研究課題/領域番号 |
23K28169
|
補助金の研究課題番号 |
23H03479 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61050:知能ロボティクス関連
|
研究機関 | 福井工業大学 |
研究代表者 |
古澤 和也 福井工業大学, 環境学部, 教授 (00510017)
|
研究分担者 |
清水 正宏 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 教授 (50447140)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
14,170千円 (直接経費: 10,900千円、間接経費: 3,270千円)
2026年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
|
キーワード | バイオロボット / 大脳オルガノイド / 再生筋組織 / 自発動作 / 学習 / 筋細胞アクチュエーター / 組織工学 / 生体材料 / 運動制御 / 脳オルガノイド / 自律運動の学習 / 自己改変 / 自己組織化 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究の目的は、生きている細胞でできたロボット(バイオロボット)に、自発的な仕事を学習させるための教育技法を確立することです。そのために、自発的に電気刺激を生み出す大脳オルガノイドを、電気的な刺激によって動く筋細胞アクチュエーターに接続させたバイオロボットを構築します。そして、このバイオロボットに体の変え方を覚えさせる様々な教育技法を確立します。もし、バイオロボットが自発的な運動を学習しそれを自発的に再現することができるようになれば、それは弱い力が必要な環境で、不要なものを除去したり、あるいは必要なものを運搬したりする自発的なロボットとして利用できと期待しています。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生きている制御装置である大脳オルガノイド(CO)を、生きているアクチュエーターである筋細胞アクチュエーター(MCA)に接続して構築したバイオロボットに、自発的な動作を学習させる教育技法を確立することです。そのためには、バイオロボットにMCAの形の変え方を教えるための学習装置や、学習効果を評価するための技術開発が必要となります。令和5年度はそのための、装置開発や技術開発に取り組みました。 既に私達の先行研究によりバイオロボットを構成するCOとMCAが神経細胞を介して接続していることがわかっています。また、この接続によりバイオロボットの姿勢(MCAの収縮状態)が一定の状態に維持されていることを示唆する結果も得られています。これまでに分かっていることから、もしCOとMCAとの接続が双方向の接続となっているのであれば、MCAの形状をCOが監視していることが予測されます。もしこのような双方向の接続があるのであれば、バイオロボットの身体であるMCAの形を伸ばしたり、曲げたりと強制的に変形させれば、その形状の変化をCOが読み取り、その変化を持続的に与え続ければ、COにその形状の変化を記憶させることができるはずです。これによって、バイオロボットに姿勢の変え方を学習させることができると我々は考えております。そこで、MCAの形状を持続的に変える装置の開発に取り組みました。すでに、試作装置の開発とその試験を実施済みであり、無菌状態を維持した状態でMCAの形状変化の実験を持続的に行う準備を整えることができました。 一方で、本研究課題の仮説が正しいことを示すためには、バイオロボットの学習効果を評価する技術の開発も必要不可欠です。そのために、COから出力される情報の検出装置の開発を分担研究者と並行して進め、試作品の作製とその試験を実施し、神経発火活動を検出することに成功しました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、COとMCAが神経を通して双方向の接続をしているのであれば、MCAの変形をCOに検出させることができるはずであるという仮説に基づいて研究を進めています。この仮説を検証するためにはバイオロボットのMCAを無菌環境を維持した状態で変形させる装置をつくる必要があります。そのために、自作の治具と自動ステージを組み合わせたMCAの変形装置を開発しました。すでにCOを接着させていないMCAのみの実験において、無菌状態を維持した状態で毎日、1 mmの変位の変形を30回与える実験を行うことができております。再生筋組織の組織形態や細胞生存率などへの効果は変形の有無で有意な差は検出されませんでしたが、肉眼で確認できるくらいの変形を持続的に与える実験が可能であることを実証することができました。 一方で、バイオロボットに接続されているCOから出力される情報を読み取る装置の開発も本研究の目的の達成のために必要不可欠です。こちらについては、分担研究者の清水教授と共同で研究を遂行中です。具体的な役割として、古澤がCOの作製と電気生理学的な測定の要件などを助言し、清水教授が具体的な装置の設計や開発を進める方法で研究を進めています。昨年12月に長浜バイオ大学で作製した試作装置を福井工業大学に持ち込み、細胞外電位計測システムと統合することで、脳オルガノイドの神経発火活動を測定することに成功しております。 以上のように、令和5年度は本研究課題の目的を達成するために必要な基本的な実験技術の開発に注力し、そのための準備を整えることができました。それぞれ開発した装置については、さらなる改良が必要な点もあり、まだ完成段階とは言えませんが、どちらの装置でも実施したかった実験の目途が立ちました。今年度いよいよバイオロボットに自発的動作を学習させる、本研究のメインテーマに取り組むことができるようになったといえます。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究により、バイオロボットの学習装置の試作機が準備できています。まずはこの学習装置を使用して、バイオロボットに自発的な動作を学習させることができるかどうかの実証実験を進めます。バイオロボットが自発的な動作を学習した場合には、伸長やねじりなど、他の動作も学習させることができるのかどうかについても検証を進めます。もし、MCAの持続的な変形ではバイオロボットに自発的な動作を学習させることができない場合には、電気的な刺激をCOに持続的に与え、それによって自発的な動作が再現されるかどうかについての研究を進めます。この際、COに対して再現性良く電気刺激を与える必要があるため、あらかじめCOに電極を固定しておく方法など様々な方法を検討します。 現在私たちが構築しているバイオロボットはMCAにかかる張力を持続するため4つのピンに固定されているため、培養液中で自由に動作することができません。バイオロボットが自発的な動作を学習した際には、バイオロボットの固定基盤の改良を行い、培養液中で自由に泳いだり歩行したりできるような機構を持つ骨格へと再設計する研究も遂行したいと考えています。 また、COからの信号を取得するための装置開発も分担研究者と共同して進め、可能であればMCAに接続したCOから信号を取得するシステムの開発にも挑戦します。MCA自体が自発収縮運動により振動してしまうためこのような振動に影響されないような測定システムを開発します。
|