研究課題/領域番号 |
23K28460
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補助金の研究課題番号 |
23H03772 (2023)
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 基金 (2024) 補助金 (2023) |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
小区分90140:医療技術評価学関連
合同審査対象区分:小区分90130:医用システム関連、小区分90140:医療技術評価学関連
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
堀井 康史 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00268335)
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研究分担者 |
北村 敏明 関西大学, システム理工学部, 教授 (80264802)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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配分額 *注記 |
19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2027年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2026年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2025年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
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キーワード | 聴覚メカニズム / 聴覚医療 / 内耳 / 蝸牛 / 三半規管 / 聴覚生理 / 聴覚疾患 / 難聴 / めまい / 聴覚シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、工学的な視点から聴覚メカニズムを解明し、聴覚疾患の機序を明らかにすること、得られた知見に基づき聴覚医療における新たな診断技術、治療技術を創出することにある。現在、圧縮性リンパ液を想定した蝸牛の流体力学モデルを完成させ、全可聴周波域において近似計算を排除した「汎用性の高い蝸牛モデル」の開発に成功した。また、これをもとに各種聴覚疾患モデル(外リンパ瘻、突発性難聴、内耳気腫、真樹種、正円窓の骨化、メニエール病など)を設計し、推定される難聴特性と臨床医療データを比較検討することで、開発した聴覚疾患モデルの有用性を検討している最中である。今後は聴覚の全容解明と診断治療技術の向上を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、工学的な視点から聴覚メカニズムを解明し、聴覚疾患の機序を明らかにすること、得られた知見に基づき聴覚医療における新たな診断技術、治療技術を創出することにある。2023年度は、圧縮性リンパ液を想定して厳密な解析を可能にした「汎用型の蝸牛流体力学モデル」の開発に成功し、これをもとに聴覚生理に関する基礎的事項の検討と、各種聴覚疾患モデルを設計して難聴との関係を明らかにした。得られた一連の研究成果は、日本音響学会聴覚研究会を通じて、順次、成果報告を行っている。以下にその概要を記す。 「音の聴取における基底膜形状の合理性について」(2023年5月発表。音のスペクトラム分析を行う蝸牛の基底膜が、なぜ蝸牛基部で硬く、頂部で軟らかくできているのかを工学的な視点から説明し、もし基底膜の硬度分布が逆であれば、聴覚は周波数弁別能を失い、音の高低を判別できなくなることを示した。)、「蝸牛の入力インピーダンスと偶奇モード解析による進行波の音響的性質に関する検討」(2023年12月発表。蝸牛が音刺激を受けると、基底膜上に周波数に応じた進行波が生じる。この進行波は音聴取の要であり、伝搬とともに消失してしまうものと考えられてきた。しかし、実際はそうではなく、反射により減衰するものであることを明らかにした。)、「聴覚メカニズムから考える ~前庭水管が作る蝸牛の音響特性~」(2023年2月発表。骨導音がどのような経路で音刺激を蝸牛に伝えるのかを、前庭水管に注目して可能性を検討したものであり、効果的な音聴取が可能であることを示した。)、「骨迷路亀裂を想定した低音性難聴の発生メカニズムに関する検討」(2023年2月発表。メニエール病は低音性難聴を繰り返す眩暈病であるが、その機序は不明である。蝸牛の骨迷路内に亀裂が生じることで著しい低音性難聴を引き起こすことを報告し、当該病との関連性を検討した。)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Von Bekesy教授の進行波の発見以来、基底膜は音聴取の「要」として、重要な働きをしていることは周知の事実ではあるが、基底膜の形状や物性が進化の過程でなぜ現在のものに至ったのか、また進行波が基底膜上で最大値をとった後に急速に減衰するように見えるが、その内部でどのような波動原理が働いているのかなど、聴覚生理の基礎的事柄であるにもかかわらず解明が遅れている事項が今も多く残されている。2023年度に開発した、汎用正の高い「蝸牛流体力学モデル」は、こうした問題に対して論理的かつ合理的な答えを与えてくれるツールとして有用性を確認してきた。さらに、当該モデルをもとに、外リンパ瘻、内耳気腫、耳硬化症、正円窓の骨性閉鎖など、様々な聴覚疾患モデルを作成し、その難聴特性の検討を進めてきた。特に、骨迷路亀裂が低音性難聴を示すことをこのモデルで示せたことは、メニエール病の機序を考える際に大きなヒントを与えるものと考えている。今後は、医療現場での事実との突き合わせが必要ではあるが、これまで手つかずであった領域に対して、当該モデルの重要性と可能性を実感しているため、本研究は目標に向かって順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
【方策1(蝸牛流体力学モデルの汎用性向上に向けた取組)】 蝸牛流体力学モデルの特徴は、蝸牛を満たす外リンパ液を圧縮性媒質として扱う点にあり、これにより蝸牛の音響的振る舞いを近似なく、厳密に解析できるようになる。残課題として、蝸牛は本来らせん形状を呈するのに対して、本モデルは蝸牛を直線状に延ばした構造をとるため、その影響を慎重に見極める必要がある。蝸牛頂部の尖端形状が低周波音に対して周波数弁別能を高める効果があるとの統計データが報告されたことから、これを理論的に検討し、「リンパ液の粘性が生み出すピラミッド型蝸牛の低周波弁別性能」(2024年5月開催、日本音響学会聴覚研究会)を発表予定である。これに加えて、蝸牛流体力学モデルの汎用性向上に向けた更なる取組を続ける。
【計画2(蝸牛疾患モデルの構築、疾患機序の解明、およびその臨床現場における検証)】 外リンパ瘻、突発性難聴、内耳気腫、真珠腫、正円窓の骨化等の聴覚疾患モデルを新たに設計し、推定される難聴の程度を明らかにするとともに、臨床現場における種々の症例データとの比較を行い、疾患モデルの有用性を検討する。堀井は2024年10月~2025年9月に、欧米の大学において調査研究を行う予定であり、更なる研究の進展と発見を期待している。
【計画3(聴覚研究に関する新たな視点の導入)】 内耳は蝸牛と三半規管から成り、内・外リンパ液も共有されているにもかかわらず、学会では「蝸牛は音を聴取する器官であり、三半規管は平衡を司る器官である」として個別に扱われる傾向にある。一方、工学的にみればこれらは高周波振動センサーと低周波センサーにしかすぎず、両者を一体のものとして見れば難聴と眩暈との関連がより明確に見えてくる。今後、新たな視点を取り入れることで、眩暈の原理解明に繋げる予定である。
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