研究課題/領域番号 |
23K28251
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補助金の研究課題番号 |
23H03561 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64010:環境負荷およびリスク評価管理関連
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
小林 淳 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (00414368)
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研究分担者 |
平野 将司 東海大学, 農学部, 特任准教授 (20554471)
水川 薫子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (50636868)
櫻井 健郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康領域, 室長 (90311323)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)
2023年度: 7,020千円 (直接経費: 5,400千円、間接経費: 1,620千円)
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キーワード | 生物濃縮 / 生態毒性 / 野外調査 / 化学分析 / 食物連鎖 / PFAS / 毒性評価 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者はこれまでにPFASを含むイオン性有機化学物質の生物濃縮性の予測手法として、魚類のアルブミン等のタンパクとの結合自由エネルギーが有効であることを報告してきた。本研究では、PFASとタンパクとの結合自由エネルギーが毒性影響や食物連鎖蓄積にも適用できるか検討する。メダカを用いた暴露実験により生態毒性や生物濃縮性を明らかにするとともに、タンパクとの結合自由エネルギーなどを用いた予測手法を確立する。また野外調査を行い、調査水域におけるPFASの食物連鎖蓄積の程度を評価するとともに、当該水域の食物連鎖蓄積モデルを構築し、各種生物へのPFASの生態リスクを評価する。
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研究実績の概要 |
今年度は先行研究の限られているリン酸を含むPFAS 4物質(6:2monoPAP、8:2monoPAP、6:2diPAP、PFOPA)を対象に、メダカ仔魚への暴露実験を行った。魚類急性毒性試験は、OECDテストガイドライン203を参照し、対照区、溶媒対照区、0.08、0.4、2、10、50 mg/L(公比5)の実験区で96時間暴露(止水式)を行った。いずれの物質も半数致死濃度(LC50)は50 mg/L以上であり、PFOSやPFOAの既報値と同等あるいは既報値よりも大きい値であった。また、PFASの魚類への代表的な毒性影響の1つである脂質合成阻害やエストロゲン作用を調べるために、メダカへの48時間遺伝子発現実験を行った。6:2monoPAP、6:2diPAP、PFOPAを対象に8遺伝子の発現を調べた結果、6:2diPAP(5mg/L)に暴露したメダカのみ、脂質合成に関連する遺伝子が対照区と比較して統計的に有意な発現量の増加を示した。つぎに対象物質とペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)-γとの結合自由エネルギーをドッキングシミュレーションにより推定した。各物質の結合自由エネルギーを比較した結果、6:2diPAPはPPAR-γとの結合親和性が最も高く、脂質合成阻害との関連が示唆された。 次年度に実施する野外調査のために、PFASの一斉分析方法について、前処理および液体クロマトグラフタンデム型質量分析計の測定条件を検討した。最適化した分析法を河川水等に適用し、高い精度で測定が可能であることを確認した。また、食物連鎖蓄積モデルで必要となる水生生物の生理学的パラメータの推定手法を検討し、また食物網構造について予備的な調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、メダカを対象とした暴露実験を行った。リン酸を含む4種のPFAS(6:2monoPAP、8:2monoPAP、6:2diPAP、PFOPA)について半数致死濃度、無影響濃度を明らかにした。また、PFASによる脂質合成阻害やエストロゲン作用について調べるために、6:2monoPAP、6:2diPAP、PFOPAを対象にメダカへの48時間遺伝子発現実験を行った。対象物質のうち、6:2diPAPのみ5 mg/Lで脂質合成阻害に関連する遺伝子の発現量の増加が認められることを明らかにした。ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(PPAR)-γと実験対象としたPFASを含む32物質との結合自由エネルギーをドッキングシミュレーションにより推定し、物質間の毒性発現の差異について考察を深めた。 生物濃縮性の評価については、PFASのアルブミン等との結合自由エネルギーをパラメータとする予測手法が有効であると考えられるため、経済協力開発機構(OECD)で整理されている4730物質を対象として結合自由エネルギーの計算を実施している。計算終了後、機械学習等も用いてこれらの物質を包括的に予測する手法を構築する予定である。 PFASの一斉分析方法を行うため、抽出・精製方法および液体クロマトグラフタンデム型質量分析計での測定に関する諸条件を検討した。検討した測定方法を環境試料に適用し、高い精度で測定が可能であることを確認した。 食物連鎖蓄積モデルにおいて、水生生物の呼吸速度や摂餌速度など生理学的パラメータが必要となる。これら生理学的パラメータの推定手法を検討した。また食物網構造に関して食性等の情報収集を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、現在までにリン酸を含むPFASを対象にメダカへの暴露実験を行い、半数致死濃度、無影響濃度、遺伝子発現について明らかにした。また、ドッキングシミュレーションにより対象PFASとメダカのPPAR-γとの結合自由エネルギーを調べ、関連する遺伝子発現との関係を検討した。今後も暴露実験結果の解析を行うとともに、文献調査を進めて生態毒性や生物濃縮性の予測手法を構築する計画である。 次年度は野外調査により水、生物を採取し、PFAS一斉分析法を適用して濃度を明らかにする。これらの濃度を2015年に同地域で研究代表者らが実施した測定結果と比較し、濃度の変化を明らかにする。また、生物の炭素・窒素安定同位体比等を測定し、調査水域の生物の捕食-被食関係を調べ、PFASの食物連鎖蓄積の程度を解析する。また、対象水域の食物網について検討を行うとともに、取り込み・排泄に関する速度定数などシミュレーションに必要なパラメータを随時収集、整備し、食物連鎖蓄積モデルの基盤を構築する。野外調査で採取した生物については、各生物のアミノ酸配列情報をもとに各生物のPPAR-γ等を再現し、多数のPFASとの結合自由エネルギーを推定し、種間の比較を行う予定である。
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