研究課題/領域番号 |
23K28431
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補助金の研究課題番号 |
23H03742 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
丸山 徹 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (90423657)
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研究分担者 |
渡邊 博志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (70398220)
前田 仁志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (80791483)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
18,590千円 (直接経費: 14,300千円、間接経費: 4,290千円)
2025年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2024年度: 4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 8,970千円 (直接経費: 6,900千円、間接経費: 2,070千円)
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キーワード | アルブミン / 膜透過ペプチド / 免疫療法 / 感染症 / 癌 / ドラッグデリバリーシステム / ワクチン / ドラックデリバリーシステム / アジュバント / 細胞膜透過性ペプチド |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、申請者が開発した細胞透過能とアジュバント作用を併せ持つ機能性HSAにアルブミン融合技術を駆使して抗原ペプチドを融合化したHSAナノワクチンの設計を試み、免疫療法としての有用性を検証する。申請者はこれまでにピキア酵母発現系を用いて"アルブミン融合技術"を確立してきた。この技術は、アルブミンと抗原ペプチドを遺伝子レベルで接合可能であるため、HSA の物性を活かして、抗原ペプチドの問題点である短い生体内半減期を延長することができる。HSAナノワクチンの創薬技術はHSA多量体やHSAナノ粒子に対しても適用できるため、ナノワクチンプラットフォームとして幅広い展開が想定される。
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研究実績の概要 |
近年、難治性の感染症や癌治療の領域では、さらなる奏功性の向上を指向して、ドラックデリバリーシステム(DDS)の技術を導入し、抗原提示細胞内に抗原とアジュバントを効率良く送達するDDS融合型免疫療法の構築築が試みられている。申請者は、DDS担体として優れているものの、細胞内移行性が乏しいヒト血清アルブミン(HSA)に、細胞膜透過性ペプチドを搭載することで、 アジュバント作用と 細胞内抗原送達能を併せ持つ機能性HSAの開発に成功している。本研究では、この機能性HSAにアルブミン融合技術を駆使して抗原ペプチドを接合したHSAナノワクチンの設計を試み、新たな免疫療法としての有用性をインフルエンザウィルス感染や担癌モデル動物を用いて検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)本年度は、まず、HSA-抗原ペプチド融合体の設計と評価が主目的であった。この点に関しては、アルブミン融合技術を駆使して、HSA-癌抗原ペプチド(TRP-2:SVYDFFVWL)n、HSA-インフルエンザウイルスペプチド(M2e:SLLTEVETPIRNEWGCRCNGSSD)nの2種類を作製した。得られた融合化タンパク質の構造特性を各種スペクトル法(吸収、蛍光、円二色)により解析した結果、いすれもHSA単独と類似したスペクトル特性を示した。また、溶解性、安定性、凝集性をHSAと比較したところ、融合化タンパク質は同等の物理化学的特性を有していた。 2) 1)で作成した融合化タンパク質に搭載するCPPの最適化を行った。具体的には、12個のD-アルギニンから構成される環状型ポリカチオン部分に、HSAに対するアンカリングドメインとてパルミチン酸を接合した。得られたCPP-融合化タンパク質ハイブリッド体は抗原提示細胞に対して優れた細胞内移行性を示した。 3) ハイブリッド体の体内動態に関しては、125ヨウ素あるいは蛍光ラベル化試薬(Alexa750)で修飾し、健常マウス、B16担癌マウス、PR8(H1N1)インフルエンザウイルス感染マウスに皮下投与して、血中及び臓器分布(リンパ節、肝臓、腎臓、膵臓、肺、心臓、脾臓)を解析する予定であり、現在、進行中である。予備的検討結果ではあるが、ハイブリッド体がリンパ節へ移行することを確認している。
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今後の研究の推進方策 |
1)ハイブリッド体の体内動態解析 125ヨウ素あるいは蛍光ラベル化試薬(Alexa750)で修飾し、健常マウス、B16担癌マウス、PR8(H1N1)インフルエンザウイルス感染マウスに皮下投与して、血中及び臓器分布(リンパ節、肝臓、腎臓、膵臓、肺、心臓、脾臓)を解析する。 2)癌ペプチド搭載型ハイブリッド体の抗腫瘍効果 癌ペプチドを搭載したハイブリッド体を、B16F10メラノーマ担癌マウスへ皮下投与し、がん免疫療法剤として機能するか否かを検証する。その際、 コントロールとして、CPP-HSA及びTRP-2の単独投与群を設定する。抗腫瘍効果は腫瘍サイ ズや重量を経日的に測定して判定する。また、腫瘍組織におけるCD4+やCD8+T細胞の浸潤、 腫瘍アポトーシスの有無、IFNγ産生に加えて、リンパ節及び脾細胞におけるMHCや共刺激 分子の誘導能を評価する。加えて、体重変動、血液学的及び生化学的評価、種々の臓器に対 する病理学的解析を行い、有害事象の有無を確認する。さらに、同様な実験系で、HSA癌ナ ノワクチンに対して、腫瘍縮小効果が認められない低用量の抗PD-1抗体を併用投与し、抗腫瘍作用に対するブースト効果の有無を検証する。 3) インフルエンザウイルスペプチド搭載型ハイブリッド体の薬理効果 インフルエンザウィルスを搭載したハイブリッド体融合化を、BALB/cマウスに複数回皮下投与し、その後にPR8(H1N1)インフルエンザウイルスを感染させ、抗ウイルス効果を検証する。血清中の抗体価の上昇、直腸温度と生存率の改善からワクチンの有用性を評価する。
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