研究課題/領域番号 |
23K28261
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補助金の研究課題番号 |
23H03571 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64020:環境負荷低減技術および保全修復技術関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
竹市 信彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ長 (40357398)
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研究分担者 |
片岡 理樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20737994)
本下 晶晴 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ長 (50371084)
多田 幸平 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教 (70805621)
横井 崚佑 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (80849894)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | ナトリウムイオン電池 / LCA評価 / 第一原理計算 |
研究開始時の研究の概要 |
再生可能エネルギーの導入に向けて蓄電技術が果たす役割は大きい。希少金属を必要とする蓄電池の大量導入による希少金属資源の需給逼迫の懸念からNaイオン電池の開発が期待されている。その一方、社会実装に向け、(1)実用レベルの電池の開発、(2)社会ニーズに対応した材料の探索、(3)電池のライフサイクルを通じたCO2排出削減及び希少金属利用回避などの環境パフォーマンスの実証、という課題がある。本研究では、従来の試行錯誤による材料探索から脱却し、材料実験・理論計算・環境性能評価を融合することで事前対策型(プロアクティブ)の材料探索を加速する手法を構築し、社会実装の実現に向けたNaイオン電池材料を開発する。
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研究実績の概要 |
家庭用電力貯蔵用電源と同等のエネルギー密度を有し、安全性が高く環境影響の小さいNaイオン電池の開発を目指す。本研究では、実験・理論計算・環境性能評価を並行して進めることで改善ポイントを効率的に抽出し、高性能・低環境負荷型Naイオン電池の開発を加速させ、実験・理論計算・環境性能評価を融合した電池設計スキームを構築するため以下の3課題に取り組んでいる。 課題1効率的な電池材料開発に必要な理論計算による性能予測の精度向上: 複合酸化物(Na-Ni-Mn系)に対して第一原理計算を実行し電位、構造、電子状態、磁性を調べる。計算結果を実験と比較するとともに、深層学習ポテンシャルを用いた計算結果と比較することで、対象系に対する最適な深層学習ポテンシャルを選定し、選定したポテンシャルを用い元素スクリーニングを実施し有効な置換元素を選定する。 課題2電池の環境性能向上の鍵となる環境ホットスポットの特定:ライフサイクルアセスメント (LCA) とクリティカリティ評価を行い、電池製造に伴う環境影響と原材料の供給リスクを評価することで環境パフォーマンス向上と原材料供給リスク低減に重要な材料の特定を試みる。環境影響および供給リスクの低減に向けて、正極製造や負極製造に用いられる原材料中の重要な要素を特定し、理論計算や材料実験による代替材料の検討対象となる候補の選定を進める。 課題3プロアクティブデザインに基づくNaイオン電池の性能実証:第一原理計算およびLCAによって選定された元素(遷移金属、希土類元素)を用いベースとするP2型層状複合酸化物の合成を試み、電池性能を評価し性能環境面が両立できる材料開発を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、家庭用電力貯蔵用電源と同等のエネルギー密度を有し、安全性が高く環境影響の小さいNaイオン電池の開発を目指している。特に、実験・理論計算・環境性能評価を並行して進めることで改善ポイントを効率的に抽出し、高性能・低環境負荷型Naイオン電池の開発を加速させ、実験・理論計算・環境性能評価を融合した電池設計スキームの構築に注力している。 2023年度は、本研究費で購入した計算機サーバー及び保有するライフサイクルアセスメント (LCA) とクリティカリティ評価技術を駆使して、(1)効率的な電池材料開発に必要な理論計算による性能予測の精度を向上させ、複合酸化物(Na-Ni-Mn系)に対して第一原理計算を実行し電位、構造、電子状態、磁性に関して検討した。計算結果を実験と比較するとともに、深層学習ポテンシャルを用いた計算結果とも比較することで、対象系に対する最適な深層学習ポテンシャルを選定した。これにより、DFTと同程度(決定係数0.95以上)の精度を持つ計算を、DFTの100倍以上の速度で実行することが可能となった。深層学習ポテンシャルを用いて原子番号1から94の元素に対して置換効果を算出し、有効な置換元素を選定した。(2)ライフサイクルアセスメント (LCA) とクリティカリティ評価を行い、電池製造に伴う環境影響と原材料の供給リスクを評価することで環境パフォーマンス向上と原材料供給リスク低減に重要な材料の特定を試み、環境影響および供給リスクの低減に向けて、正極製造に用いられる硫酸ニッケルや、負極製造に用いられる酸化チタンが、環境性能向上の鍵となる環境ホットスポットになり得ることを見出すなど、順調に研究成果は出ている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、高性能で、安全性が高く環境影響の小さいNaイオン電池の開発を目指す。実験・理論計算・環境性能評価を並行して進め改善ポイントを効率的に抽出し、高性能・低環境負荷型Naイオン電池の開発を加速させ、実験・理論計算・環境性能評価を融合した電池設計スキームを構築するため、以下の3課題に取り組む。 課題1プロアクティブデザインに基づくNaイオン電池の性能実証:第一原理計算およびLCAによって選定された元素を対象に材料合成を試み電池性能を評価し性能環境面が両立できる材料開発を進める。また、充放電過程で生じる平均的・局所的な構造変化を放射光XRD、全散乱測定やX線吸収微細構造を用いて、実験結果との相関を明確にしながら構造情報を特定し、これらの結果を理論計算にフィードバックすることで、計算による予測精度を向上させ、効率的な材料設計手法の構築を目指す。 課題2効率的な電池材料開発に必要な理論計算による性能予測の精度向上:正極材料となる複合酸化物の初期構造を準備し、その中の金属元素の一部をLCAにより絞り込まれた環境影響が小さい材料の構成に置き換え、電位、構造、電子状態、磁性を調べる。また、LCAによる材料の絞り込み状況に応じて、適宜計算条件を最適化することで、他の実験的な分析・評価手法の進度とシンクロするように効率的に計算を進める。 課題3電池の環境性能向上の鍵となる環境ホットスポットの特定:材料や電池自体の環境負荷量の算定やCO2排出や金属資源消費などの複数の環境影響の包括的評価を進め、ライフサイクル影響評価手法(LIME)を活用して、関連する環境影響(気候変動、資源消費、有害化学物質など)を統合的に評価することで、複数の環境問題間でのトレードオフを含めて電池のライフサイクル全体の環境影響の中でホットスポットを抽出し、理論計算・材料実験へフィードバックする。
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