研究課題/領域番号 |
23K28317
|
補助金の研究課題番号 |
23H03627 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
|
研究機関 | 東京女子大学 |
研究代表者 |
尾尻 希和 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (40408456)
|
研究分担者 |
久松 佳彰 東洋大学, 国際学部, 教授 (30302839)
狐崎 知己 専修大学, 経済学部, 教授 (70234747)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
17,680千円 (直接経費: 13,600千円、間接経費: 4,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 8,190千円 (直接経費: 6,300千円、間接経費: 1,890千円)
2023年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
|
キーワード | ハイチ / 失敗国家 / ディアスポラ / ネットワーク / 開発 |
研究開始時の研究の概要 |
ハイチの政治的・経済的・社会的な危機については周知の事実である。選挙が実施されず国会議員や大統領の不在が続き、経済の活性化はみられず、治安の極端な悪化で一般大衆は難民船で脱出することを唯一の希望としている。昨年度においては本研究会はハイチ・ディアスポラのネットワークを探るために米国とドミニカ共和国においてディアスポラ研究者、およびハイチ系住民支援組織にインタビューした。それを受けて今年度は、アメリカ、カナダ、ブラジル、チリ、バハマ、アフリカなど、その他にハイチ系住民を抱える国々のディアスポラにインタビューして、さらなるハイチ・ディアスポラ・ネットワークの解明を行う。
|
研究実績の概要 |
令和5年度は3年間の研究の初年度であり、まずはハイチ・ディアスポラについての知見を深めることに重きを置いた。メンバーが参加する研究会を年間で7回実施し、それぞれのハイチ・ディアスポラに関する研究の進捗具合を共有するとともに、研究の方向性について意見交換を行った。 また海外における研究活動としては、研究代表者の尾尻、研究分担者の狐崎と久松、そして研究協力者の工藤の4名で、米国で最大のハイチ系人口を要するマイアミを訪問し、ハイチ系組織のリーダーたちと面談し、ディアスポラの組織化について調査した。また尾尻、狐崎、久松の3名はワシントンでアメリカ援助政策の専門家と、そしてバージニア州シャーロッツビルではハイチ政治の専門家と意見交換を行った。さらに3名はニューヨークのハイチ系コミュニティの調査も行った。 また尾尻は、米国のハイチ学会の定期大会に出席し、自身がハイチ系ディアスポラである多数の研究者の知見を得た。 さらに、尾尻と久松の2名は、ハイチと陸続きの隣国で、外国における最大のハイチ系住民を抱えるドミニカ共和国を訪問し、ドミニカ共和国の移民政策の担当機関である「国立移民研究所」を訪問して所長にインタビューしたほか、国境の警備隊を訪問して警備状況の調査を実施するなど、ドミニカ共和国の政府の取り組みを調査した。また、ドミニカ共和国のハイチ系住民の支援組織を訪問して聞き取り調査を行った。 久松は「夜間光データによるハイチ経済の動向」を本務校紀要に掲載した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ハイチ「失敗国家」における生存戦略の可視化と、人間の安全保障の観点から政策の提言を行うことである。そのために令和5年度には、ハイチから国外に流出したハイチ・ディアスポラのネットワークを調査した。その結果、以下のような知見が得られた。 第一に、令和6年3月にギャングの攻勢によって空港や港湾施設が運営不能になったことで、食料や人の流通・移動がストップし、ハイチ「失敗国家」は解決するどころかますます悪化した。今後、国外に逃れようとするハイチ人の数はますます増加することが見込まれており、本研究の研究テーマとして「ディアスポラ研究」が適切であることが示された。 そして第二に、「ハイチ・インフォーマル・ネットワークの解明」については、そもそもハイチ系組織どうしの関係については、米国内では熱心に行われているものの、ハイチ国内の組織や、米国ではない外国のハイチ系組織を含むネットワークについては、それほど進んでいないことがわかってきた。 とくに、ハイチ外で、最大のハイチ系住民を抱えていると推定されているドミニカ共和国においては、ハイチ系組織の最大の目標が、ハイチ系住民の「ドミニカ化」による諸権利の獲得であるため、ハイチ系組織のネットワーク化を表立って行うことができない事情もあることがわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度に引き続き、令和6年度もディアスポラのインフォーマル・ネットワークについて既存の研究を洗い出す。研究代表者の尾尻は比較政治学、研究分担者の狐崎は開発経済学、同じく研究分担者の久松は経済学という、それぞれの専門を活かしつつ、ハイチ系ディアスポラのネットワークの理解を深める。また研究協力者についても、社会開発学の受田、文化人類学の工藤、歴史学の今井が、それぞれの専門性を活かしてハイチ系ネットワークを分析していく。 このため、令和6年度は、アメリカ、カナダ、チリ、メキシコ、フランス、アフリカに出張して現地調査を行う。その際には、現地のハイチ系コミュニティのリーダーと面会し、ディアスポラが抱える生活上の問題がどのようなものか、そしてどのようにそれらに対処しているかについて聞き取りを行う。また、本国ハイチとディアスポラの連携について調査し、ディアスポラ・ネットワークの全体像を明らかにしていく。
|