研究課題/領域番号 |
23K28341
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補助金の研究課題番号 |
23H03652 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80030:ジェンダー関連
小区分08010:社会学関連
合同審査対象区分:小区分80030:ジェンダー関連、小区分08010:社会学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
田中 雅子 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (00591843)
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研究分担者 |
斉藤 善久 (押見善久) 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (10399785)
佐伯 奈津子 名古屋学院大学, 国際文化学部, 准教授 (10626328)
高向 有理 西日本短期大学, ビジネス法学科, 教授 (40947040)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2027年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2026年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2023年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 移民 / 女性 / ジェンダー / 法 / リプロダクティブ・ヘルス / 健康 / 権利 / 妊娠 / 出産 / 避妊 |
研究開始時の研究の概要 |
技能実習生や留学生の妊娠をめぐる問題が跡を絶たない。背景には、自己責任の追及を恐れる心の壁、多言語で相談できる場がないなど社会の壁、入管法が一部の在留資格者に家族の帯同を認めないなど法の壁がある。
本研究は、移民女性が「子どもをもつ/もたないことの自己決定」を阻む要因を明らかにする。出身国と日本の労働、移民、保健福祉などの法制度と国際規範の齟齬を検証する規範的分析と、渡航前・来日後・帰還後の情報提供、相談支援、保護について事例分析を行う。主にベトナム、ネパール、インドネシアを対象とし、その共通点から日本の法制度の改善策を探る。相違点からは、宗教や文化を考慮した対応を提案する。
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研究実績の概要 |
代表者の田中は、研究分担者・研究協力者を対象とするオンライン研究会を2回、公開のオンラインシンポジウムを1回企画し、SRHR関連の国際規範と日本の法制度のギャップや、その運用が移民女性に与える諸問題を整理する手がかりをつかんだ。7月はベトナムでIOMや政府機関、送り出し機関、産科病院等を訪問し、現地の性教育と避妊や中絶サービスへの理解を深めた。 分担者の斉藤は、ベトナムで技能実習生の送り出し機関6社(北部3、南部3)でインタビュー調査を実施した。避妊教育を行う機関が存在する一方、妊娠・出産にかかる権利教育については、それを行う発想さえ存在しない状況がわかった。実習期間中に妊娠をしない旨の誓約書の存在などが確認されたほか、技能実習生に妊娠を秘匿させるベトナム側の社会的・経済的な背景が一定程度明らかになった。 同 佐伯は、日本で働く技能実習生や特定技能労働者への聞き取り調査を通じて、出発前教育の内容と、実習期間中に妊娠しない旨の誓約書やトイレに同行しての妊娠検査が行われた事例を確認した。インドネシアでは、アチェ、マカッサルで政府系と民間の送り出し機関への聞き取り調査から、移住労働者の妊娠を不可と認識しているだけでなく、日本の労働法制全般への理解が不足していることが明らかになった。これらの成果は、2月に開催した研究会で研究協力者が報告した。 同 高向は、前プロジェクト「移住女性とSDGs:セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスへのアクセス」で制作した性教育教材を試用して報告をまとめた。渡日前後の性教育の必要性とその妥当性が明らかになった。5月には、田中とともに国会議員や文科省・入管庁担当者と面会して、妊娠・出産を理由とする留学生の退学や帰国の問題について情報提供するとともに、退学理由の調査項目の修正提案を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、労働法制だけでなく、医療保健制度、出入国管理・在留資格制度、保険や社会保障制度など、多様な側面から、日本と送り出し国の制度比較が必要である。出張や移動の制限がほぼなくなり、概ね順調に進展しているが、各国の制度比較等の作業など、専門性が高い国内外の協力者との共同作業に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
田中は、4月末にインドネシアに出張して、実習生や特定技能等の送り出し機関、留学生を送り出す大学等で教材の模擬授業と、前プロジェクトの成果をもとにした授業を行って、渡航前研修の実施方法を検討する。また、家族帯同に関する各国の在留資格制度の比較を行う。さらに、前プロジェクトの調査結果を英語論文発信する。 斉藤は、SNS上に開設するベトナム人労働者向けの母国語相談窓口等を通じて、技能実習生に妊娠を秘匿させる日本側の環境的要因を、実際に妊娠関連で困難に直面したベトナム人労働者へのインタビュー調査から明らかにする。また、ベトナム人労働者の出稼ぎ先の一つである韓国における移民労働者のリプロダクティブ・ライツの保障の取り組みを調査し、日本の現状との違いを分析する。 佐伯は、2024年2月の研究会での報告へのコメントをもとに、1)移住労働者候補者自身が移住労働中の結婚や妊娠についてどう考えているか、2)パートナーが妊娠したときの男性移住労働者が置かれる状況、3)避妊の方法、4)宗教別の認識について調査する予定である。 高向は、4月のリトルアジア水まつりで「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ 日本での妊娠と出産:ライフプランを考えよう」のワークショップを行うほか、教材の改良と多言語展開の準備を行う。その成果の一部は、8月の国際教育夏季研究大会における「留学生のリプロダクティブ・ライツとライププランを考える」のワークショップや、11月の多文化間精神医学会学術総会で発表する。
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