研究課題/領域番号 |
23K28209
|
補助金の研究課題番号 |
23H03519 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
泉 賢太郎 千葉大学, 教育学部, 准教授 (40799904)
|
研究分担者 |
今藤 夏子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 室長 (10414369)
大越 健嗣 東邦大学, 理学部, 教授 (60201969)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
19,500千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 4,500千円)
2025年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 14,300千円 (直接経費: 11,000千円、間接経費: 3,300千円)
|
キーワード | 環境DNA / ベントス / 堆積物 / 水槽実験 / 野外環境 / 潮間帯 / 野外調査 |
研究開始時の研究の概要 |
種の存在量を推定する指標として生態学では環境DNAが注目されている。最近では堆積物中の環境DNA(sedDNA)の分析に基づき過去300年間の特定魚種の存在量の変動が示され、古生物学的にも有用である。しかし現状では、存在量の指標としてsedDNAを用いる際に重要なsedDNAの動態、堆積物特性の影響、野外堆積物におけるsedDNA濃度分布の均質性、といった点が不明である。 堆積物中にはベントス由来のsedDNAが高濃度で存在する可能性が高い。そのため本研究では水槽実験によりベントス由来sedDNAの動態を解明し、その後、野外条件でのsedDNA分析の適用可能性を検証する。
|
研究実績の概要 |
堆積物中に保存される研究対象種由来の環境DNA(以下sedDNA)の動態解明と野外での適用可能性について、初年度となる2023年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 まずは、実験室内での水槽実験に基づき、研究対象種に由来するsedDNAの分解速度の見積もりを試みた。その結果、基本的にはsedDNA濃度は時間とともに減少すること、そして少なくとも1か月以上はsedDNAが堆積物中に残存する可能性が示唆された。ただし実際には、堆積物中におけるsedDNA濃度の不均質性が極めて大きいことと、同一サンプルであってもqPCR法に基づくsedDNAの検出の有無にもばらつきが大きかったことから、sedDNA濃度の時間的減衰を示す具体的な回帰式を得るには初年度のデータでは不十分であった。 また野外における適用可能性を評価するために、国内の複数の潮間帯で継続的に調査を実施した。その結果、同一種に由来するsedDNAであっても、調査時期の違いや潮間帯の地形的な違いなどを反映して、検出されたsedDNA濃度は大きくばらついた。大まかな傾向としては、冬季にはsedDNA濃度が低いことがわかった。さらに産卵期などの生物学的イベントと重複する時期や、猛暑による極端な高水温期を除くと、春季であればsedDNA濃度と研究対象種の現存量に一定の相関関係があることが示唆された。 最後に、本研究の主目的から派生した成果としては、研究対象種に特異的なプライマー・プローブセットの開発に併せて、当該種の遺伝的多様性に関する新たな知見が得られたため、学術論文として公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、初年度にはsedDNAの生産速度や分解速度など動態に関する箇所を重点的に進める計画であったが、こちらについては上述したようにデータのばらつきが大きく、結果的に生産速度の推定までは着手できなかった。一方で、当初計画では2~3年目に主に実施する予定であった野外環境での適用可能性や現存量推定の従来法との関係性などについては、初年度に一定程度の進捗があった。 以上のことから、初年度の進捗状況としては「(2)おおむね順調に進展している。」を選択した。
|
今後の研究の推進方策 |
sedDNA濃度のばらつきが非常に大きいことがわかったので、今後は分析数を増やして(ばらつきが大きいことは予想されるものの)平均的な生成速度や分解速度を推定する方策を立て、研究対象種に由来するsedDNAの動態の解明を目指す。 また野外での適用可能性については、初年度の知見が普遍的な傾向であるのかを実証するために、今後も繰り返し調査を継続する。その際、特に夏季のデータを重点的に増やすことを意識する。初年度であった2023年の夏は日本列島は記録的な猛暑に襲われたため、野外調査での観察から、研究対象種の活動が著しく抑制されたことが推測された。したがって初年度に得た夏季のデータは、イレギュラーなデータになっている可能性が高い。
|