLR7 agonistsによる疼痛反応,LPCAT2動態の詳細な検証から,PAF/LPCAT2 feedback loopにおけるLet-7b-5p/TLR7の役割について明らかにする.さらに疼痛の発症と維持に重要な役割を果たすことが知られているミクログリア/アストロサイト間のクロストークついて詳細に検討し,疼痛の難治化機構におけるPAF/LPCAT2の役割を明らかにする. ④PAF阻害薬は脊髄で鎮痛作用を,末梢組織では抗炎症作用を引き起こす.変形性膝関節症の痛みでは軟骨細胞に炎症などが生じることが原因の一つと考えられており,脊髄での鎮痛作用に加えて軟骨細胞に生じる炎症を軽減することで痛みを和らげる有効な治療薬となる可能性が考えられる.LPCAT2阻害薬の膝関節内投与による疼痛および関節炎症反応軟骨組織の破壊に対する作用を以下のアプローチから検証する.1) 膝関節組織PAF/LPCAT2発現動態および滑液中のPAF動態と,これらに対する阻害薬の作用,2) 培養ヒト軟骨細胞で炎症性物質(炎症性サイトカインや軟骨基質分解酵素MMPsなど)の発現に対するPAFおよびPAF阻害薬,LPCAT2阻害薬の作用から軟骨細胞におけるPAFの役割について明らかにする.
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