研究課題/領域番号 |
23K28345
|
補助金の研究課題番号 |
23H03656 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
江島 丈雄 東北大学, 国際放射光イノベーション・スマート研究センター, 准教授 (80261478)
|
研究分担者 |
東口 武史 宇都宮大学, 工学部, 教授 (80336289)
黒澤 俊介 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任准教授 (80613637)
若山 俊隆 埼玉医科大学, 保健医療学部, 教授 (90438862)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2025年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 10,660千円 (直接経費: 8,200千円、間接経費: 2,460千円)
|
キーワード | 軟X線励起発光 / 誘導放出抑制 / STED / シンチレータ / 軟Ⅹ線 / シンチレーター / SX-STED / 誘導放出 / SX |
研究開始時の研究の概要 |
nm構造における化学状態の変化は物性に大きく影響を与える。合成ゴム材料中のバウンドラバー構造は応力特性や耐摩耗性などの力学特性に大きく作用するが、この機構解明にはnmスケールの化学結合状態を調べられる軟X線(SX)領域の顕微分光計測が必要である。しかし光学限界により未達である。我々が見出したSX励起シンチレータ発光における誘導放出抑制現象は、可視領域の手法をSX領域に拡張することで光学的な限界を超える可能性を示している。研究は、SX領域において高い効率で発光するシンチレータを利用した軟X線超解像顕微鏡の可能性を探るために、SX励起発光における素励起過程および誘導放出過程を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
軟X線励起発光時における可視光による誘導放出現象を明らかにするため、今年度は主に研究に必要な測定装置の開発を主に行った。装置は既存の発光顕微分光計をベースに、放射光施設に持ち込んでX線を照射して測定することを前提に、可搬型の装置とした。 まず波長掃引のための超広帯域レーザーの開発を行った。超広帯域レーザーはシンチレーターの発光波長に合わせて設計した。SOAから発振させた100kHz、1064nm基本波を3段の増幅器を用いて光強度を増し、フォトニック結晶ファイバーを用いて波長変換を行った。簡易的な分光測定と出力測定の結果、おおよそ450nm~800nmの波長範囲で平均出力260mWの光が発生した。この結果をもとに、現在、移動可能な箱体にする改良を行っている。 次に誘導放出光を掃引しながら発光スペクトルの測定を可能とするために、パルスモーター制御の分光器とスぺクトロメーター導入した。このふたつの制御を行うために、新たに計測プログラムの開発も行った。結果として、波長掃引をしながらスペクトルの演算処理などの機能を持たせることに成功し、測定の効率化を計ることができた。開発した計測プログラムを用いて可視光励起の発光スペクトルを測定したところ、励起光と発光光の波長領域が重なるため、正確な発光強度測定が困難であった。現在、発光スペクトルから余分なバックグランド成分の差引を自動化するための装置及び測定プログラムの改良を行っている。 一方で軟Ⅹ線領域で発光効率の高いEu:GGGの発光効率をさらに改善するために、発光原子であるEuによる自己吸収をさけるために、Eu:GGG層の薄膜化を試みた。Eu:GGG層は、GGG基板上にEuをドープすることで実現しようと試みたが、まだ最適条件が得られていない。当面はEu:GGG結晶を薄片化した試料で対応することとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
誘導放出抑制に使用する予定の高繰り返し超広帯域レーザーを都合により自力開発する方向に研究方針を変更したため、超広帯域レーザーに関する予備実験の分、期間が伸びたため。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究目的である軟X線励起発光時における可視光による誘導放出抑制(STED)現象を明らかにするため、発光顕微分光計の改良を継続する。具体的には、誘導放出光として用いる超広帯域レーザーの箱体を6月末までに完成させ、並列して開発した顕微分光光学系に接続することで、誘導放出光を波長掃引しその誘導放出効率測定が可能となる。まず開発した顕微分光光学系を用いて、まず紫外光を励起光としてEu:GGG、Ce:GGGを用いた誘導放出抑制実験を行う。これにより開発した装置の動作確認とともに、測定したSTED時の発光スペクトルなどをシンチレーターの電子構造に基づいて誘導放出機構の議論を行う。発光過程がEuの5f-5f 遷移であるEu:GGGと、Ceの5d-5f 遷移であるCe:GGGの発光スペクトルを比較し、磁気4極子遷移と電気双極子遷移における誘導放出過程の比較検討を行う。これらの結果を踏まえて、特徴的な誘導放出過程が起きる波長を用いて軟X線励起発光実験に繋げる。軟Ⅹ線励起発光実験は、今年度末を予定している。以上によりシンチレータにおける効率的な誘導放出機構を明らかにする。
|