研究課題/領域番号 |
23K28358
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補助金の研究課題番号 |
23H03669 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
佐伯 盛久 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (30370399)
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研究分担者 |
中林 孝和 東北大学, 薬学研究科, 教授 (30311195)
藤井 健太郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, チームリーダー (00360404)
中西 隆造 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子技術基盤研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員 (70447324)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,850千円 (直接経費: 14,500千円、間接経費: 4,350千円)
2026年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2023年度: 10,010千円 (直接経費: 7,700千円、間接経費: 2,310千円)
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キーワード | 軟X線XAFS分光 / ラマン分光 / 溶液中生体試料その場構造解析 / 含硫黄タンパク質 / NanoTerasu / 軟X線・テンダーX線XAFS / He大気圧XAFS装置 / 溶液生体試料 / その場構造解析 / 硫黄含生体分子 |
研究開始時の研究の概要 |
生体分子研究では水溶液中試料をあるがままの状態で観察し、かつ局所的な構造情報を得る技術が必要であり、X線吸収微細構造(XAFS)分光はこれに適している。しかし、XAFS分光は化学結合に関与しない内殻電子励起を利用するので、結合長の微妙な変化には鈍感である。 一方、同じく溶液中生体分子観察に利用できるラマン分光は、結合長の僅かな変化を反映してスペクトルが変化するので、反応に伴う構造変化が検出できる。本課題ではXAFSとラマンの特長を相補的に利用した分光装置を製作し、NanoTerasuに設置して、特に硫黄原子を含む生体分子(超硫黄分子やSOD1タンパク質など)の構造解析を行うことを目指す。
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研究実績の概要 |
2024年度から稼働した放射光施設ナノテラスでは、高エネルギー分解能を備えた軟X線・テンダーX線ビームを発生できることから、生体分子の構造解析が可能なX線吸収分光装置の整備が求められている。生体分子では溶液中においてその機能を発現するものが多く、その反応機構を明らかにするには、溶液中の試料を「あるがままの状態」で構造解析する技術が必要である。X線吸収微細構造(XAFS)分光はこの目的に適した手法であるが、XAFS分光では化学結合に関与しない内殻電子励起を利用するため、結合長の微妙な変化には鈍感である。一方、同じく溶液中生体分子観察に利用されるラマン分光は、結合長の僅かな変化を反映してスペクトルが変化するので、反応に伴う微妙な構造変化を検出できる。そこで本課題ではXAFS分光とラマン分光の特長を相補的に利用したテンダーX線XAFS+ラマン同時計測装置を製作し、特に複数の硫黄原子が連結した polysulfide-(S)n-を含む生体分子(超硫黄分子やSOD1タンパク質など)を対象とした構造解析法を開発し、ナノテラスで活用することを目指す。 S K吸収端(2.47 keV)付近でのXAFS測定は大気吸収による入射X線減衰を避けるため、通常真空環境下で行われるが、真空中での溶液試料の取り扱いは難しい。そこで令和5年度は、He大気圧環境下(2 keV以上のテンダーX線をほぼ透過)でのXAFS測定ができ、かつ溶液試料の取り扱いも容易な、He大気圧XAFS測定装置の設計を進めた。そして、①XAFS+ラマン同時測定用の溶液試料セルを開発し、既存放射光施設での試験を進めるとともに、②多硫化物やSOD1タンパク質などで、適切な試料条件調整(濃度・サンプル量)により溶液試料のXAFSスペクトルを感度よく測定することに成功し、③独自のHe大気圧XAFS測定装置の設計も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題では、硫黄を含む生体分子溶液試料のその場構造解析法の構築に向け、He大気圧XAFS装置を利用したS K端XAFS+ラマン同時計測装置を開発する。この目的に向けて、①XAFS+ラマン同時測定用の溶液試料セルの開発、②He大気圧XAFS装置での硫黄を含む生体分子水溶液の基礎データ取得、③He環境でのS K端XAFS+ラマン同時測定装置の独自製作、の項目に分けて開発を進める。令和5年度は①溶液試料セルの開発を進め、②多硫化物など水溶液試料でのS K端XAFSデータ取得にも成功し、③装置製作に必要な測定機器(He濃度モニターやファイバーラマン分光器)の準備も進めた。①ー③のすべての項目について進展があり、研究計画は順調に進んでいると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題では、硫黄を含む生体分子溶液試料のその場構造解析法の構築に向け、He大気圧XAFS装置を利用したS K端XAFS+ラマン同時計測装置を開発する。この目的に向けて、①XAFS+ラマン同時測定用の溶液試料セルの開発、②He大気圧XAFS装置での硫黄を含む生体分子水溶液の基礎データ取得、③He環境でのS K端XAFS+ラマン同時測定装置の独自製作、の項目に分けて開発を進める。令和5年度の進捗状況を踏まえ、それぞれの項目に関する推進方策を、以下に記述する。 ①令和5年度は、表面からX線を、背面からレーザー照射することにより、XAFSとラマンが同時に測定できる溶液試料セルを設計し、試作品での試験を進めた。今後は、試験結果を踏まえた溶液試料セルの改良を進める。 ②生体水溶液試料のXAFS実験を進めるにあたり、S/B比の高いS K端XAFSスペクトルを得るにはどの程度の濃度が必要か、連結する硫黄数-(S)n-によりスペクトルの形状がどのように変化するか、などの情報が必要となる。そこで、令和5年度はあいちシンクロトロン光センターに設置されているHe大気圧XAFS装置において、エネルギー分解能の低い分光結晶InSb(111)を利用して多硫化物など溶液試料での基礎データを取得してきた。今後は、よりエネルギー分解能の高い分光結晶Si(111)での基礎データを取得を進める。 ③あいちシンクロトロン光センターの装置情報を参考に、ファイバーラマンを組み込んだHe大気圧XAFS装置を設計・製作する。令和5年度は、本研究予算でファイバーラマンを購入し、その動作試験を行った。今後は、XAFS測定に必要なチェンバーや計測機器の準備を進め、我々独自に製作したHe大気圧XAFS+ラマン同時測定装置の試験を進める。
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