研究課題/領域番号 |
23K28354
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補助金の研究課題番号 |
23H03665 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
飯尾 雅実 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 超伝導低温工学センター, 准教授 (00469892)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 7,410千円 (直接経費: 5,700千円、間接経費: 1,710千円)
2023年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | 超伝導工学 / 加速器科学 / 原子核物理学 / 素粒子物理学 / 物質科学 |
研究開始時の研究の概要 |
原子核・素粒子実験において、更なるフロンティアを達成するためには、磁石技術のパラダイムシフトが必要である。そこで、本研究では高温超伝導体(HTS)を用いて、100 MGyを超える高放射線環境下で運転可能な高磁場磁石の実現を目指した研究開発を行う。具体的には、REBCOと呼ばれるHTSテープ線材と銅クラッドアルミテープを組み合わせたアルミニウム安定化HTSケーブルを開発し、ショートサンプルや長尺サンプルの特性評価を実施する。そして、最終的に試験コイルを製作し冷却・励磁試験を行う。また、HTS 線材と磁石材料の照射試験を通して放射線損傷についての知見を得ると共に、磁石開発へフィードバックさせる。
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研究実績の概要 |
原子核・素粒子実験において、更なるエネルギー及びルミノシティフロンティアを達成するためには、既存の技術では到達できない100 MGyを超える高い放射線耐性を持つ20 T級の超高磁場磁石が要求されている。本研究では、高温超伝導体(HTS)であるREBCOテープ線材と銅クラッドアルミクラッド材を組み合わせたアルミニウム安定化HTSケーブルを開発し、セラミックコーティング及び接着技術を組み合わせた試作コイルを製作し冷却・通電試験を行うことで、上記の難問に挑戦する。 2023年度は、アルミニウム安定化線HTS導体の設計や材料の入手性等の実現性調査を行った。そして、実際に短尺の銅クラッドアルミテープとREBCOテープ線材をはんだ接合したサンプルを製作しその評価を行った。結果として、1枚の銅クラッドアルミニウムテープを2枚のREBCOテープで挟んだ構成でのはんだ接合による一体化は成功し、超伝導特性の評価を行うことができた。テープ間の電気抵抗による電流の乗り継ぎにくさに起因していると予想される臨界電流値の減少や、想定よりも大きな半径で起こった導体の曲げに対する超伝導性の劣化も観測され、現象を理解するための今後の調査や導体開発を進めるうえでの貴重な知見が得られた。また、無機絶縁HTSコイルの実現性検証のために、試作レーストラックコイルによる液体ヘリウム中で外部磁場を与えた冷却・励磁試験が初めて行われた。最大負荷条件として、温度領域5 K、コイル導体にREBCO配向面に平行な5Tの外部磁場が与えられた状態で、1243 Aまでの電流輸送に成功した。その後コイルはクエンチしたが、これは導体の臨界電流値の約半分である。しかしながら、コイルの小さい曲げ半径(5.5 mm)に起因した劣化が予想されており、直接的な無機絶縁施工による劣化とは考えにくい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、米国SuperPower(SP)社の協力の下アルミニウム安定化HTS導体の実現性検証のための検討と短尺サンプルの試作が主タスクであった。HTSは耐放射線性と20 Kの運転温度を考慮しSP社の準カタログ品であるイットリウムを基にしたYBCOに人口ピンを添加したものを用いることにしたため入手性は良好であったが、現在銅クラッドアルミニウムリボンの流通が芳しくなく、幅や厚さなどの形状、銅とアルミニウムの比率、アルミニウムの材質を自由に選ぶことが現実的に難しいことが判明した。中間安定化材の開発が今後の課題となるかもしれないが、試作を行うための4mm幅、0.1mm厚のリボンを入手できたためサンプル試作は遅延なく行うことができた。また試作の結果、はんだ接合によるREBCOテープと銅クラッドアルミニウムリボンとの一体化に成功し、よていっ通りに特性の評価も実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度にアルミニウム安定化HTS導体の短尺試作サンプルを製作し特性評価を実施したところ、おおむね良好な結果であったが、導体として期待される臨界電流値よりも測定値の方が20%程度低くなってしまった。これは、中間安定化層を介した電流の移動がスムーズに行えていないためと予想される。また、導体の曲げに対する臨界電流値の低下も予想値よりも大きな曲げ半径で発生した。そこで、2024年度はこの現象を理解すると共に開発へフィードバックするために、臨界電流評価装置を整備し短尺試作サンプルの特性評価を引き続き行う。また、今年度の主な目標は導体のReel to Reelの長尺試作であるが、特性評価の結果を踏まえ、長尺導体製造に特有の問題を洗い出すためにもう一度短尺での試作を行う。並行して試作導体を用いたコイル巻き線に向けたコイル部品や治具類の設計や一部制作を行う。また、中性子照射試験を継続し中性子フラックスと超伝導特性の劣化に関する研究を継続する。
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