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代謝活性化を介した民生品のタンパク質付加体形成によるエピジェネティクス変化

研究課題

研究課題/領域番号 23K28237
補助金の研究課題番号 23H03547 (2023)
研究種目

基盤研究(B)

配分区分基金 (2024)
補助金 (2023)
応募区分一般
審査区分 小区分63030:化学物質影響関連
研究機関九州大学

研究代表者

熊谷 嘉人  九州大学, 薬学研究院, 特任教授 (00250100)

研究分担者 新開 泰弘  東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (10454240)
加藤 百合  九州大学, 薬学研究院, 助教 (10732042)
伊藤 昭博  東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40391859)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2024年度)
配分額 *注記
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 7,280千円 (直接経費: 5,600千円、間接経費: 1,680千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
キーワードタンパク質付加体 / エピジェネティクス変化 / 代謝活性化 / リジン残基の化学修飾 / カルボン酸 / 民生品
研究開始時の研究の概要

申請者はこれまで、環境中親電子物質がタンパク質のシステイン残基と共有結合してタンパク質付加体を形成し、細胞内レドックスシグナル系を変動(低用量では活性化、高用量では破綻)することを明らかにしてきた。一方、我々が日常的に曝露される化学物質自身にタンパク質の化学修飾能がなくても生体内酵素により反応性代謝物となり、このものがタンパク質付加体を形成する実態は殆ど理解されていない。本研究では、民生品の中でカルボン酸の代謝活性化を介してヒストンのリジン残基を化学修飾し、エピジェネティクス変化を生じることを明らかにする。

研究実績の概要

ヒトは生活環境、ライフスタイルおよび食生活を介して多種多様な化学物質に晒されている。その中で、タンパク質のような生体高分子を化学修飾する物質の生体影響を検討することは、健康未来を理解する上で重要である。我々はこれまで構造の異なる環境中親電子物質が細胞内タンパク質のシステイン残基のような求核性官能基に共有結合してタンパク質付加体を形成し、低用量曝露時においてはレドックスシグナル系の活性化を介して適応応答、高用量曝露時においては細胞内タンパク質への非特異的な化学修飾を介して細胞毒性を生じることを明らかにしてきた(基盤研究S 2013-2017年度、2018-2022年度)。今回は、生活環境において広範に存在するカルボン酸類が生体内で代謝活性化を受けて、生じた反応物質がタンパク質のリジン残基のような求核性官能基に共有結合してタンパク質付加体を形成する可能性を検討した。標的タンパク質として、分子内にリジン残基を多数含み、エピジェネティクス変化に重要な役割を演じているヒストンで検討した。LC-MS/MS解析の結果、構造中にカルボキシル基を有する10種類の食品添加物、5種類の機能性表示食品、1種類の農薬および2種類のプラスチック可塑剤(エステル体は細胞内エステラーゼで加水分解されてカルボン酸に変換)が、ヒストンのリジン残基を介して付加体を形成することを見出した。そこで、保存料に使用され摂取量が多いソルビン酸を被験物質として、本物質を特異的に認識する抗体を作成した。また、本抗体が免疫化学的解析の有用性を調べた。今後は、ヒストンのソルビル化がエピジェネティクス変化に関係することを明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究を開始するにあたり、生活環境由来カルボン酸とそのエステル体の中から132品目の優先被験物質を選定し、さらにリジンに修飾されやすい構造、抗体あるいはアルキンプローブ合成可能か否か、および生産量、摂取量、使用量、話題性を考慮して68品目の最優先被験物質に絞り込みを行った。LC-MS/MSによるヒストンの化学修飾能を調べた結果、驚くことに18品目の構造の異なるカルボン酸およびそのエステル体がヒストンのリジン残基に共有結合することが分かった。第1優先の被験物質としてソルビン酸を認識する特異的抗体の作成に成功し、かつ本抗体による免疫化学的検討も可能であることが明らかとなった。予備的検討により、細胞内で生じたヒストンのソルビル化は時間と共に解除されることから、少なくともソルビン酸に関してはヒストンの化学修飾は可逆的であることが示され、今後は本反応を触媒する酵素の同定に着手する。よって、現在までの進捗状況はおおむね順調と言えよう。

今後の研究の推進方策

ソルビン酸を曝露した培養細胞のRNA-seq解析により、ゲノムワイドな遺伝子発現に与える影響を検討し、作製したソルビル化認識抗体を用いたChIP-seq解析により修飾されるゲノム部位を同定する。遺伝子発現が亢進したタンパク質については定量的検討も実施する。ソルビル化によりオープンクロマチンが誘導されるか否かを確認し、リジンソルビル化が新規エピジェネティクマークになりうるかを明らかにする。方法としてATACsee法およびCUT & Tag法を用いる。
一方、Chase実験よりソルビン酸によるヒストンの化学修飾は可逆的であることが示唆された。そこで、細胞内における脱ソルビル化を触媒する酵素について検討する。本酵素の候補としてリジン脱アセチル化酵素ファミリーが考えられるので、それらの特異的阻害剤を用いて検討する。

報告書

(1件)
  • 2023 実績報告書
  • 研究成果

    (18件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件)

  • [雑誌論文] Extracellularly Secreted Cysteine Derived from Cystine Regulates Oxidative and Electrophilic Stress in HepG2 cells2024

    • 著者名/発表者名
      Hanako Aoki、Yasuhiro Shinkai Y、Masahiro Akiyama 、Satoshi Yamazaki S、Motohiro Nishida、Yoshito Kumagai
    • 雑誌名

      Free Radical Research

      巻: -

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Annexin <scp>A5</scp> inhibits mast cell activation via Allergin‐1 immunoreceptor2023

    • 著者名/発表者名
      Almeida Mariana Silva、Tahara‐Hanaoka Satoko、Shibagaki Shohei、Niizuma Kouta、Hitomi Kaori、Shinkai Yasuhiro、Shibayama Shiro、Shibuya Akira
    • 雑誌名

      Allergy

      巻: 78 号: 12 ページ: 3258-3260

    • DOI

      10.1111/all.15851

    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 細胞外のシステインは酸化および親電子ストレスを制御する2023

    • 著者名/発表者名
      青木はな子、新開泰弘、秋山雅博、山崎聡、西田基宏、熊谷嘉人
    • 学会等名
      フォーラム2023: 衛生薬学・環境トキシコロジー
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] メタロチオネイン3を誘導する候補薬剤の探索2023

    • 著者名/発表者名
      水流瑞貴、駒居和起、大内一輝、新開泰弘、木村朋紀、三浦伸彦、熊谷嘉人、保住功、位田雅俊、栗田尚佳
    • 学会等名
      フォーラム2023: 衛生薬学・環境トキシコロジー
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 細胞外システインは親電子ストレスを制御する2023

    • 著者名/発表者名
      青木はな子、新開泰弘、小野瀬祐輔、秋山雅博、広瀬玲子、熊谷嘉人
    • 学会等名
      日本毒性学会 付加体科学部会 第1回キックオフシンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 神経成長抑制因子(GIF/MT3)の超硫黄を介したレドックス制御2023

    • 著者名/発表者名
      新開泰弘
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 大脳皮質発達過程におけるストレス応答因子ATF5の機能解析2023

    • 著者名/発表者名
      蛭川遼大、梅村真理子、小林永和、中野春男、高橋滋、高橋勇二、新開泰弘
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] ストレス応答因子ATF5 mRNAにおける上流ORFが関与する翻訳制御と生理機能の解明2023

    • 著者名/発表者名
      小出真蒔、竹内茉由、中野春男、梅村真理子、高橋滋、高橋勇二、新開泰弘
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] ストレス応答因子ATF5欠損マウス小腸の2型免疫応答で生じたパネート細胞の分化異常2023

    • 著者名/発表者名
      中村航汰、中野春男、小杉遼、石村宇里、宮本英奈、畑綾乃、梅村真理子、高橋滋、高橋勇二、新開泰弘
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 外来性カルボン酸由来新規ヒストンリジンアシル化修飾の探索2023

    • 著者名/発表者名
      青木康明、則次恒太、高瀬翔平、清水勇希、鈴木健裕、堂前直、伊藤昭博
    • 学会等名
      日本ケミカルバイオロジー学会 第17回年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 環境化学物質によるヒストン修飾を介した遺伝子発現調節2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤昭博
    • 学会等名
      第50回日本毒性学会学術年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Exploration of novel histone lysine acyl modifications induced by carboxylic acids from the living environment2023

    • 著者名/発表者名
      Komei Aoki, Kota Noritsugu, Shohei Takase, Yuki Shimizu, Ai Katsuma, Takehiro Suzuki, Naoshi Dohmae, Akihiro Ito
    • 学会等名
      The 10th International Congress of Asian Society of Toxicology
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 生活環境由来カルボン酸による付加体形成 ―エピジェネティクスに与える影響―2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤昭博
    • 学会等名
      日本毒性学会付加体科学部会第1回キックオフシンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 生活環境由来カルボン酸が引き起こす新規ヒストンリジンアシル化修飾の探索2023

    • 著者名/発表者名
      青木康明、則次恒太、高瀬翔平、勝間蒼衣、鈴木健裕、熊谷嘉人、堂前直、伊藤昭博
    • 学会等名
      日本毒性学会付加体科学部会第1回キックオフシンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
  • [学会発表] 食品添加物が引き起こす翻訳後修飾2023

    • 著者名/発表者名
      則次恒太、伊藤昭博
    • 学会等名
      第96回日本生化学会大会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 環境化学物質由来ヒストン修飾によるエピジェネティック制御2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤昭博
    • 学会等名
      第97回日本薬理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 環境化学物質によるヒストン付加体形成とエピジェネティック制御2023

    • 著者名/発表者名
      伊藤昭博
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Drp1タンパク質のシステイン修飾を介したミトコンドリア過剰分裂を伴う心筋老化2023

    • 著者名/発表者名
      西村明幸、湯肖康、加藤百合、熊谷嘉人、赤池孝章、西田基宏
    • 学会等名
      第97回日本薬理学会年会
    • 関連する報告書
      2023 実績報告書

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公開日: 2023-04-18   更新日: 2024-12-25  

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