研究課題/領域番号 |
23K28192
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補助金の研究課題番号 |
23H03502 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分62020:ウェブ情報学およびサービス情報学関連
小区分60080:データベース関連
合同審査対象区分:小区分60080:データベース関連、小区分62020:ウェブ情報学およびサービス情報学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐野 幸恵 筑波大学, システム情報系, 准教授 (60580206)
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研究分担者 |
高安 美佐子 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (20296776)
岡田 幸彦 筑波大学, システム情報系, 教授 (80432053)
礪波 亜希 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (80793760)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2027年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2026年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
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キーワード | ソーシャルメディア / ネットワーク分析 / 価値共創 / 価値共破壊 / 誹謗中傷 / ネットワーク科学 / 計算社会科学 / コミュニティ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、SNS(Social Networking Service)における誹謗中傷といった負の側面と、孤立緩和などの正の側面を、サービスサイエンスにおける「価値共創」と「価値共破壊」と捉え直し、これらを統一して定量的に評価する数理基盤の構築を行う。具体的には、Twitter(現 X)やRedditといった幅広く使われているSNSから実データ収集し、関連する分析をいくつも積み上げる。積み上げた分析結果から、共通する性質を見出した上で、その性質を表現する数理モデルを構築する。構築した数理モデルを用いることで、SNSにおける関係性を表現する定量的指標を新たに提示する。
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研究実績の概要 |
デマ拡散や誹謗中傷といったSNS(Social Networking Service)における負の側面が社会問題になって久しい。一方で、孤立の緩和や新たな価値創造などSNSには正の側面も確かに存在する。本研究では、SNSにおける正負の側面をサービス研究における、SNSに対する価値共創と価値共破壊と捉え直し、これらを定量的に評価する数理基盤の構築を行う。具体的には、価値共創は、SNSにおける正の側面で、プラットフォームとその利用者が互いにその価値を高め合うことに対応し、逆に価値共破壊とは、SNSにおける負の側面で、プラットフォームとその利用者がその価値を毀損し合うことに対応する。 これら価値共創・共破壊は真逆の概念ではあるもののSNSにおける情報流通を、情報をやり取りする人をノード、その間の情報の流れをリンクでつなぐネットワークとして捉えれば、これらを共通して扱うことが可能となる。そこで、本研究では、SNSにおける正負両面の実データ分析をいくつも積み上げ、共通する性質を見出した上で、その性質を表現する数理モデルを構築する。構築した数理モテルを用いることで、SNSにおける価値共創・共破壊を表現する定量的指標を新たに提示する。 本年度は、まずは価値共創の好例といえるX(旧 Twitter)上での風しんに関する情報ネットワークの分析を行なった。風しんに関する情報ネットワークでは、その当事者や家族、医療従事者、そしてNHKなどのマスメディアがお互いに情報を引用する形で支え合って、情報拡散を行っている実態を明らかにすることができた。その結果をPLOS ONEに掲載し、オープンアクセスで公開することができた。その他のネットワークに関しても探索的にデータ収集と分析を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
価値共創に関連して、風しんの情報拡散ネットワーク分析から、一極集中型で一方向の情報拡散よりも、相互に情報が行き来する実態を明らかにすることができた。特に、マスメディアや医療従事者など、もともとフォロワーが多く影響力を持つアカウントの間を、平均的なフォロワー数を維持する風しんの当事者家族が媒介していたことが明らかになった。この内容を2023年の日本公衆衛生学会で発表することができた。さらに同学会に参加していた、SNSで最も情報を媒介していた、当事者家族のアカウントの人物とも接触して、直接話をする機会を持つことができたのは有意義であった。価値共破壊に関連する分析は、まだ着手できておらず今後の課題となっている。 2023年7月には「Twitter」が「X」と名前を変え、データ取得のプロトコルに大きな変化が生じた。そのため、当初想定していたよりもデータの取得に大きなハードルが生じており、新たなデータの収集は基本的に停止した状態になっている。ただ、NTTデータ社などを通してデータを購入する方法や、すでに取得済みのデータを共同研究者らと共有するなど代替する方法についても少しずつ目処が立ちつつある。 その他にもSNSに限らない社会ネットワーク分析の一例として、学術界における研究者ネットワークの分析を特に性差に注目して行い、国際学会でポスター発表をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、特に誹謗中傷などの価値共破壊に関するSNSデータの収集と分析を行う必要がある。一方で、申請者が主に取り組んできたXからの新規データは現実的に困難な状態である。そこで現在、手元にあるデータの中から該当するものを抽出して、分析を行う。例えば、現在手元には小規模ではあるが、日本における高齢運転者の事故に関するネガティブなコメントのSNSデータセットがあり、これらについてネットワーク構造を抽出する予定である。さらに新型コロナウィルスが蔓延した初期段階でのワクチンに関する議論のSNSデータセットもあるため、その中にも誹謗中傷などネガティブなものがないのかを確認して、分析に着手する。また、今年度は、研究分担者らとの議論の機会を積極的に持つ予定である。
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