研究課題/領域番号 |
23KF0045
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
関 修平 京都大学, 工学研究科, 教授 (30273709)
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研究分担者 |
KATARIA MEENAL 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2024年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2023年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | 超分子キラリティ / 外部刺激 / BTBT / 電荷分離 / キラル半導体 / 結晶 / TRMC / 円偏光 |
研究開始時の研究の概要 |
分子凝縮系における電子状態密度の最も重要な支配因子は物質密度であり,対称性の破れた分子の凝縮相密度に関するWallach則が有効である限り,電子輸送性・物性の展開においてキラル分子の固体応用は禁忌と考えられる.一方で低次元物質系におけるスピン偏極状態の現出など,表面・界面の特殊性は物性制御において有効であり,バルク物性である電子輸送性評価においても,Wallach則が破綻を来す系が若干ながら散見されるようになってきた.本研究では,対称性が破れた分子集合系の電子状態密度を,電子輸送特性評価から超迅速診断する分光システムの構築を通じ,電子状態密度におけるAnti-Wallach則の提唱を目指す.
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研究実績の概要 |
分子凝縮系における電子状態密度の最も重要な支配因子は物質密度であり,対称性の破れた分子の凝縮相密度に関するWallach則が有効である限り,電子輸送性・物性の展開においてキラル分子の固体応用は禁忌と考えられる.一方で低次元物質系におけるスピン偏極状態の現出など,表面・界面の特殊性は物性制御において有効であり,バルク物性である電子輸送性評価においても,Wallach則が破綻を来す系が若干ながら散見されるようになってきた.本研究では,対称性が破れた分子集合系の電子状態密度を,電子輸送特性評価から超迅速診断する分光システムの構築を通じ,電子状態密度におけるAnti-Wallach則の提唱を目指した研究を進めている.研究は1)π共役型キラル分子の設計による半導体性キラル分子性結晶の構築,2)非対称置換型半導体活性benzothieno[3,2-b]benzothiophene (BTBT)分子の凝集構造と電子物性評価,ならびに超分子キラリティ制御,を軸に展開し,2023年度は,1)について光電荷分離型マイクロ波伝導度測定法による評価を進めた.特にキラル分子凝集体において顕著なWallach則依存性が観測され,これをもとにした電子状態密度と電荷移動度の相関評価を進めている.2)については片置換型BTBT分子の選択的な合成に成功し,固体薄膜における分子凝集構造の評価とバルク固体内電子移動の定量を進めた.特に,両置換型BTBT分子に比肩する正孔移動度を示すことが明らかとなり,加えて極めて狭い変調域ながら,液晶性Mesophaseを有することが明らかとなり,マクロ相転移に伴う電子構造の変調計測の段階に至っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は1)および2)の研究項目に関して次のように進捗している.1)π共役型キラル分子の設計による半導体性キラル分子性結晶の構築において,末端置換基制御によりキラル結晶・アキラル結晶双方の固体結晶化に成功した.NMR・質量分析等による物質同定は終了し,各種分光・電気化学計測による電子状態推定についてもほぼ完了している.TRMC法を用いた光伝導度計測も順調に推移し,キラル分子性固体における伝導度の低下に加えて,光生成キャリアの寿命に大きな違いがみられることを確認した.それぞれの固体凝集構造において結晶溶媒分子の寄与が疑われるため,結晶溶媒を含まない結晶構造構築について検討を進めている.また,溶媒分子の配置の推定から,有効な分子ドーパントの存在が指摘され,これを目指した固体構造制御を引き続き行う.2)非対称置換型半導体活性benzothieno[3,2-b]benzothiophene (BTBT)分子の凝集構造と電子物性評価,ならびに超分子キラリティ制御では,上記と並行して合成分子の構造同定は完了し,Onsite X線回折による固体薄膜の固体を進めた.この過程で,温度依存相転移と液晶性Mesophaseの存在が指摘されたため,より詳細な凝集構造の決定のため,SPring-8等の放射光施設を用いた凝集構造・薄膜内配向構造の計測を進めている.電子輸送特性はTRMC法によるスクリーニングが終了し,温度・相構造依存特性の評価に着手している.
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今後の研究の推進方策 |
課題1)について半導体性分子コアの展開を進め,現在用いている複合共役環構造の最適化と理論計算を並行して進める予定である.特に,アキラル型構造では当初予想に加え著しく高い電子輸送特性が観測されたため,完全バンド伝導型分子性半導体の実証に向けた素子形成と電界効果電荷移動度計測ののち,速やかに発表する予定である.課題2)については選択的な片置換基導入反応が現在多段階ステップとなっているため,この反応素過程の見直しを進めている.置換基へのキラル部位導入が十分に可能であると予測され,このための合成戦略を試行している.両置換型BTBTと比較して大きな電子輸送能の低下は認められないため,これを用いたキラル分子性結晶の形成と,Racemic体からの分晶を目指した研究を展開する.
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