研究課題/領域番号 |
23K27971
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補助金の研究課題番号 |
23H03281 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
増木 静江 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (70422699)
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研究分担者 |
松田 和之 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (00647084)
森川 真悠子 信州大学, 先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所, 助教 (10596068)
樋口 京一 信州大学, 医学部, 特任教授 (20173156)
能勢 博 信州大学, 医学部, 特任教授 (40128715)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 認知機能 / 最高酸素摂取量 / 運動トレーニング / 軽度認知障害 / バイオマーカー / インターバル速歩 |
研究開始時の研究の概要 |
我が国は超高齢社会を迎え認知症患者の増加による医療費の社会負担が問題となっている。一方、運動介入はその切り札として期待されているが、その具体的な方策は国内外を問わずほとんど提供されていない。 そこで、本研究では、従来、臨床現場で医療従事者との対面式で行われてきた認知機能の評価を、日常生活の心拍応答から行う方法を開発し、さらに同反応が運動トレーニングによって改善することを実証する。これによって、これまで見逃されてきた認知機能の低下を早期に検出し、認知症予防の運動療法を飛躍的に発展できる。
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研究実績の概要 |
本研究では、従来、臨床現場で医療従事者との対面式で行われてきた認知機能の評価を、日常生活の心拍応答から行う方法を開発すること、さらに同反応が運動トレーニングによって改善するという仮説を検証することを目的とした。我々の先行研究において、65歳以上の高齢者の約20%が従来の評価方法で、軽度認知障害と判定されたので、認知機能健常者を含めその5倍の被験者を募集し、彼らを対象に仮説を検証する予定である。そのために、2023年度は、効率よくデータを収集し解析する認知機能評価システム、すなわち以下の開発を行った。 1) 携帯型運動量・心拍数同時連続測定装置の開発(本装置は次のスペックを持つ):①運動強度測定:3軸の加速度計と高度計(気圧計)の出力から、たとえ坂道や階段を歩行してもエネルギー消費量を正確に測定できるようにした。②心電図波形測定:歩行時の心電図波形を測定・記録し、心拍数を正確に算出できるようにした。また、高齢者では異常心電図を呈することが多く、ノイズと心拍を区別する機能を開発した。 2) サーバー転送用携帯端末アプリの開発:携帯型運動量・心拍数同時連続測定装置に記録された測定データを無線で吸い上げ、サーバーに転送する機能を持つ。さらにインターバル速歩中にゆっくり歩きから速歩に移行したタイミングをゼロ時とし、その前後15秒間の心拍数(心電図波形)、運動強度をトレンドグラフとして携帯端末の画面に表示し、それらをサーバーに転送する機能を開発した。 3) サーバーソフトの開発:携帯端末から送られてきた運動強度、心拍数(心電図波形)の保存と、別途、入力された質問形式による認知機能の検査結果等を保存し、それらをダウンロードできる機能を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自発運動開始時の心拍数応答から認知機能を評価するには、心拍数をbeat-by-beatで精度よく検出する必要があった。しかし、現在、市販されているものでは、心拍数を安定して測定するためにフィルター処理をしており、本研究で重要な運動開始時といった心拍数の過渡応答を精度よく測定できない。さらに、運動量を同時測定できないために自発運動開始のタイミングを正確に同定することができない。そこで、新しい携帯型測定装置を当初の予定通り製作した。 また、2024年度以降の研究実施に向けての準備を進めた。すなわち、開発システムによる検証実験を2024年5月に開始できるよう信州大学医学部生命科学・医学系研究倫理委員会の承認を得た。また、検証フィールドである自治体から実験実施の承諾を得た。
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今後の研究の推進方策 |
1) 開発システムによる仮説検証 高齢者約80名に対して、5か月の介入前後に「3段階ステップアップ歩行法」による体力測定、質問形式(浦上式)による認知機能検査、運動による認知機能改善効果のバイオマーカー(候補)の測定を行う。さらに、全被験者が一定レベル以上の強度の運動を行う機会として、インターバル速歩中のゆっくり歩きから速歩への歩行速度変換時に注目し、この際の運動強度、心拍数応答を「携帯型運動量・心拍数同時連続測定装置」で記録する予定である。 2) 体力向上による認知機能改善効果を反映するバイオマーカーの同定 認知症をはじめ生活習慣病の根本原因は、ミトコンドリアの機能劣化に伴う慢性炎症であるという説が有力である。そこで、本研究において、炎症反応のキー遺伝子であるNFKB遺伝子を標的として、介入前後の白血球の遺伝子メチル化を測定する予定である。 以上から、持久性体力の高い被験者ほど認知機能が高いこと、また、運動トレーニングによって体力が向上すればそれに比例して認知機能が改善し、それが自発運動開始時の心拍数上昇反応によって評価できることが期待できる。さらに、それらの改善効果に比例して、NFKB遺伝子のメチル化が亢進し、その発現が抑制されることが期待できる。
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