研究課題/領域番号 |
23K28287
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補助金の研究課題番号 |
23H03597 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分64050:循環型社会システム関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
今野 大輝 東邦大学, 理学部, 准教授 (40825832)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2024年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2023年度: 7,540千円 (直接経費: 5,800千円、間接経費: 1,740千円)
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キーワード | 多孔性錯体結晶 / 金属有機構造体 / MOF / 水質浄化 / 吸着除去 / PETボトル / アルミニウムドロス |
研究開始時の研究の概要 |
多孔性錯体結晶である金属有機構造体 (Metal-Organic Frameworks, MOFs) は従来の多孔性材料に比べて材料設計が容易であり、様々な特性を制御できることから、次世代の分子分離材料として大きな注目を集めている。本研究ではこのMOFs合成の低コスト化・多様化を目指し、廃棄物や低品位資源を出発原料とする合成法を確立する。これらの多孔性錯体結晶の物理化学的特性を汚染物質の特性に応じて選択・制御することで、高速・高容量・高選択性を有する新規吸着剤の実現に挑む。そしてそれらを吸着・分解プロセスとして組み込んだ新たな水質浄化システムを構築し、材料・プロセスの両面で設計指針を獲得する。
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研究実績の概要 |
多孔性錯体結晶である金属有機構造体 (Metal-Organic Frameworks, MOFs) は、従来の多孔性材料に比べ、分子オーダーでの材料設計が可能であり、様々な物理化学的特性を制御可能であることから、次世代の分子分離材料として大きな注目を集めている。しかしながら従来の吸着剤に比べ、MOFsの原料は高価な試薬が多く、如何に安価で安定的に大量生産できるかが、社会実装に向けた重要なポイントとなる。本研究課題は廃棄物や低品位資源を出発とするMOFs合成を提案し、さらには水中難処理汚染物質の有機フッ素化合物、医薬化合物、有機染料などに対する吸着特性を明らかにしながら、それらを活用した水質浄化システムの構築を目指すものである。 一年目の2023年度は、主にPETボトル由来UiO-66(Zr)とアルミニウムドロス由来MIL-53(Al)の合成を検討した。PETボトル由来UiO-66(Zr)については、塩酸を添加したアセトンを合成溶媒として用いることで、試薬由来のものと同等の結晶性を有するUiO-66(Zr)を得ることに成功した。このPET由来UiO-66(Zr)合成については、これまでの主流がPET分解とUiO-66生成の工程を分けたツーステップ合成法であったのに対し、本研究ではPET分解とUiO-66生成を同時に達成するワンステップ合成法として新たな合成技術を確立することができた。またアルミニウムドロス由来MIL-53(Al)については、原料として用いるアルミニウムドロスの成分組成から、試薬由来MIL-53(Al)合成の溶液組成に合わせて投入量や添加剤を最適化することによって、試薬由来のものと同等の結晶性を有するMIL-53(Al)を得ることに成功した。これらの水中吸着特性評価も実施しており、どちらも試薬由来と同等の吸着特性(吸着速度・吸着容量)を発揮することを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
廃棄物や低品位資源を出発原料にしたMOFs合成については、PETボトル由来UiO-66(Zr)とアルミニウムドロス由来MIL-53(Al)のワンステップ合成に成功している。UiO-66(Zr)については、従来の主流がPET分解とUiO-66生成の工程を分けたツーステップ合成法であったのに対し、本研究ではPET分解とUiO-66生成を同時に達成するワンステップ合成法として新たな合成技術を確立できている。この研究成果については、既に査読付論文として掲載されている(Chem. Eng. J. Adv. 2023)。またアルミニウムドロス由来MIL-53(Al)についてもワンステップ法として十分な合成ノウハウを獲得できており、国内企業との共同特許出願が完了している(特願 2024-031088)。さらにUiO-66(Zr)については水中ベンゾフェノン-4、MIL-53(Al)については水中フェノールに対する吸着特性を確認しており、試薬原料を出発とするUiO-66(Zr)やMIL-53(Al)と比べても変わらない吸着性能(吸着速度・吸着容量)を発揮することを確認できている。平衡論に基づいた解析によって、細孔内に吸着していることが示唆されており、吸着メカニズムの観点においても十分な考察ができている。以上のように、廃棄物や低品位資源を出発原料とするMOFs結晶合成やその水質浄化性能を評価してきた点から、本研究が順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
一年目である2023年度は、主にPETボトル由来UiO-66(Zr)とアルミニウムドロス由来MIL-53(Al)の合成法を確立することができた。今後はこれらの技術開発で得た知見やノウハウを元にして、さらに他の廃棄物や低品位資源を出発原料に用いた合成を引き続き検討していく。具体的には不純物(インクや他のプラ素材)を含む民生向けPETフィルム、ガラス繊維が配合されたPBT樹脂、酸化鉄を主成分とする使い捨てカイロ、廃棄物溶融炉から発生するスラグなどを想定している。 またこれらの水質浄化性能の評価については、これまでに検討してきた有機フッ素化合物、医薬化合物、有機染料だけではなく、新たに重金属イオン(鉛イオンや銅イオン)や無機イオン(フッ化物イオンやホウ酸イオン)などにも展開していくことで、さらなる吸着特性に関する知見を増やしていく。このようにして材料合成と水質浄化の両面でさらに研究を発展させていくことで、廃棄物や低品位資源を出発原料とするMOFs結晶の合成手法と、それらを用いた水質浄化プロセスの構築に関する基盤技術を確立することを目指していく。
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