研究課題/領域番号 |
23K28360
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補助金の研究課題番号 |
23H03671 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
清 紀弘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 上級主任研究員 (20357312)
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研究分担者 |
境 武志 日本大学, 理工学部, 准教授 (20409147)
大垣 英明 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (10335226)
全 炳俊 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (80548371)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2023年度: 7,150千円 (直接経費: 5,500千円、間接経費: 1,650千円)
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キーワード | 自由電子レーザー / コヒーレントエッジ放射 / 電子バンチ形状 / テラヘルツ / 電子バンチ |
研究開始時の研究の概要 |
自由電子レーザー発振に関与した電子バンチが偏向磁石にて発生するコヒーレントエッジ放射を、自由電子レーザー発振を妨げることなく光共振器から取り出して観測する。自由電子レーザーの波長や出力、光共振器の共振器長などのパラメータを変化させてコヒーレントエッジ放射特性を測定し、電子バンチ形状の情報を評価することで、自由電子レーザー相互作用が電子バンチに誘起する電子分布変化の全容を解明する。これにより、高強度光パルスが荷電粒子集団を圧縮する新たな制御法へと昇華することで、光科学の発展に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究課題は京都大学の自由電子レーザー施設KU-FELおよび日本大学の電子線利用研究施設LEBRAにて実施している。 京都大学では自由電子レーザー共振器からコヒーレントエッジ放射を取り出す中空平面鏡およびその制御装置を設計・製作して、KU-FELに設置した。この中空平面鏡制御装置は、2種類の中空直径を有する平面鏡を自由電子レーザー光軸に遠隔挿入することが可能で、自由電子レーザーの回折損失を抑制しつつ従来の5倍以上のコヒーレントエッジ放射強度を大気中に射出することが可能である。本装置の性能確認は、平成6年度の共同利用実験にて実施する予定である。また、既存設備を使用した予備実験を実施して、比較的低い電子エネルギー(27.1 MeV)におけるコヒーレントエッジ放射スペクトルを計測した。その結果、自由電子レーザー相互作用による電子バンチ形状変化を計測するには、周波数1.4 THz以下の成分の時間発展を測定すれば充分であることが確かめられた。 日本大学では、放射線の影響を受けない実験室にてコヒーレントエッジ放射を観測するため、自由電子レーザービームライン内にITOを蒸着したサファイア基板を挿入し、コヒーレントエッジ放射の輸送実験を実施した。コヒーレントエッジ放射のビーム軸が10 mm以上ずれていることが明らかになり、自由電子レーザー輸送系を調整した。また、実験室に設置して水蒸気フリーの状態でコヒーレントエッジ放射を観測するため、乾燥空気置換装置の設計を行った。 今年度は知見の積み上げと実験環境整備に注力したため誌上発表には至らなかった。しかし、研究代表者を中心に日本物理学会や日本放射光学会等の研究会に参加して、自由電子レーザーやテラヘルツ帯コヒーレント放射に関する情報収集や口頭発表による情報発信を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円安進行による物価高騰を考慮して当初計画から研究展開を幾つか修正している。1 THzを超える高周波数帯に感度がある高感度ダイオード検波器は、外国製品から広帯域対応の国内製品に切り替えて前倒しで調達した。また、令和6年度実施予定であった京都大学の中空平面鏡制御装置の導入も、1軸直線導入機の調達が困難になりつつあることを考慮して前倒しで実施した。コヒーレントエッジ放射のスペクトル測定に基づいて、時間発展測定のための周波数選定まで研究を進めることができたため、時間発展計測を実施する環境が整った。 日本大学では実験室にて0.5 mWを超えるコヒーレントエッジ放射を輸送できたため、コヒーレントエッジ放射を自由電子レーザーから分離する既存の中空鏡の更新は実施しなかった。また、高感度ダイオード検波器を前倒しで導入したため、乾燥空気置換装置を実験室へ導入する計画は設計のみを行い、設置は令和6年度に繰り越すこととなった。 自由電子レーザー発振中の時間発展計測については、マクロパルス出力が0.1 mJであったKU-FELにて0.7 THz以下の低周波数帯においては計測可能であることが確認できた。高感度ダイオード検波器や中空平面鏡制御装置の導入および乾燥空気置換装置の設計など、1.0 THz以上の高周波数帯における時間発展計測に向けた準備は問題なく進められており、当研究は課題解決に向けておおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
京都大学の自由電子レーザー施設KU-FELでは、新たに設置した中空平面鏡制御装置によって高出力化したコヒーレントエッジ放射を、中赤外自由電子レーザー発振中に観測する。自由電子レーザーはスリッページ長が電子バンチ長よりも長い条件にて発振させる。大気中に取り出したコヒーレントエッジ放射ビームを分割して高感度ダイオード検波器にて観測し、複数の帯域におけるコヒーレントエッジ放射強度の時間発展を計測する。 日本大学の電子線利用研究施設LEBRAでは、実験室に水蒸気を完全に排除できる乾燥空気置換装置を設置して、コヒーレントエッジ放射を輸送する。京都大学における実験と同様に、コヒーレントエッジ放射を分割して高感度ダイオード検波器にて観測し、複数の帯域におけるコヒーレントエッジ放射強度の時間発展を計測する。今年度は既存の金属鏡を使用して自由電子レーザーを近赤外域にて発振させるが、次年度は共振器鏡を誘電体多層膜鏡に変更し、自由電子レーザー発振波長を短波長化する。これにより、電子バンチ長よりも短いスリッページ長にて自由電子レーザーを発振させる。 計測したコヒーレントエッジ放射のスペクトル情報から電子バンチ形状の時間発展を評価し、自由電子レーザー相互作用によって誘起されるマクロな電子バンチ形状変化を明らかにする。電子バンチ長やスリッページ長が異なる二つの自由電子レーザー施設にて実験を実施することで、電子バンチ形状変化におけるスリッページ長の影響について知見を積み重ね、電子バンチを効果的に伸縮するレーザー場の条件について考察を行う。
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