研究課題/領域番号 |
23K28187
|
補助金の研究課題番号 |
23H03497 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62010:生命、健康および医療情報学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岩見 真吾 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (90518119)
|
研究分担者 |
野下 浩司 九州大学, 理学研究院, 助教 (10758494)
山口 諒 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (80812982)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2024年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2023年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
|
キーワード | データ解析 / 数理モデル / 新型コロナウイルス感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
ウィズコロナを目指した現在、COVID-19に対する感染症対策では、ソーシャルディスタンスの確保や感染者隔離、大規模イベントの取り止め等の行動制限が重要な位置を占めることは明らかである。このようなヒトを含む宿主の行動変容は、接触パターンに代表されるように感染宿主の周辺環境を急激に変えることに直結する。本研究課題では、数理情報科学の視点から『環境と宿主とウイルス』の3者が階層をまたぎ、複雑に相互作用することで織りなす進化動態を最先端数理科学技術と人工知能技術を融合することで網羅的かつ定量的に解明していく。
|
研究実績の概要 |
生体内のウイルス感染動態は常(偏)微分方程式で記述し生体内数理モデルのパラメータである[ウイルス産生率:p]と[細胞変性能:δ]によりウイルス性状を特徴づけた。次に、数理モデルから計算されるウイルス排出量の関数として [感染性期間]と[接触あたりの感染確率]を定義して宿主の感染病態が定式化した(ウイルス-宿主の階層のモデリング)。また、宿主環境を[他宿主との経時的接触パターン]と考え、接触者追跡のデータ分析で利用される負の二項分布などで定式化した(ネットワーク上や実世界での接触パターンなど拡張は容易である)。なお、宿主環境に依存した感染伝播(適応度)は“感染者あたりの2次感染者数[R0]”として計算した(宿主-環境の階層のモデリング)。今後は、ウイルス性状の進化は、感染病態を変化させ、宿主環境に依存する適応度を介して、さらにウイルス性状を進化させる。このように、ウイルス-宿主-環境の相互作用を統合するマルチスケールモデルを駆使すれば感染症対策が駆動するウイルスの進化予測を分析する高速シミュレータが開発できると考えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
温暖化や都市化など環境変動を考慮したウイルス進化の研究は皆無ではないが、これまで進められてきた研究の多くは、環境-宿主-ウイルスの階層性を全く(あるいは一部しか)考慮していないという問題がある。リアルタイムに進んでいる新型コロナウイルスの進化では、感染拡大に対する感染症対策が宿主の行動変容を促し、急激に宿主環境が変化することで、すぐさまウイルス進化にフィードバックがかかる。ここでは、ウイルス-宿主-環境の相互作用を統合するマルチスケールモデルを開発することに成功してシミュレーションを実現するためのシミュレータが開発できた。AI技術を活用することで、新型コロナウイルスの進化が潜伏期間や無症候率などの臨床的な症状やヒトの行動と複雑に関連していた可能性を明らかにした。実際、武漢株、アルファ株、デルタ株、オミクロン株に感染した合計274人の臨床データを順番に解析していくと、変異株の出現に伴い、生体内におけるウイルス排出量のピークは増加し、早まる傾向に進化する様子が見られた。また、変異株の出現とともに短くなった潜伏期間や高くなった無症候率も、変異株を進化させる選択圧と密接に関連していることが判明した。
|
今後の研究の推進方策 |
進化シミュレーションを実施する場合、想定している遺伝的アルゴリズムはメタヒューリスティクな最適化手法であり、広範な問題に適用可能である。一方で、ウイルス性状のパラメータ推定に利用する場合、しばしば探索するパラメータ空間に複数の局所最適解がある(=多峰性の適応度地形をもつ)ため、ハイパーパラメータの設定次第では局所解に陥り大域最適なパラメータから逸脱する可能性がある。そこで適応的な個体群サイズ管理や多様性制御をおこなうハイブリッド型遺伝的アルゴリズムの検討もおこなう。また、別の推定器(ガウス過程回帰やニューラルネットワークなど)でウイルス性状のパラメータを推定しつつ,推定器のハイパーパラメータの推定に遺伝的アルゴリズムを利用することも検討する。これらにより(非大域最適な)局所解への収束を防ぎつつ探索空間に合わせた効率的な推定が可能になる。
|