研究課題/領域番号 |
23K28279
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補助金の研究課題番号 |
23H03589 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64040:自然共生システム関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
佐藤 行人 琉球大学, 医学部, 准教授 (20566418)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
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キーワード | 環境DNA / 次世代シークエンサー / 生物相 / 病原体 / 外来種 / メタバーコーディング / 細菌叢 / 環境生態 / 生態疫学 / 人獣共通感染症 |
研究開始時の研究の概要 |
河川水などの環境媒質を直接DNA分析し、生息する微生物から動植物まで網羅的に解析する「環境DNA」について、沖縄県などの島嶼系をモデルとして「全生物的な環境DNA解析技術」を開発、実施する。例えば細菌と動物、病原体と宿主生物、外来種と希少種、捕食者と被捕食者、機能遺伝子配列などが、生物界や種を超えて同時にDNA検出される。この特性を活かし、従来はアプローチが困難だった生物・環境・生態・医学の問題解決へ発展させることを目的とする。このような環境DNAの同時検出性=「環境DNA相関」に基づいた生物間相互作用解析、環境因子・人間活動負荷解析などをDNAビッグデータ化し、新しい環境科学を推進する。
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研究実績の概要 |
本年度は、計画した沖縄県内での環境DNA解析について、沖縄本島南部および離島・石垣島の合計34箇所について分析を進め、予備的成果を得た。沖縄県内で発生する人獣共通感染症レプトスピラに着目し、本島南部で16箇所、石垣島で過去にレプトスピラの発症報告があった宮良川、名蔵川、荒川の滝を含む18カ所での採水フィールドワークを行い、レプトスピラ属細菌を含む河川細菌叢と動物相の網羅的解析を行った。その結果、本島南部から10種、石垣島から8種のレプトスピラ属細菌が検出され、レプトスピラの検出配列総数は沖縄本島のほうが有意に高かった。従来レプトスピラ症の報告例が少なかった本島南部でも、レプトスピラ病原体そのものは生息しており、その種多様性と存在量は、発症報告のある石垣島よりも高いことが示唆された。さらに、「環境DNA相関」に立脚して病原体レプトスピラのリスク因子を解析したところ、本島南部では家畜ウシの環境DNA検出との間に有意な相関があることが認められた。一方、石垣島では有意な相関のある動物種は特定されなかったが、山からの距離とレプトスピラ検出の間に関連性があることが示唆された。本課題による、環境DNA相関に基づいた総合的生物相と環境因子の解析によって、石垣島では山野の野生哺乳類を宿主としたレプトスピラが分布することが示唆される一方、沖縄本島の生活圏では、畜産などの人間活動に起因するレプトスピラの分布拡大が示唆された。この成果は、環境DNA相関に立脚した微生物・動物などの同時検出解析技術が、環境・生態・疫学研究における新しい知見を導く上で有用であることを示すものだと考えられる。さらに、宮城県三陸沿岸において、ノロウイルスの検出と鳥類の飛来が相関するという発見について論文を作成、投稿し、国際誌に掲載された(Sato et al. 2023 J Freshw Ecol 39:2293171)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は本課題の初年度であるが、計画している沖縄本島北部、南部、離島(石垣島など)のうち、本島北部を除く本島南部および石垣島での採水および環境DNAバイオバンキングを実施できた。また、人獣共通感染症の病原体レプトスピラ属細菌に注目した具体的な研究課題として、細菌叢と動物相(宿主動物候補である哺乳類)の同時解析、環境DNA相関解析を実施することが出来た。これにより、将来的に論文業績となりうるレプトスピラ症の環境生態疫学に関する予備的結果と成果を得ることが出来た。また、さらに別の研究課題として、植物(後生植物)、無脊椎動物(軟体動物、節足動物、昆虫類など)の環境DNAメタバーコーディングを活用した研究成果について、2本の論文を作成し、国際誌に投稿しており、初年度内に一本は改訂中、一本は受理された。以上から、本課題で計画している環境DNA相関に基づいた多様な生物の相互作用研究について、課題の実施、および、成果論文発表の両方について、一定以上の内容遂行を進めることが出来ていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本課題で計画している環境DNAバンキングについて、さらに対象地域を拡大して取り組み(沖縄本島北部ほか)、将来的な生物変動解析に向けた環境DNAバイオバンキングを進めることが望ましいと考えられる。また環境DNA相関については、今後の検討課題として残っている対象生物群である単細胞真核生物と真菌類について、技術開発を進める必要があると思われるので、引き続いての課題とする。さらに、実施者がすでに論文成果として公表し、多数(年平均30回以上)引用されている環境DNAデータ解析プログラムMiFish Pipeline (Sato et al. 2018 Mol Biol Evol; Zhu et al. 2023 Mol Biol Evol)について、スタンドアロン型GUIソフトウェア化を行う展望を持っている。これにより、環境DNA研究分野に対して手法・ツールの側面からも寄与するよう開発・研究を継続していくことが望まれると考えられるため、これを進める。
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