研究課題/領域番号 |
23K28016
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補助金の研究課題番号 |
23H03326 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
富田 弘之 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50509510)
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研究分担者 |
兵藤 文紀 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10380693)
岡田 英志 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30402176)
鈴木 昭夫 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (80775148)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | グリコカリックス / 血管内皮 / 毛細血管 / 血管内皮細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は、ヒトの疾患の病理組織診断と研究活動において、これまで見過ごされてきた毛細血管に着目した。申請者らは、内皮細胞とその表面を覆うグリコカリックス(糖衣)からなる内腔面の3次元超微細構造を電子顕微鏡で世界に先駆けて可視化し、その立体構造形態や成分の多様性・不均一性を発見した。例えば、肺と脳の毛細血管では、グリコカリックスの厚さや構成成分が異なることが明らかになった。本研究の目的は、①最新技術で毛細血管を見直し、②その超微細構造の多様性に基づく臓器・個体の恒常性維持や疾患における役割を解明し、③その臨床的社会的意義を明らかにすることである。
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研究実績の概要 |
毛細血管は全身血管の約99%を占め、60兆個もの細胞と情報物質のやりとりをしている。古くから内皮細胞の結合で構成される内腔微細構造は3種に分類されていたが、機能面の解析は進んでおらず、ヒトの疾患でもこの微細構造は意識されていない。しかし、最近、毛細血管及び電子顕微鏡技術が見直され、血管内皮グリコカリックス(糖蛋白からなるゼリー状構造物)の形状や働きが明らかになってきた。申請者らは走査型電子顕微鏡撮影技術を応用し、マウスやヒトの臓器の内皮構造とグリコカリックスの超微細3次元立体構造撮影に成功した。その結果、臓器によってグリコカリックスの厚さが異なることを発見し、様々な疾患や条件下でグリコカリックスの変化と内皮保護との関連を見出した当該年度に以下の6本の学術論文を発表し、重要な研究成果を達成した。大腸がん患者の術前術後の血漿シンデカン-1レベルと予後との関連を明らかにした。組換えアンチトロンビンが横紋筋融解症に伴う急性腎障害を軽減することを動物モデルで実証した。膀胱がんにおけるグリコカリックスの3次元電子顕微鏡画像解析とVVLレクチンを用いた浸潤性マーカーの有用性を示した。オキサリプラチン誘発性末梢神経障害における末梢毛細血管内皮グリコカリックスの損傷を明らかにした。ビンクリスチン誘発性末梢神経障害が血管内皮グリコカリックスの脱落を防ぐことで予防できることを示した。急性膵炎における好中球数の減少が炎症を遷延化させ、遠隔臓器に炎症の波及を引き起こすことを明らかにした。これらの論文は、血管内皮とグリコカリックスの構造と機能に関する新知見を提供し、がん、急性腎障害、末梢神経障害、急性膵炎などの様々な疾患の病態解明と治療法開発に重要な示唆を与えるものである。本研究の成果は、血管生物学や疾患の理解を深め、新たな予防・診断・治療法の開発に繋がる基盤となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調に進んでおり、当初の目的に向けて着実に成果を上げています。申請者らは、世界に先駆けて毛細血管内皮細胞とグリコカリックスの3次元超微細構造を可視化し、その多様性と不均一性を明らかにしてきました。この独自の最新技術を用いて、臓器・個体の恒常性維持や疾患における毛細血管の役割を解明することを目指しています。 当該年度には、6本の学術論文を発表し、重要な研究成果を達成しました。大腸がん患者の予後とシンデカン-1の関連、組換えアンチトロンビンによる急性腎障害の軽減、膀胱がんにおけるグリコカリックスの浸潤性マーカーとしての有用性、オキサリプラチンおよびビンクリスチン誘発性末梢神経障害とグリコカリックスの関係、急性膵炎における好中球数の減少と炎症の遷延化・波及などを明らかにしました。 これらの成果は、血管内皮とグリコカリックスの構造と機能に関する新知見を提供し、様々な疾患の病態解明と治療法開発に重要な示唆を与えるものです。研究課題は着実に進歩しており、疾患の概念を変える可能性を秘めた基盤となりうる成果を生み出しつつあります。今後も、この多様性の臨床的・社会的意義を明らかにすべく、研究を推進していく予定です。
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今後の研究の推進方策 |
さらに、今後独自の最新技術を用いて毛細血管の可視化と超微細構造の多様性を解明することを目指します。走査型電子顕微鏡によるマウスとヒトの全臓器・組織の毛細血管の撮影と解析、レクチン染色による毛細血管グリコカリックスの構成成分の同定と分布解析、シングルセルRNAシークエンスを用いた内皮細胞群間の遺伝子発現解析を行います。さらに、放射線科と連携した代謝イメージングにより、臓器障害や老化の評価を行います。 次に、疾患モデルを用いて血管内皮グリコカリックスの機能・役割を解明します。血管内皮特異的グリコカリックス減少遺伝子改変マウス(Ext1-CKOVE)を用いて、炎症と癌における血管内皮グリコカリックスの役割を解析します。自然発症大腸癌Apc Minマウスとの交配によるヘパラン硫酸減少Ext1-CKOVE/Apc Minマウスを作製し、腫瘍径・数の比較を行います。腫瘍組織の網羅的遺伝子発現解析とフローサイトメトリーによる自然免疫系・獲得免疫系の解析を行い、抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤の治療効果も検討します。 最後に、血管内皮とグリコカリックスを標的とした新規治療法の開発に取り組みます。抗がん剤オキサリプラチンによる末梢神経障害に対する血管保護候補剤(フサン)の効果検証を行い、他の抗がん剤の副作用に対する血管保護による抑制効果も検討します。 これらの研究を通じて、毛細血管の超微細構造の多様性と機能を明らかにし、疾患の概念を変える可能性のある基盤を構築します。研究成果を臨床応用につなげ、健康長寿社会への貢献を目指します。
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