研究課題/領域番号 |
23KF0058
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分40040:水圏生命科学関連
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
岩田 久人 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (10271652)
|
研究分担者 |
BUENFIL ROJAS ASELA MARISOL 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 外国人特別研究員
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2024年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
2023年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
|
キーワード | ワニ / メキシコ / RNA / トランスクリプトーム / 鱗 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、メキシコ・ユカタン半島のワニ(Crocodylus moreletii)野生個体群の化学物質汚染と影響を統合的に評価することを目的とする。具体的には、血液・鱗および爪を対象に、金属および微量元素および残留性有機汚染物質(ポリ塩化ビフェニルなど)を分析する予定である。同時に、血液・鱗試料のトランスクリプトーム(約10,000の転写物)とメタボローム(数百の脂質、炭水化物、アミノ酸、ホルモン)プロファイルも明らかにする。さらに、データ解析ソフトやバイオインフォマティクスツールを駆使して、上記環境汚染物質の影響を受けたバイオマーカーやパスウェイ・ネットワークを特定する。
|
研究実績の概要 |
野生動物の硬組織からRNAを抽出することは、特に種の保護と非侵襲的なサンプリング方法の確立という倫理的要請を考えると、極めて重要な課題である。 今年度は、メキシコのユカタン半島に生息する固有種・モレレットワニ(Crocodylus moreletii)を対象に、鱗からRNAを抽出するプロトコルの最適化をおこなった。RNAlaterを用いた臀部鱗から採取した組織片の保存に加え、RNAの単離・精製を容易にするため、超音波処理法・ビーズ粉砕法など、様々な技術を検討した。RNAの純度と回収量を評価し、最も効率的な抽出方法を決定した。 最適化されたプロトコールでは、超音波処理とそれに続くProteinase K処理をおこなうことで、十分な量と品質のRNAが得られた。得られたRNAサンプルの濃度は18.7~154.7 ng/μLで、十分な純度(260/280比:~2)とインテグリティ(RNA Integrity Number: > 5.5)を示した。定量的PCR分析による検証により、抽出されたRNAが遺伝子発現レベルの研究に適していることが確認された。これらの品質は次世代シーケンシング(NGS)解析に十分であり、ワニ個体群を対象にトランスクリプトームデータを獲得できる可能性がある。 本研究は、ワニの臀部鱗からRNAを抽出する新しいプロトコルを最適化し、野生個体群の環境ストレスに対する生物学的応答を解明するトランスクリプトーム解析のための重要なツールを提供するものである。このプロトコールは、モレレットワニの保護活動に役立つだけでなく、硬組織を持つ他の非モデル種についても同様の方法を開発するために有用である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はコロナウィルス蔓延の影響を受け、調査・研究の一部に支障が出たが、今年度の活動は正常に戻りつつある。現在はメキシコからのワニ試料の2度目の輸入を試みている。また、メキシコ側で追加のフィールド調査を進め、昨年度までに十分な数の試料を採取することに成功した。今年度はこれら試料のトランスクリプトーム解析に着手している。したがって、進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後もワニ試料の分析を進める。具体的には、鱗試料のトランスクリプトーム(約10,000の転写物)と血液試料のメタボローム(数百の脂質、炭水化物、アミノ酸、ホルモン)について測定条件の最適化を終了したので、本格的に測定を進める。特にトランスクリプトーム解析については、de novoシーケンス法もしくは近縁種である他のワニのゲノム情報を基に遺伝子の同定を試みる。 また日本側研究者とメキシコ側研究者で得られたデータを共有し、今後の研究の推進方策について議論したい。一方、これまでに採取した残りのワニ試料の輸入についても手続きを始め、早急に試料を入手できるように準備したい。
|