研究課題/領域番号 |
23K28386
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補助金の研究課題番号 |
23H03697 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
酒井 宏 筑波大学, システム情報系, 教授 (80281666)
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研究分担者 |
亀山 啓輔 筑波大学, システム情報系, 教授 (40242309)
我妻 伸彦 東邦大学, 理学部, 講師 (60632958)
山根 ゆか子 沖縄科学技術大学院大学, 神経計算ユニット, スタッフサイエンティスト (70565043)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2026年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 5,980千円 (直接経費: 4,600千円、間接経費: 1,380千円)
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キーワード | 認知神経科学 / 視覚 / 皮質表現 / V4 / 自然画像 |
研究開始時の研究の概要 |
ヒト視覚系は,多様な外界を脳内に精緻にモデル化する。これは、網膜像に内在する局所特徴量から高次皮質の物体表現への変換であり、皮質中間層における物体特徴の表現が理解の鍵となる。本研究は、腹側経路中間層において、物体に係る特徴群がどのように表現されているか、という問題の理解を目的とする。細胞群が複数特徴を集団符号化することによって、前駆物体の形状と面特性を高次元で表現している、との仮説を検討する。このために、多数の自然画像に対するサルV4細胞の応答を多元的に解析し、汎化モデルの構築を通して多様・多数の刺激に対する応答について解析する。
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研究実績の概要 |
単一細胞が多数の特徴を同時に符号化しているとの仮説を検討した。このために、サルV4神経細胞の自然画像への反応を解析した。自然画像刺激中には多様な輪郭特徴が内包され、神経細胞はそれらに対して応答することを利用した新しい逆相関法を考案した。解析の結果、V4神経細胞は多数の特徴に対する選好性を持ち、それぞれが持つ選好性・最適特徴は様々であることを示した。この方法論と結果は、国際・国内学会で発表したほか、学術雑誌 eNeuro (Impact Factor = 4)に発表した。 自然画像刺激に対するConvolutional Neural Netowork 中間層の反応群から単一細胞反応への線形写像を機械学習によって求める細胞モデル(decoding model)を構築した。これにより単一細胞の多数特徴に対する同時選好性を網羅的に解析する基盤を得た。この結果は、日本神経科学学会・日本神経回路学会で発表した。 神経細胞が、集団として物体特徴をどのように表現しているかを解析した。細胞群の応答と知覚の応答から「何を見ているか」を解析し、細胞反応と知覚との関連を示した。この結果は、国際・国内学会で発表したほか、学術雑誌 Neural Networks (IF = 8)に投稿した(査読中)。さらに、皮質表現についての本研究課題に関する総説を学術雑誌(Interdisciplinary Information Sciences )に投稿した(招待論文)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単一細胞が多数の特徴を同時に符号化しているとの仮説を検討した。サルV4神経細胞の自然画像への反応を解析した。自然画像刺激中には多様な輪郭特徴が内包され、神経細胞はそれらに対して応答することを利用した新しい逆相関法を考案した。まず、示した自然画像を解析して、内包されていた輪郭特徴の一覧を作った。同時に、細胞毎にCRFとその周辺に内在していた輪郭特徴のヒストグラムを作成し、これを刺激にタグ付けた。各刺激に対する応答と刺激特徴ヒストグラムから逆相関法によって選好性を算出した。V4神経細胞は多数の特徴に対する選好性を持ち、それぞれが持つ選好性・最適特徴は様々であることが判った。 記録したV4神経細胞をCNNを利用してモデル化した。自然画像刺激に対するCNN中間層の反応群から単一細胞反応への線形写像を機械学習によって求める細胞モデルを構築した。細胞モデルに、生理実験では呈示し得なかった多様な画像を提示することにより、多数の特徴に対する細胞の反応を得ることが可能となった。 さらに、神経細胞が、集団として物体特徴をどのように表現しているかを解析した。表現が効率性と冗長性をどのように同時実現しているのかを解析した。刺激中の前駆物体(図領域)に注目して、その特徴の知覚の一貫性(分散)をヒト心理物理実験によって求めた。細胞群の応答と知覚の応答から「何を見ているか」を解析し、細胞反応と知覚との関連を示した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに微小多電極によって記録したサルV4神経細胞の自然画像への反応の解析を継続して、単一細胞が多数の特徴を同時に符号化していることを明らかにしていく。特徴に対するチューニングをパラメータ(モデル)化する従来の方法に加え、相互情報量を使った方法も利用して、細胞がどのように複数の特徴に対する選好性を示すかを明らかにする。 記録したV4神経細胞をモデル化して、多様な刺激に対する細胞応答を得て解析に供すると共に、細胞が符号化する刺激・特徴の推定を行っていく。CNNと線形符号化器により構成され、細胞応答を再現する細胞モデルを利用する。細胞モデルの妥当性は、分散説明率にとどまらず輪郭特徴などへの選好性の再現性によって評価する。多数の特徴に対する細胞応答の反応行列から、呈示刺激の推定・最適刺激の可視化を行う。図地分離を目的とするCNNおよびGANについて適用性を検討し、最適刺激および選好性分布の推定を行う。 神経細胞が、集団として物体特徴をどのように表現しているかを解析していく。刺激に内包される図地・輪郭などの特徴量と、刺激に対する細胞応答から、細胞群応答の多次元構造の特徴を示す。刺激中の前駆物体(図領域)に注目して、その特徴の知覚の信頼度をヒト心理物理実験によって求める。刺激群に対する細胞群反応と知覚応答を表す混同行列を作成し、神経表現を解析する。細胞群は知覚に対応した反応を示すと予測され、これから細胞群が真に何を符号化しているかを検討する。そして、その表現が効率性と冗長性をどのように同時実現しているのかを示す。
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