研究課題/領域番号 |
23K28228
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補助金の研究課題番号 |
23H03538 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分63020:放射線影響関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松永 司 金沢大学, 薬学系, 教授 (60192340)
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研究分担者 |
赤堀 稜 金沢大学, 薬学系, 助教 (40967593)
若杉 光生 金沢大学, 薬学系, 准教授 (80345595)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2025年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | ヌクレオチド除去修復 / 近位依存性ビオチン標識法 / TurboID / MS解析 |
研究開始時の研究の概要 |
ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair; NER)は、紫外線や嵩高い化学物質で誘発される多様なDNA損傷に働く修復機構であり 、多数のタンパク質が適切な順序で集積・離散しながら多段階ステップにより進行する。この過程は、様々な翻訳後修飾や補助因子を介して緻密に制御されていると考えられており、本研究では、BioID(近位依存性ビオチン標識)法と各種NER因子分解誘導剤/阻害剤/siRNAを組み合わせることで、ステップごとの中間複合体を単離し、MS解析によりその構成因子と各々の修飾状態を明らかにして、NERの高精細・動的モデルを構築することを目指す。
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研究実績の概要 |
初年度は、作製した3種類のTurboID融合タンパク質(XPA, XPC, XPF)安定発現細胞株を用いて、UV照射後にビオチン標識を行い、Guanidine-TCEP bufferで細胞溶解液を回収し、トリプシン消化後にビオチン標識ペプチドを単離してMS解析を行った(徳島大学先端酵素学研究所・共同利用)。NERの初期過程で損傷認識を担うXPCとTurboIDの融合タンパク質では、DDB2、RPA70、TFIIH(p62)、XPGの4つのNER関連タンパク質が検出され、中期過程で足場タンパク質として機能するXPAの融合タンパク質ではXPC、TFIIHの複数のサブユニット、XPGなど8つのNER関連タンパク質が検出された一方、後期過程で働くXPFの融合タンパク質では、TFIIHの2つのサブユニットのみが検出された。その中で、TFIIH(p62)は、3つの細胞株すべてで検出され、中央領域の複数のリジン残基で共通にビオチン標識されることがわかった。 また、XPA遺伝子をノックアウトしたTurboID-XPC安定発現細胞株では、TFIIHのCAKサブユニットの検出が増加し、逆にRPA70は減少したことから、CAKサブユニットのコアTFIIHからの解離、ならびにRPAの損傷部位へのリクルートにXPAが必要と考えられる。興味深いことに、NERの後期段階で損傷DNA鎖切断を担うXPGエンドヌクレアーゼは、XPAノックアウト細胞でも検出されたことから、XPGはかなり早い段階でXPA非依存的にDNA損傷部位にリクルートされる可能性が示唆された。 さらに、今回の解析で再現的にUV照射依存的に検出されたタンパク質の中には、NERコア因子以外のタンパク質も含まれており、その一つは局所UV照射後にDNA損傷部位に集積することから、新規NER関連因子候補として解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の3つの当初計画に基づいて実施したところ、上述のとおり(1)と(2)はすでに完了し、(3)もほぼ完了していることから、このように判断した。 (1)各種NERコア因子とTurboIDとの融合タンパク質を安定発現する細胞株の作製 (2)細胞溶解液の調製方法の検討 (3)各種NER阻害剤及びNERコア因子siRNAの入手と処理条件の検討
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今後の研究の推進方策 |
今後は、この実験系に種々のNER因子分解誘導剤/阻害剤/siRNA処理を組み合わせて、NERの多段階ステップの各々について詳細な解析を試みる。具体的に、使用する薬剤としては、ERCC1の分解誘導剤 (A6) 、XPBの分解誘導剤 (スピロノラクトン)、XPBのATPase活性阻害剤 (triptolide)のほか、DDB-CUL4複合体の活性化阻害剤 (MLN4924)、VCP阻害剤 (NMS-873) などを予定しており、該当する化合物がないNERコア因子については、siRNAによるノックダウン、あるいはCRISPR-Cas9によるノックアウト細胞株の作製を行う。 また、新たなサンプル調製法を用いて、ビオチン標識タンパク質をbaitとしてクロマチン(DNA損傷)上のNER中間複合体を単離し、網羅的な解析を行う。初年度の予備実験では、ビオチン標識されていないNERコア因子も多く検出できており、NER中間複合体の単離が示唆されたことから、このサンプル調製法の条件を最適化して本格的な解析を始める。 一方、初年度の解析で同定された新規NER関連因子候補の解析も進め、各種色素性乾皮症患者由来細胞を用いた局所UV照射後のDNA損傷集積や、ノックダウンもしくはノックアウト細胞におけるUV感受性や6-4PP修復能の解析等を通して、これらの因子のNERにおける機能を明らかにする。
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