研究課題/領域番号 |
23K28380
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補助金の研究課題番号 |
23H03691 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90020:図書館情報学および人文社会情報学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
畑山 満則 京都大学, 防災研究所, 教授 (10346059)
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研究分担者 |
廣井 慧 京都大学, 防災研究所, 准教授 (30734644)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2024年度: 6,760千円 (直接経費: 5,200千円、間接経費: 1,560千円)
2023年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
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キーワード | 防災 / 避難 / 救援 / シミュレーション / 災害対応 / 避難モデル / コンペティション / 救助 |
研究開始時の研究の概要 |
「避難」は、災害対応において継続的に指摘されている課題であり、その研究においては、実際の被災地住民の行動モデルを作成し、避難しなかった人の行動変容を促す政策提案を行うことが多い。しかし行動モデルの汎用的な評価がなされないため、他地域への展開することができず教訓として継承されないことにもつながると考える。本研究では、この問題に対してAI技術のモデル評価でも用いられているコンペティション型プラットフォームを用いた評価手法を提案する。コンペティション型プラットフォームを用いた避難モデルの評価は、防災領域の研究ではこれまで行われていない手法であり、これにより今後のパラダイムシフトが期待される。
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研究実績の概要 |
災害対応において継続的に指摘されている課題として、「避難」の課題がある。避難に関する研究は、被災地域でのアンケート調査から被災地住民の行動モデルを作成し、避難した人の行動の特徴を取り出し、避難しなかった(できなかった)人の行動変容を促す政策提案を行うことが多いが、その行動モデルの汎用的な評価がなされないため、他地域への展開の効果を考察できず、過去の災害からの教訓として継承されないことにもつながると考える。本研究では、この問題に対してAI技術のモデル評価でも用いられているコンペティション型プラットフォームを用いた評価手法を提案している。これを実現するためには、1)調査項目の標準化を行ったうえで継続的な避難行動調査の実施をし、その調査結果の共有すること、2)モデル開発参加者の多様化を目的としたコンペティションの開催を目標としている。 1)に関しては、今年度、これまでに行った調査項目に対して「社会的望ましさのバイアス」に対応すべくベイジアン自白剤 (Bayesian Truth Serum; BTS) を用いた項目を追加し、東京都江東デルタ地域を対象とした避難意向アンケートを実施した。このアンケート結果をもとに避難と救助を連動して考えることができるエージェントシミュレーションの基盤構築を行った。2)に関しては、コンペティション型評価を行うための基盤システム開発を行っている。また、過去に行われた2つのモデルと令和2年7月豪雨時の情報を基盤システムに適応できるように考察を行った。さらに、モデル開発者のすそ野を広げるために避難エージェントの開発をScratchによりできるように開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「(a)コンペティション型プラットフォームの設計・プラットフォーム開発」について、被災前のモバイル空間統計、避難に関するアンケート調査結果を提供し、それらをもとに複数の避難行動モデルによる被災地域の人口分布(避難行動のありなしの推計を含む)推計を行うことで、比較評価できるプラットフォームのプロトタイプ設計を行い、基本部分の開発を行った。また、開発したプラットフォームの説明力を評価する手法について、文献調査を行った。 「(b) 既存モデルの調査による災害後の標準的な調査項目の検討」について、本取組で重要なデータとなる災害発生時に行う避難に関するアンケート調査について、土木学会土木計画学研究委員会災害データサイエンス研究会にて検討し、平成30年7月豪雨災害、令和元年東日本台風、令和2年7月豪雨で活用した調査項目を精査し、本研究で活用するべき要素を網羅できるように再検討を行った。この項目を用いて、東京都の江東デルタ地帯で避難以降に関する調査を行った。 「(c) インプリメンテーションギャップを考慮した災害前の標準的な調査項目の検討」について、「社会的望ましさのバイアス」(例えば、避難のタイミングを聞いた場合、実際は避難指示が出ても逃げない人でも、このバイアスにより、立ち退き避難すると回答してしまう)について検討し、このバイアスがかかった場合は、アンケート結果と実際にずれが生じる(インプリメンテーションギャップ)ことについて考察を行った。このバイアスの影響について文献調査を行い、調査手法の改良案について提案を行った。
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今後の研究の推進方策 |
「(a)コンペティション型プラットフォームの設計・プラットフォーム開発」については、プロトタイプ段階から本システムの開発に進む。また、評価手法について、ゲーミフィケーションなどの事例を踏まえて検討を深めていく。 「 (d) コンペティション型プラットフォームを活用したモデル評価実験と評価の妥当性検証」について、開発したコンペティション型プラットフォームを活用し、過去の災害を事例としてモデル評価実験を行う。また、研究期間内に豪雨災害が発生した場合には、開発したプラットフォームを活用し、過去に提案された行動モデルを用いて災害後の人口分布を予測することを試みる。 プラットフォームを用いた、避難行動モデルの予測を生かす応用として「 (e)浸水域に取り残される人の救助戦略策定支援システムの開発」を試みる。予測された人口分布に対してエージェントシミュレーションにより救助のためのボートやレスキュー隊のリソース配分を行い、その有効性を確認する。また、救助リソースの上限を設定することで救助難民となる生活の期間を推測し、これをフィードバックすることで、避難行動の態度を変容可能かについて検証を行う。 さらに、プラットフォームを用いた、避難行動モデルの予測を生かす応用として、「(f) 被災地域における避難所運営への支援人材派遣計画策定支援システムの開発」の開発を試みる。これに応用するためには、一時避難に加えて、滞在避難のために移動するタイミングを避難行動モデルにより推計する必要が生じるため、避難行動モデルを拡張することを合わせて行うものとする。
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