研究課題/領域番号 |
23K28175
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補助金の研究課題番号 |
23H03485 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
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研究機関 | 信州大学 (2024) 徳島大学 (2023) |
研究代表者 |
水科 晴樹 信州大学, 学術研究院繊維学系, 准教授 (20389224)
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研究分担者 |
山本 裕紹 宇都宮大学, 工学部, 教授 (00284315)
山内 泰樹 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (60550994)
山本 健詞 徳島大学, ポストLEDフォトニクス研究所, 教授 (70402469)
陶山 史朗 宇都宮大学, オプティクス教育研究センター, 特任教授 (70457331)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2026年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 8,060千円 (直接経費: 6,200千円、間接経費: 1,860千円)
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キーワード | 空中像 / 視認性 / 操作性 / 奥行き知覚 / 視覚メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
非接触インタフェースとしての空中ディスプレイが普及しつつあるが,その視認性と操作性は従来のタッチディスプレイには及ばず,それらと同様に扱うためには課題が多い.これは,空中ディスプレイが我々にとって新奇な視覚体験であり,人間が脳内でそれをどのように処理し,解釈するかの理論が確立されていないことが一因である. 本研究では,視認性を決定する「知覚」と操作性を決定する「行動」が脳内の別経路で処理されることを考慮し,空中ディスプレイの視認性と操作性を高めることで現在の空中ディスプレイが抱える問題の解決を図るとともに,空中像に対する知覚処理機構の理解を進め,各種システムに応用可能な理論の構築を目指す.
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研究実績の概要 |
2023年度は,(1)空中ディスプレイの視認性を高める,と(2)空中ディスプレイの操作性を高める,の2点について,以下の通り研究を実施した. (1)視認性に関しては,我々のこれまでの研究から,知覚される空中像の奥行き方向の位置が空中像の結像位置から大きくずれる可能性を考慮し,知覚位置の測定実験を行った.先行研究では,視距離が2-3 m程度の場合に,結像位置よりも奥に貼り付いて知覚されるという傾向が見られたが,手を延ばして触れることができる0.5 m程度の短距離でも,空中像が結像位置よりも奥に貼り付く傾向があることが明らかになった. (2)操作性に関しては,多感覚情報のフィードバックによる操作性の向上と,知覚される位置のずれを考慮したシステムの検証を行った.多感覚フィードバックについては,空中像に触れた瞬間に像の色が反転する(視覚),ビープ音が鳴る(聴覚),足裏のモータが振動する(触覚)の3種類について,各々のフィードバックだけでも操作性の向上に対して効果があるが,それらの組み合わせによりさらに操作性が向上することが明らかになった.視覚・聴覚・触覚の3つのフィードバックがある場合に最も操作性が向上し,感覚間での干渉もほとんどないことが明らかになった.また,空中像に触れる指先以外に対する触覚フィードバックも操作性の向上に対して有効であることが明らかになった.また,(1)で明らかにした知覚位置のずれを考慮し,結像位置からずれた位置でシステムが反応する場合の操作性を調べた.その結果,知覚位置のずれにも関わらず,物理的な結像位置に手を延ばした場合に反応するケースが最も操作しやすいという結果を得た.このことは,人間の脳における知覚と行動の処理経路の乖離を反映しているとも考えられ,今後のさらなる検討が必要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)視認性については,空中像の知覚される奥行き位置についてほぼ明らかにすることができたと考える.結像位置よりも奥に知覚されるという傾向は,視距離や被験者によらずかなりロバストであることから,空中ディスプレイの設計で考慮すべき点であると言える.一方,視線の誘導による知覚位置の安定化については着手できなかったが,先行研究の調査により安定化のための方策のアイディアが得られており,2024年度早々に効果を確認する予定である.色の見えのモードの影響については,表面色・開口色モードになる色・輝度条件を明らかにすることにかなりの時間を要し,空中像の奥行きについての実験までは実施できなかったが,こちらも2024年度に実施する予定である. (2)操作性については,多感覚フィードバックの効果を明らかにすることができたとともに,空中像の知覚位置のずれに操作性が影響されないという点も明らかにすることができ,予想以上の成果を挙げることができたと考える. 以上を総合すると,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については,当初の計画通りに進める予定である. (1)視認性に関しては,空中像の視認性及び奥行き知覚に関する検討を引き続き行う.まず,注視点や絵画的要因の影響を明らかにするために,運動視差などの付加的な情報が視認性と奥行き知覚に与える効果を検証する.また,空中像と背景の輝度と色の組み合わせについて,視認性と奥行き知覚に関する検討を行う.これまでに,空中像の色の見えのモードが開口色もしくは表面色になる条件を探索してきており,この結果をもとに研究を進める.さらに,これらで得られた知見をもとに,視認性向上のための空中ディスプレイのパラメータ最適化を目指す. (2)操作性に関しては,今後はまず視覚情報単体の場合の時間特性の解明を目指す.具体的には,空中像に実際に触れるタイミングと,システムが反応するタイミングのずれがどの程度許容できるのか,また,許容できるのであれば,ずれの有無が操作性にどのように影響するのかを明らかにする.また,(1)の視認性と同様に,空中像に運動視差などの情報を付加した場合に操作性にどのような影響があるかを明らかにする.さらにこれらの知見をもとに,操作性向上のための空中ディスプレイのパラメータ最適化を目指す. 以上で得られた知見を総合して,最終的に空中ディスプレイの知覚処理モデルを構築し,空中像の知覚や空中像に対する行動に関する理論を検討する.
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