研究課題/領域番号 |
23K28021
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補助金の研究課題番号 |
23H03331 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分59040:栄養学および健康科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
下川 功 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (70187475)
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研究分担者 |
森 亮一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (30509310)
小松 利光 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 技術職員 (70380962)
千葉 卓哉 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (40336152)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2024年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2023年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 老化制御 / カロリー制限模倣剤 / 海洋微生物抽出物 |
研究開始時の研究の概要 |
摂食カロリー制限(CR)の効果は、実験動物だけではなく、ヒトの老化遅延、健康寿命延伸にも期待できる。しかし、ヒトでは長期間CRを継続することは難しい。本研究は、摂食量を制限することなくCRの効果を模倣する化合物や薬剤(CR mimetics, CRM)を探索する。独自に開発したCRM 探索システムを用いて、長崎大学固有の海洋微生物抽出物ライブラリーをスクリーニングし、特許性を有するヒット化合物を同定する。さらに、東大創薬機構コアライブラリーを用いたスクリーニングを加え、ヒット化合物によって活性化されるシグナル、転写因子複合体を解析することによって、動物の長寿命化シグナルを解明する。
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研究実績の概要 |
カロリー制限(Calorie restriction, CR)の効果を模倣する化合物を同定するために、以下を行なった。 1) スクリーニング細胞株の再構築:既存のスクリーニング細胞株の遺伝子コンストラクトに疑義が生じたため新たにスクリーニング細胞株を再構築した。マウス Hepa 1-6細胞株にpNLベクターを使用した4種類のプラスミド(Control-1 , Control-2, Longevity responsive element (Lo-RE2 , Lo-RE4))をLipofectamine 3000(Invitrogen)を用いて遺伝子導入し、ハイグロマイシンB溶液を添加したDMEM培地で遺伝子導入されている細胞を選別した。コロニーを形成した細胞を分散し、セルソーターにかけ、96ウェルプレートで、増殖してきた細胞を分取した。分取した細胞からDNeasy Blood & Tissue Kit (QIAGEN) を使用してDNAを抽出した。goTaq Master Mixes(Promega)を用いてPCRを行い、電気泳動にて目的遺伝子が導入されていることを検証した。得られた細胞株を培養し、スクリーニングを開始する準備を行なった。 2) マウスコロニーの確立:Lo-RE-SEAP過剰発現マウスは、凍結胚から戻し、個体を得る準備を開始した。CR群の作成にあっては、休日における給餌や餌の計量などの人的労力を削減するために、従来から行なってきた計量した餌を毎日給餌する方法から、時間制限給餌に変更するため、制限給餌器を導入することとした。 3)Lo-REに結合するタンパク質、転写因子複合体の解析:Lo-REには、HNF4aやFoxO転写因子からなる複合体が結合することが予測されていた。CR刺激によって、乖離するタンパク質が存在し、新たな転写因子が結合する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
我々が作成したCRMスクリーニング細胞株に導入した遺伝子pDFCR-RE2-SEAP及びpSEAP2-Control(Chiba T他、BBRC 2010)のコンストラクトの中に、購入元の企業の特許について、その使用許可に疑義があったため、遺伝子配列等の問い合わせを行なった。しかし、明確な返答がなかった。スクリーニングされたヒット化合物を得た場合、最終的にその企業との遺伝子コンストラクトの使用に関連して問題が生じる可能性を除外できなかったため、新たにスクリーニング細胞株を調整することにした。この際、ヒット化合物が得られた場合、ヒト細胞への毒性が大きな問題となるため、新たに作成する細胞株をヒト由来のHepG2細胞とした。しかしながら、HepG2細胞に対して、遺伝子導入の効率が悪かった。原因として、導入遺伝子がマウス遺伝子配列を用いたためとも考えられたので、最終的にマウス肝臓癌細胞株であるHepa1-6に変更した。このように、スクリーニング細胞を新たに調整する必要が生じたため、研究がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
1)CRMスクリーニングの開始:CRM探索細胞、INCell Analyzerを用いて、海洋微生物抽出物ライブラリーセット、東大創薬機構コアライブラリーをスクリーニングし、ヒット抽出物、ヒット化合物を探索する。1次ヒット抽出物が得られた場合、中規模培養、大量培養並びに抽出物の大量調整を行い、その活性を再確認する。大量サンプルからの活性化合物の単離、同定には、1次分画に中圧液体クロマトグラフィー分取システムに順相カラムを組み合わせた方法を用い、2次分画に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析・分取システム等の方法を用いてサンプルの活性画分を絞り込む。3次分画以降は、候補となる活性物質の性状に応じて、個別の条件で核磁気共鳴スぺクトルや質量分析によって化合物を同定する。 2)CRM候補のin vivo解析:ヒット化合物が得られた場合、CRM探索マウスに投与し、血中SEAP活性が上昇することを確認する。野生型マウス、Foxo1、Foxo3遺伝子欠失マウスにヒット化合物を投与し、肝臓におけるストレス耐性、インスリン感受性、発癌モデルを用いた癌抑制等を指標として、CRの効果を動物個体レベルで模倣していること、その効果における FoxO1、FoxO3の必要性を検証する。肝臓組織から調整したタンパク質に、プロテオミクスを用いて、シグナル伝達によって変化するタンパク質 、リン酸化されるタンパク質を同定し、活性化シグナルを探索する。さらに、肝臓のシングルセル解析を用いて、細胞型ごとにRNA-シークエンシング解析を行い、細胞型に特異的な遺伝子発現変化を同定することによって、作用メカニズムを予測する。 3)転写因子複合体解析:CRマウス肝臓の核抽出物に対して、DNAプルダウンアッセイを行い、免疫ブロットや質量分析による転写因子複合体構成タンパク質の解析を行う。
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