研究課題/領域番号 |
23K28438
|
補助金の研究課題番号 |
23H03750 (2023)
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90120:生体材料学関連
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
岩崎 泰彦 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (90280990)
|
研究分担者 |
奥野 陽太 関西大学, 化学生命工学部, 助教 (60964814)
平賀 徹 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70322170)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
|
配分額 *注記 |
18,460千円 (直接経費: 14,200千円、間接経費: 4,260千円)
2025年度: 5,070千円 (直接経費: 3,900千円、間接経費: 1,170千円)
2024年度: 7,930千円 (直接経費: 6,100千円、間接経費: 1,830千円)
2023年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
|
キーワード | ポリリン酸エステル / 骨転移 / 破骨細胞 / 薬物輸送システム / 高分子医薬 / 抗がん剤 / 薬物輸送 / 標的指向性 / 生分解性ポリマー / バイオミメティック / 骨破壊 / ポリホスホエステル |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では骨組織に選択的に作用する両親媒性ポリマーを獲得し,骨転移巣に抗がん剤を選択輸送することを実現する.乳がんを原発巣とする骨転移では骨破壊が起こり,患者のQOLが著しく低下する.骨破壊の阻止に焦点を当てたポリマー医薬は現存しておらず,本研究の成果は健康寿命の増進に直結しているため,社会的波及効果も極めて大きい.
|
研究実績の概要 |
本研究は,がんの骨転移巣を退縮し,骨破壊を阻止するポリマー医薬の創出を目的として企画された.研究期間の3年間で①骨指向性と生理活性を有する両親媒性ポリマーの設計および合成,②薬剤担持ポリマーの抗がん活性評価,③骨系細胞の機能におよぼすポリマーの構造相関と分子生物学的理解,④小動物骨転移モデルによるポリマーの薬理効果の確認と作用機序の解明,を実施する.2023年度では,①と②を中心に検討した.コレステロールを末端に有するポリリン酸エステル(Ch-PPE)を合成法を確立した.コレステロールと環状リン酸エステルモノマーの比を変えることによってCh-PPEの分子量を精密に制御できた.Ch-PPEが両親媒性を示したため,脂溶性の抗がん剤であるドセタキセルの可溶化を試みた。重合度100のCh-PPEを濃度が10 mg/mLになるように溶解した水溶液では純水に比べ約95倍のドセタキセルを溶解できることが明らかとなった.乳がん細胞(MDA-MB-231)とポリマーとの相互作用について調べたところ,コレステロールを持たないポリリン酸エステル(PPE)に比べ,Ch-PPEは有意にがん細胞に取り込まれることがわかった.これにより,がん細胞に多くの薬剤を輸送できると期待される.③や④の予備試験も始めており,Ch-PPEが破骨細胞の分化を効果的に抑制することやin vivoでCh-PPEが骨に結合することも明らかにした.2023 年度ではCh-PPEの合成や特性解析に関する多くの知見を得た,2024年度から細胞や動物実験を本格的に開始し,骨転移治療に資する薬物輸送担体を獲得する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書において2023年度では両親媒性リン酸ジエステル型ポリマー(Ch-PPE)の合成、Ch-PPEと抗がん剤の複合化,乳がん細胞を用いた抗がん活性の評価について計画し,おおむね計画通りに進展している.分子量の異なるCh-PPEの合成法を確立し,Ch-PPEを添加することにより脂溶性の抗がん剤(ドセタキセル)を可溶化することができた.ポリマーの構造が乳がん細胞との相互作用に与える影響も調査した.次年度以降に計画をしている骨髄由来単核球の破骨細胞分化に与えるポリマーの影響やin vivoにおける骨集積性の予備調査も開始している.
|
今後の研究の推進方策 |
マウス骨髄由来単核球(BMMC)の破骨細胞分化(単純培養・共培養):マウスBMMCを牛骨片上に播種し,分化培地内で所定期間培養する.この培地内に所定濃度のCh-PPEを添加し,BMMCに含まれる単球の破骨細胞分化におよぼすCh-PPEの影響を明らかにする.また,破骨細胞の機能を骨スライス表面に形成された溶解痕を観察して明らかにする.がん細胞は破骨細胞の分化を促進するため,後述のin vivo転移モデルの作成に用いる乳がん細胞(MDA-MB231細胞)とBMMCの共培養についても実施し,DOX/Ch-PPE複合体がMDA-MB231細胞の生育ならびに破骨細胞の分化に与える影響を調査する. In vivo試験:マウス尾静脈より蛍光修飾ポリマーを投与し,安静な状態で飼育しながら所定時間ごとにin vivo蛍光イメージングシステムによる観察を行う.また,定期的に尿を採取し,排出されたポリマー量を計測する.その後,マウスを屠殺し,各種臓器を摘出し,ポリマーの分布を確認する.特に骨組織については切片を作成し,蛍光顕微鏡でポリマーの集積経路を明らかにする. 骨転移モデルの作成は,研究分担者である松本歯科大学の平賀徹教授の指導のもと行う.ヌードマウスの尾動脈に蛍光タンパク質発現MDA-MB231細胞を注射する.MDA-MB231細胞の骨転移の確認と転移巣のサイズの計測をin vivoイメージングシステムで行う.その後,DOX/Ch-PPE複合体を尾静脈より投与する.ポリマーの体内動態をin vivoイメージングシステムで追跡するとともに,骨代謝が亢進している骨腫瘍部位にポリマーが集積するように,ポリマーの組成を最適化する.定期的に転移巣のサイズおよびマウスの体重の変化を経時的に計測し,ポリマーと複合化したDOXの薬理効果を確認する.
|