研究課題/領域番号 |
23K28257
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補助金の研究課題番号 |
23H03567 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小島 義弘 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (80345933)
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研究分担者 |
安田 啓司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80293645)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,200千円 (直接経費: 14,000千円、間接経費: 4,200千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2023年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
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キーワード | 超音波 / 噴霧熱分解法 / 金属ナノ粒子 / 光触媒 / 多孔体 / 噴霧熱分解 / 多孔質体 / 廃液処理 / 多孔質金属粒子 / 可視応答性光触媒 / 廃水処理 |
研究開始時の研究の概要 |
酸化タングステン(WO3)は可視光を吸収可能な光触媒として知られているが,WO3単体では光吸収によって生じる励起電子と正孔が再結合しやく,光触媒活性がそれほど高くない。そこで本申請研究では,「超音波噴霧熱分解法と超音波還元法の二つのソノプロセス」および「テンプレート(鋳型)技術」を応用した触媒の多孔化と金属ナノ粒子との複合化に基づく微構造制御により,可視応答型光触媒の活性向上と環境浄化プロセスへの応用を目指した研究を遂行していく。また,磁性金属を複合化させることにより,磁気回収/再利用可能な利便性に優れた触媒開発を目指す。
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研究実績の概要 |
初年度の主な研究成果は以下のとおりである。 1)パラジウム(Pd)と白金(Pt)を100μm以下のWO3粒子に担持した金属複合粒子を超音波還元法(アルコールを添加した貴金属水溶液に超音波を照射することで発現する還元作用を応用して貴金属ナノ粒子を合成する手法)により合成した。TEMによる表面観察から,超音波還元法で合成したPd/WO3複合粒子は,WO3粒子に貴金属ナノ粒子が担持された構造を有することを確認した。Pd/WO3およびPt/WO3の光触媒性能は,WO3粒子単独の光触媒と比較して,大幅に向上した。また,本実験で実施した実験条件範囲内では,合成時の超音波の出力が増加するほど,PdおよびPtの含有量の増加とともに複合粒子の光触媒活性が増加することがわかった。 2)上記項目1)で検討したWO3粒子にPdナノ粒子を担持したPd/WO3複合触媒粒子を合成するプロセスにおいて,プロセス強化の観点から,原料であるPb水溶液を分割して少量ずつ段階的に添加しながら超音波還元処理する方法(split法)を提案し,その有効性について光触媒活性能から検討した。その結果,分割なし(no split)で一度にまとめてPd水溶液を添加して超音波還元処理で合成するよりも,同一濃度のPd水溶液を総量が同じであっても分割添加して合成したsplit法の方が,光触媒活性が高いPd/WO3複合粒子が得られた。 3)2.4MHzの超音波を応用して噴霧したタングステン成分含有溶液を連続的に加熱炉に供給して熱分解,焼成によって合成したWO3粒子の形状は,平均径200 nmから2.0 μmの球状粒子であった。また,ポリスチレン粒子テンプレートを共存して超音波噴霧熱分解処理した場合は,多孔質構造を有するWO3球状粒子が得られ,テンプレートの粒径および混合比率に応じて細孔構造を制御できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超音波還元法を応用することにより,①常温で貴金属ナノ粒子を担持したWO3複合粒子の合成が可能であること,また,②その活性が貴金属の担持量や合成時の操作条件の一つ超音波出力に依存すること,および③原料となる貴金属溶液の添加する量を分割(split)して段階的に添加しながら合成を進めていくことで,同じ貴金属添加量でも分割なし(no split)で合成した複合粒子と比較して光触媒活性の向上が期待できること等を明らかにし,超音波還元法を応用した金属複合粒子の調製法に関する有意義な知見が得られたものと考えられる。また,超音波噴霧熱分解法とテンプレート法を応用したWO3の構造制御に関する操作指針を一部得ることができ,来年度以降の研究の進展が期待できるものと考える。 以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を受けて,R06,R07年度の2年間で以下の研究計画にしたがい,研究を推進していく予定である。 1)初年度に引き続き超音波還元法による貴金属ナノ粒子合成を市販のWO3固体粒子が共存する場で遂行し,貴金属ナノ粒子担持WO3可視応答型光触媒の合成条件およびその光触媒活性評価を行う。初年度で検討したPd,Pt加えてAu,Agなどの貴金属ナノ粒子をWO3に担持した複合粒子を合成し,検討する予定である。また,split法について,初年度,貴金属の添加分割回数や総添加量の条件が限定的であったことから,分割回数や総添加量が異なる条件で検討を進めていき,光触媒活性と構造評価の結果を通じて,split法の有効性を明らかにしていく。 2)超音波噴霧熱分解法とテンプレート法を組み合わせた手法を応用して,主触媒WO3粒子の構造制御に関する研究も引き続き遂行する。とくに超音波周波数,印加電力,キャリアガス速度,高温炉の温度条件,原料溶液濃度,テンプレート高分子微粒子の仕込み量と粒径がWO3合成粒子の微構造(形状,サイズ,比表面積,細孔径など)や結晶性に及ぼす影響を明らかにする。 3)上記項目1)と2)の成果に基づいて,細孔を有するWO3球状粒子と貴金属を共存させた条件下で超音波還元法を適用し,WO3球状粒子表面への貴金属ナノ粒子を担持させた複合粒子の合成とその構造観察および光触媒活性の評価を行う。 4)磁性成分を含有し触媒を設計することで,溶液処理に対して,溶液中に分散した使用後の光触媒を磁気回収するプロセスについて検討する。主に項目1)および3)の方法で合成した貴金属ナノ粒子/WO3粒子に磁性金属成分を含浸,乾燥,焼成操作によって担持した複合粒子を作成する。ネオジウム磁石を用いて溶液中に分散させたこれら複合粒子の回収率と可視光照射下での光触媒性能を合わせて評価し,合成粒子組成の最適化を図る。
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