研究課題/領域番号 |
23KF0137
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新井 史人 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90221051)
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研究分担者 |
WANG RIXIN 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-09-27 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2025年度: 200千円 (直接経費: 200千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 圧電アクチュエータ / マイクロメカニズム / トポロジー最適化 / マイクロロボット / マイクログリッパ / 機械力学 |
研究開始時の研究の概要 |
メタマテリアル機構は、合理的に設計された周期的なセルパターンによって決定される特定の機械的応答を備えた人工構造である。メタマテリアルの概念に基づいて、特別な構造設計を通じて、より大きな変位、より高い感度、または特定の変形モードを達成できるようになりる。メタマテリアル機構をマイクロロボットに適用するには、その構造の変形性能を目的に応じて向上させることが重要になる。そこで、本研究では、圧電材料を用いた構造設計とその最適化の方法論を提案する。また、力の感知と把握機能を有するマイクロロボットに応用する。
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研究実績の概要 |
圧電マイクロメカニズムは、構造の変形制御や変形感知機能により、マイクロロボット工学において広く注目を集めている。しかし、圧電材料の応答振幅はその結晶構造によって制限されるため、変形性能を目的に応じて向上させることが重要になる。メタマテリアル機構は、合理的に設計された周期的なセルパターンによって決定される特定の機械的応答を備えた人工構造である。特別な構造設計を通じて、より大きな変位、より高い感度、または特定の変形モードを達成できるようになりうるが、ほとんどの設計は設計者の直観と経験に大きく依存しており、望ましい構造を設計することが困難となっている。そこで、本研究では、圧電材料を用いた構造設計とその最適化の方法論を提案する。また、力の感知と把握機能を有するマイクロロボットに応用する。 今年度は、非線形性を考慮した圧電 PVDF フィルムの変形モードと切断パターンの対応を研究することにより、製造可能性の制約を考慮し、切紙パターンの幾何学的表現方法の枠組みを構築した。変形モードは、シェル構造上の一連の点の変位を当てはめることによって近似され、有限要素理論と組み合わせて、変形モードと構造剛性の離散関数を確立した。フィルムの切断パターンの幾何学的記述方法を提案した。切断パターンの中空部分をスプライン曲線で表現し、制御点の座標と曲線の幅を設計変数として設定し、各曲線の形状を一意に決定した。これにより、設計変数からフィルム変形関数までの明示的な関数が得られた。また、低剛性領域によって引き起こされる数値的不安定性を回避するために、要素除去戦略を検証し、低密度ユニットを除去した後の非線形幾何学的問題を分析した。 本研究のトポロジー最適化手法の応用例として、a)磁気駆動カプセルロボットのためのマイクログリッパと、b)小型ロボット用の関節に用いるヒンジ構造を検討し、基礎的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧電マイクロメカニズムは、構造の変形制御や変形感知機能により、マイクロロボット工学において広く注目を集めている。しかし、ほとんどのメタマテリアルの設計は設計者の直観と経験に大きく依存しており、望ましい構造を設計することが困難となっている。したがって、本研究では、圧電材料を用いた構造設計とその最適化の方法論を提案することを目的としている。 まずは、圧電フィルム(PVDF)の変形モードと切断パターンとの対応関係を適切にデザインするために必要となる、圧電フィルムの切り紙パターン設計法を確立するため、製造可能性の制約を考慮し、切紙パターンの幾何学的表現方法の枠組みを構築した。変形モードを考慮し、有限要素理論と組み合わせて、変形モードと構造剛性の離散関数を確立し、フィルムの切断パターンの幾何学的記述方法を提案した。切断パターンの中空部分をスプライン曲線で表現し、制御点の座標と曲線の幅を設計変数として設定し、各曲線の形状を一意に決定した。これにより、設計変数からフィルム変形関数までの明示的な関数が得られた。また、低剛性領域によって引き起こされる数値的不安定性を回避するための検討も進んでいる。以上により、設計に関する基礎的な成果がでているため、順調といえる。 また、本研究では、圧電アクチュエータによる把握機能を有するマイクロロボットに応用することが目標になっている。本年度は、a)磁気駆動カプセルロボットのためのマイクログリッパと、b)小型ロボット用の関節に用いるヒンジ構造を検討し、マイクロロボットの具体的な応用例の検討を進めた。実際のハードウェアに関して具体的な設計に着手する準備ができており、順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
圧電フィルムの切り紙パターンの設計方法を確立した後、圧電フィルムベースのメタマテリアルのマルチスケール複合構造の設計モデルを確立する。これを達成するために、解析的アプローチを採用して、ミクロスケールの設計変数と巨視的な材料特性との間の明示的な関数を導出する。均質化技術を利用して、圧電材料の微細構造の等価剛性マトリックスを導き出す。巨視的な材料剛性特性と設計変数の間の関係を近似することで、巨視的な変形に対するミクロスケールのセル構造の形態および空間分布の影響を調査する。 得られた設計解に基づいて 、圧電フィルムによる駆動メカニズムを構築する。その具体例としては、マイクログリッパを対象とする。トポロジーを最適化したメカニズムを作製し、実験的に変形能、発生力、剛性などの基本特性を評価し、アルゴリズムの有効性を検証する。準備段階では、Form 3 および BMF 製の3Dプリンタを利用して、最適化された結果に基づいてマイクログリッパを作製する予定である。 ここで、3Dプリンティングによって発生する可能性がある製造上の欠陥を吟味しながら、製造可能性を考慮した制約アルゴリズムのパラメータを調整する。テスト段階では、マイクログリッパは 4 組の電磁コイルによって生成される交流磁場によって駆動する予定である。さまざまな電流入力下でのマイクログリッパの変位をテストする。マイクログリッパの先端はカメラを使用して観察し、オプティカルフローを使用するなどして、グリッパ先端の変位を計測する。さらに、マイクログリッパの電流と出力の関係を正確に測定するために、力センサを備えたプローブを作製する。構造変形に起因する材料のクリープ効果を考慮し、複数回の繰り返し試験を実施して評価試験を行い、マイクログリッパの実現可能性を検証する。
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