研究課題/領域番号 |
23K28281
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補助金の研究課題番号 |
23H03591 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64050:循環型社会システム関連
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
松浦 俊彦 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (50431383)
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研究分担者 |
湊 賢一 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 准教授 (40435384)
阿部 勝正 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 准教授 (40509551)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 8,840千円 (直接経費: 6,800千円、間接経費: 2,040千円)
2023年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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キーワード | 海洋バイオマス / 色素増感太陽電池 / イカ墨 / ゼロエミッション / キトサン |
研究開始時の研究の概要 |
循環型社会および低炭素社会の構築が求められているなか、バイオマスの高度利用は大きな柱の一つであるが、異種のバイオマスの特性を生かして高度利用する要素技術は十分に確立されていない。本研究では、異種の海洋バイオマス「イカ墨」と「キトサン」を複合化させることで、電気的性質を利用した高い選択吸着能を有する黒色系色素粒子を創製し、広域波長吸収能を利用することで色素増感太陽電池を高効率化することを目的とする。本研究は異種の海洋バイオマスそれぞれの特性を有機的に組み合わせて再生可能エネルギーを生み出す新しい手法を開発するもので、環境問題に真に貢献するイカ資源ゼロエミッション化を先導するアプローチとなる。
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研究実績の概要 |
循環型社会の構築が求められているなか、バイオマス利用は大きな柱の一つであるが、異種のバイオマスの特性を生かして高度利用する要素技術は十分に確立されていない。本研究では、異種の海洋バイオマスを複合化させることで、電気的性質を利用した選択吸着能を有する黒色系色素粒子を創製し、広域波長吸収能を利用することで色素増感太陽電池を高効率化することを目的としている。 3年計画初年度の令和5年度は試料作製と社会還元に関する研究を中心に行った。試料作製については、研究代表者らの表面改質技術を発展させて、キトサンをイカ墨色素粒子表面の官能基に結合させることに成功し、それらの最適な複合化条件を明らかにした。また、イカ墨色素粒子の分離・精製の高速化に関する基盤技術を確立した。さらに、イカ墨色素粒子を分解する手法を新たに見いだすことができた。他方、酵素学的手法による表面改質については、芳香族アミノ酸の脱炭酸を触媒するチロシンデカルボキシラーゼを用いたイカ墨色素粒子のカルボキシ基の除去を試みた。酵素反応後の電気泳動の結果、ほとんどが陽極側に移動する酵素未添加物とは異なり、広範囲にイカ墨色素粒子が分布した。このことからバイオプロセスによるイカ墨色素粒子の表面改質の可能性を見いだした。性能評価に向けて、対向電極作製(黒鉛の塗布、DCスパッタによる白金成膜、ヘキサクロロ白金六水和物による白金成膜)を比較したところ、ヘキサクロロ白金六水和物による白金成膜における光電変換効率が最も高い結果となった。 社会還元については、イカ資源の高度利用を含むゼロエミッション化について学べる科学教育プログラムを開発した。特に、クイズや実験動画などのICT教材をはじめ、吸着実験が体験できる教材を開発し、高校生を対象とした出前授業を実践した。 本研究で得られた成果は、学術論文1編にまとめるとともに、学会にて2件発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、試料作製と社会還元をほぼ予定通りに実施することができた。試料作製についての当初計画における目標は、精製イカ墨色素粒子とキトサンを化学的に複合化する条件を見いだすことであり、これをおおむね達成することができた。特に、分子量や形態の異なるキトサンとイカ墨色素粒子の組み合わせに関する基礎的知見を得ることができ、複合化材料の選択肢を拡大する可能性を示すことができた。さらに、イカ墨色素粒子を分解する手法を見いだすことができ、当初計画よりも一部進展したところもあった。他方、社会還元については、イカ資源ゼロエミッション化の実現に向けた地域社会の構築という目標を目指し、イカ資源を主題に循環型社会を地域の文化として根付かせるための啓発活動の一歩を踏み出すことができた。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は試料作製、機能検証、性能向上、社会還元を中心に実施する。試料作製については、精製イカ墨色素粒子とキトサンを化学的に複合化する条件を見いだすことを目標にする。具体的には、表面改質技術を応用し、分子量や形態の異なるキトサンとの組み合わせを試み、複合化材料の選択肢を拡大する。また、イカ墨色素粒子のカルボキシ基を脱炭酸酵素で除去する、酵素学的手法で表面改質を試みるとともに、化学的手法と酵素学的手法の組み合わせで、表面改質の多様な選択肢を準備する。機能検証については、表面電荷密度を制御したイカ墨色素粒子の選択吸着能を検証することを目標にする。具体的には、セルロースチューブ透析膜を使った電気泳動法やゼータ電位測定器、交流インピーダンス法を使って表面電荷密度を定量的に計測する。また、水晶振動子マイクロバランス法を用いて吸着挙動を経時的に計測するとともに、電子顕微鏡や金属顕微鏡による吸着形態の微視的観察を様々なスケールで行うことで光電極への動的吸着挙動を評価する。性能向上については、広域波長吸収能を利用した色素増感太陽電池の高効率化を目標にする。具体的には、イカ墨を添加した酸化チタンペーストを焼成することで、電極の多孔性を向上させる申請者らの独自技術を使って、表面電荷密度を制御したイカ墨色素粒子に最適な多孔膜電極の孔径を明らかにして、高効率化を試みる。社会還元については、イカ資源ゼロエミッション化の実現に向けた地域社会の構築を目標とする。食べるだけではない、イカ資源の高度利用を含むゼロエミッション化について、大人から子供まで学べる科学教育プログラムを開発する。また、市民向け科学イベントに出展し、イカ資源を主題に循環型社会を地域の文化として根付かせるための啓発活動を展開する。 本研究で得られた結果を取りまとめ、学術誌への論文投稿および学会での発表等、研究成果を外部発表する。
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