研究課題/領域番号 |
23K28278
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補助金の研究課題番号 |
23H03588 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鬼倉 徳雄 九州大学, 農学研究院, 教授 (50403936)
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研究分担者 |
林 博徳 九州大学, 工学研究院, 准教授 (00599649)
栗田 喜久 九州大学, 農学研究院, 准教授 (40725058)
田中 亘 長崎大学, 工学研究科, 助教 (60795988)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
16,770千円 (直接経費: 12,900千円、間接経費: 3,870千円)
2025年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
2024年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2023年度: 5,330千円 (直接経費: 4,100千円、間接経費: 1,230千円)
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キーワード | 流域治水 / 多自然川づくり / 川幅・水深比 / 先行排水 / 淡水魚類 / 種多様性 / 環境DNA / 希少淡水魚 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、加速化する流域治水に対応するため、生物の生態情報を最大限に活かす、新たな視点を盛り込んだ多自然川づくり支援ツールへと既存のツールを進化させる。河道内については魚類の種多様性を最大とする川幅・水深比などの横断構造を明示し、河川周辺については魚類の生態特性を活かして推定された遊水地候補となりうる浸水許容エリアを提示する。また、農業水路における先行排水において、希少淡水魚類への影響を最小化するための科学的知見を提示する。最終的には、河川管理者が科学的知見に基づき、川づくりを実践し、その結果、ネイチャーポジティブを実践できるようなツール開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目標は、加速化する流域治水に対応するための川づくり支援ツールを開発することにある。現在の潜在分布モデルを基盤としたツールを、新たな視点を取り込んだ川づくり支援ツールへと進化させる。具体的には、①魚類の種多様性を最大とする川幅・水深比(河道内対策用)、②魚類の生態特性を活かして推定された浸水許容エリア(河道外対策用)を明示できるツールとする。また、農業用水路網(通称、クリーク)を使った先行排水による貯留に対し、③希少魚類の再生産の維持との両立を図るため、先行排水可能エリアと可能時期を明示する。対象は、遠賀川、筑後川、六角川、矢部川水系である。本研究の実現により、行政等の担当者が科学的根拠に基づき、治水と環境保全・再生の両立のためのベストを選択できるようになり、川づくりのネイチャーポジティブが実現可能となる。 今年度は研究初年度であり、筑後川水系と遠賀川水系でデータを取得する計画としていた。特に、遠賀川水系においては、「魚類の生息に適した川幅・水深比」を特定するための調査を概ね30地点で行い、澪筋幅に対する増水時の川幅変化量に乏しい横断構造で、魚類の多様性が極めて低いことを明らかとした。この結果は、河川改修工事だけでなく、維持管理のための掘削などを含め、生物への影響を回避するうえで重要な科学的知見である。 その他、浸水エリアの解析を筑後川水系にて行い、希少魚の分布と照らし合わせ、浸水想定エリアでの氾濫原性魚類の種多様性が高いことなどが明らかとなっている。遊水地計画を策定する際、本知見が重要な役割を果たすだろう。農業水路の先行排水については、カワバタモロコを対象に、環境DNA分析を行える体制を整え、実際に先行排水が行われる予定の水路網で採水・分析を行い、検出できることを確かめた。本手法は、種の保存法特定第2種でもあるカワバタモロコの新規生息地の探索にも役立つ技術である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる内容は大きく3つあり、①魚類の生息に適した川幅・水深比を特定すること、②生態特性に基づく浸水可能エリアを明示すること、③希少魚の繁殖時期に配慮しながら農業水路の先行排水を実施できるようにすることである。 ①については、遠賀川水系にて、約30地点で行い、物理場(水深、流速、植被率、横断形状)の情報に基づき、類型化を行い、3区分して、それらの魚類の種数を比較した。その結果、河道幅に対する澪筋が広く、増水時の川幅変化量に乏しい河川で、魚類の種数が少ないことが明らかとなった。澪筋幅が広いため、植生は繁茂するものの、水深が小さいことが、負の影響を与えていると推察される。 ②については、仮想の大出水でシミュレーション解析して、氾濫させた際の浸水深が大きい箇所ほど、氾濫原性魚類の実分布数が多いことが明らかとなった。この結果は、氾濫しやすい場所ほど、氾濫原性の魚類の生息地として適していることを示しており、洪水を河道の中だけでコントロールするようになる以前の、かつての後背湿地の分布等に依存するためと推察される。 ③については、実際に先行排水を行っている農業水路での予備的な分析を行い、非灌漑期の魚類の活性が低い時期でも検出できることを確かめた。いずれも、当初計画通り、研究が進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調に進んでいるため、今後も当初計画通りに進めていく予定である。初年度に行った遠賀川水系、筑後川水系で補足的な調査を行うとともに、新年度からは六角川水系についてもデータ取得を目指す。また、研究が順調に進んでいるため、矢部川水系についても前倒して調査を実施する。2024年度には、横断測量データが50地点を超えてくるため、魚類の応答の数値化に関する予備解析を実施するつもりである。 浸水許容エリアの解析については、筑後川に加えて、遠賀川水系を進めていく予定である。また、研究が順調に進捗しているため、当初計画には入れていなかった六角川水系についても実施したいと考えている。 カワバタモロコをターゲットとした環境DNA分析を使った先行排水前後の調査について、当初計画では六角川水系と矢部川水系で行うこととしていたが、2023年度の予備調査で筑後川水系周辺水路にて、先行排水を行い、かつ本種が生息する場所でデータ取得が可能であることが明らかとなったため、筑後川水系と六角川水系を対象に調査を行うこととする。
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