研究課題/領域番号 |
23KF0113
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分90030:認知科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 真也 京都大学, 高等研究院, 准教授 (40585767)
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研究分担者 |
JIM HOI-LAM 京都大学, 高等研究院, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-07-26 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2025年度: 100千円 (直接経費: 100千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | ゾウ / 社会的認知 / 比較認知科学 / 種間比較 / 視点取得 / 他者理解 / 評判 / 第三者評価 |
研究開始時の研究の概要 |
ゾウは「賢い動物」だと言われるが、そのことを実証的に示した研究は驚くほど少ない。本研究計画では、ゾウが「他者の評価を気にするかどうか」を調べる。他者の評価を気にする心は、評判を介した間接互恵的協力社会に生きるヒトに特有だと考えられてきたが、そもそもヒト以外の動物での研究がほとんどない。類人猿とも比較することにより、ヒトらしい心理特性の進化的基盤について理解が進むと期待できる。個々の研究成果を生み出すだけでなく、現在構築中の野生ゾウ研究の国際協力関係も加え、飼育下と野生をシームレスにつなぐ世界的なゾウ研究ネットワークを構築し、ゾウの知性について包括的に理解することを目指す。
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研究実績の概要 |
「賢い動物」であると言われながら、科学的な知見がほとんどないゾウの認知能力について、とくに社会的認知に焦点をあて、心理学実験の手法を通して解明に取り組んでいる。2023年度は、タイ・チェンライにあるゴールデントライアングルアジアゾウ財団のエレファントキャンプにて、飼育ゾウを対象とした認知実験をおこなった。6月に来日してから現地対応機関および共同研究者であるニューヨーク市立大のJosh Plotonik博士らと準備を進め、研究計画の事前登録も済ませている。アジアゾウがヒトの注意状態を理解できるかどうかを調べる認知実験を10頭のゾウでおこなった。現在データ分析中であるが、予備分析の結果からは、ゾウの高い他者理解の能力が示唆されている。アフリカゾウでおこなわれた先行研究の結果とも比較しつつ、ゾウの高度の認知能力の進化について考察を深めている。2024年度に第31回国際比較認知会議でポスターし、国際誌への論文公表も目指している。 来日する前におこなっていた2つの研究の論文執筆も進めている。1つは間接的および直接的な評判形成に関するイヌ研究であり、もう1つはCOVID-19のロックダウンが子犬の社会化に与える影響に焦点を当てている。2023年10月には、日本動物心理学会の会議で評判形成の研究を口頭発表した。 アウトリーチ活動にも積極的に取り組み、2023年12月にはJSPSサイエンスダイアログプログラムにも参加し、20人の高校生のクラスに「動物行動研究の紹介」と題した1時間の講義をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでゾウの知性にかんする実証研究がほとんどおこなわれてこなかったのは、巨大かつ強大な力をもつゾウでの認知実験が非常に難しかったからである。それに対し、Hoi-Lam Jin(外国人特別研究員、本研究の分担者)は、これまでに獲得してきた動物研究の知識と経験、それに入念な準備をおこなうことで、ゾウでの実験を成功させてきた。今年度も10頭のゾウで高い質のデータを収集することができた。この数は、先行研究と照らし合わせても、ゾウでは非常に多い部類にはいる。今後分析が進み、ゾウの認知能力について新たな知見が得られることは間違いない。2024年度中の国際学術誌への発表も期待できる。 2024年に再度タイに渡航し、新たな実験をおこなう計画も着々と立てている。近く事前登録をおこなう目途がついている。これまでの経験・築いてきた現地対応機関との関係性を考えると、現地での実験も順調に遂行できるだろう。 Hoi-Lamは現在2つの国際学術誌から依頼を受けて査読を担当しており、着実に国際的な知名度を高めている。今後も日本と世界を結ぶ研究者に成長してくれると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度におこなった研究から、ゾウの高い社会的認知能力が明らかになりつつある。他者の目を気にするようになるには、そもそも他者の視線を理解する能力が必要である。この能力がゾウにもみられることが示唆されている。これまでに収集したデータの分析をさらに進め、ゾウによるヒトの注意状態の理解および異種間コミュニケーションにかんする論文を執筆する。2024年度中に国際学術誌への公表を目指す。 新たな実験についても、計画通り粛々と進める。タイのエレファントキャンプに2024年7-9月に訪れ、10頭以上のゾウでデータを収集する計画である。実験の事前登録については6月までにおこなえるよう準備を進めている。大型動物を対象とした認知実験は、計画通りにいかないことも多々あるが、Hoi-Lamのこれまでの経験を考えると、現場で柔軟に対応できると期待できる。万一予定通りの実験遂行が困難になった場合は、関連テーマへと柔軟に研究計画を修正できるよう、代替案の準備も進めている。 これらの研究成果を、10月に開催される日本動物心理学会および国際動物行動学会等で発表することを計画している。また、JSPSサイエンスダイアログプログラム等のアウトリーチ活動にも参加し、研究成果の一般還元にも積極的に取り組む予定である。
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