研究課題/領域番号 |
23K28071
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補助金の研究課題番号 |
23H03381 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分60060:情報ネットワーク関連
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
リム 勇仁 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (90435793)
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研究分担者 |
HE Cuiwei 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20914881)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
17,940千円 (直接経費: 13,800千円、間接経費: 4,140千円)
2026年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 論理リンク制御 / ネットワークコーディング / フォトンカウンティング / 全二重無線通信 / 光無線通信 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代の情報通信基盤であるBeyond 5G/6Gの想定するサービスのうち,固定・移動する無線装置同士が連携し相互作用して提供するサービスのデータフローを収容する高度な通信方式を実現するための伝送モード方式,協調中継戦略等論理リンク制御を管理する技術である.本研究の目的は,超低遅延・超省電力化を実現する論理リンク制御の動的処理機能の技術基盤を確立することである.本研究の対象とする技術は,アナログネットワーク符号化技術を導入した全二重無線通信,高SNRで変調による広帯域化が可能なフォトンカウンティング技術を活用した光無線通信,それぞれに通信プロトコルを実装した実証環境を構築する.
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研究実績の概要 |
2023年度は,自律協調型無線システム技術・自律的な通信メディア選択技術のタスクを実行した.一つ目のタスクでは,全二重無線通信モードを導入する場合,各端末は周囲の複数の端末と互いのフレームの送受信を同時に行うことを利用し,端末間干渉の影響を把握しつつ同時送信と順次送信の割合の適切化(MCST)を行うMACプロトコルを設計した.LoRaネットワーク上で自律飛行ドローンにおける新たなmMCST/LoRaプロトコルを提案し,既存のCSMAプロトコルと比較してスループットが50%向上することを達成し,非常に低い伝送遅延とエネルギー消費であることを明らかにした.二つ目のタスクでは,2つのAIベース方式を提案した.マルチホップ無線ネットワークにおけるファクターグラフベースの深層強化学習(fDRL)方式を組み込んだ新しいパス選択アルゴリズムを提案した.本方式では,非常に高いスループットと短い計算時間となることを明らかにした.また,産業用IoTネットワークにおけるタスクのオフロードを決定するための精度を維持しながら,トレーニング時間を大幅に短縮するための広範な学習システム(BLS)方式を提案した.一方,光無線通信(OWC)システムの伝送データレートを向上のため複数のアプローチを試みた.なかでも,全方向性に近い光アンテナを構築するために市販の蛍光ファイバーを使用し,アバランシェ光検出器(APD)と組み合わせたOWCシステムでは送信データレートが80%向上することを示した.また,データレートをさらに高めるために,複数入力複数出力(MIMO)送信の使用も検討し,2つのLED送信機が独立したデータストリームを送信するように構成された送信システムでの角度ダイバーシティアパーチャ(ADA)受信機の使用を実証することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マルチホップ無線ネットワークによる多様な高速・超低遅延な種々のユースケースで通信に関する要求条件を満たしうることを明らかにするため,自律飛行ドローン以外にも,産業用IoT分野のマルチサーバー無線ネットワークにおける大容量ネットワークと低遅延の管理にAI機能を統合するためにMACプロトコルを拡張する提案を行った.一方,マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)は,遅延に敏感なアプリケーションをサポートできるため,クラウドサービスの計算をネットワークのエッジで実行することができる.そのため,MECはワイヤレス ネットワークを利用してあらゆる種類のIoTデバイスを接続し,リアルタイムでデータを迅速に分析できる.ただし,データを配信するために接続されたデバイスが爆発的に増加すると,デバイスが適切なMECサーバーを選択することが不確実になるため,ネットワーク容量が低下し,遅延が長くなる.本研究では,マルチMECサーバー無線ネットワーク(MSWN)におけるネットワーク内の各デバイスがMECサーバーと直接通信できる無線通信ネットワークの一種として定義し,このMSWNのネットワークパフォーマンスを最適化するための広範な学習システム(BLS)の調査を行った.さらに,OWCに関しては,通常,伝送帯域幅が数メガヘルツに制限されるLEDベースのOWCシステムのパフォーマンスを向上させるために2つのスペクトル効率の高い技術の組み合わせを検討した.特に,スペクトル効率の高い周波数分割多重(SEFDM)信号と非直交多元接続(NOMA)を組み合わせ,数値シミュレーションによるパフォーマンスの研究を行い,NOMAの最適電力割り当て係数がSEFDMのスペクトル節約係数と高い相関があることを示した.最適な電力配分係数を考慮することにより,送信データレートが大幅に向上することを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,4つのタスク(自律協調型無線システム技術・適応ネットワーク符号化通信技術・自律的な通信メディア選択技術・LLCの動的処理機能の技術基盤)を実行する.一つ目のタスクでは,産業用IoT分野のマルチサーバー無線ネットワークによる多様な高速・超低遅延が必要となる様々なユースケースにおいて提案したMCSTプロトコルの導入を行い、通信に関する要求条件を満たしうることを明らかにする.二つ目のタスクでは,これまでハードウェアで提案されている適応アナログネットワーク符号化技術である(Network Spread Coding)を応用したMACプロトコルを開発する.マルチホップ無線ネットワークにおける省電力消費・低遅延化・高いスループットを達成するため,ネットワーク符号化(Network Coding)を用いたチェーンネットワークトポロジと三角形ネットワークトポロジを活用してMACプロトコルを設計し,種々のユースケースで通信に関する要求条件を満たしうることを明らかにする.三つ目のタスクでは,超多様な無線通信メディアを組み合わせて超低遅延・超省電力な通信を実現するために,通信状況の把握と予測の性能を向上させる機械学習や推論を行う技術,および,そうした機械学習や推論そのものをコンパクトにする基盤技術を設計する.主に,全二重無線通信メディアと光無線通信メディアを融合させて,経路を含めて通信メディアを自律的に選択するための機械学習のモデルを構築し,通信メディアの動的配備を展開するMACプロトコルを設計する.四つ目のタスクでは,上記の3つのタスクの技術を統合し,自律飛行ドローンや自動運転車,遠隔医療支援などに活用されるサービス・コンテンツを支える超低遅延・超省電力な通信方式のMACプロトコルを提供することで,その上位層である論理リンク制御層における新たな動的処理機能の技術を開発する.
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