研究課題/領域番号 |
23KF0138
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
幾原 雄一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70192474)
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研究分担者 |
YOO KYUNGHYEON 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-09-27 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | ジルコニア / 原子分解能電子顕微鏡 / 格子欠陥 |
研究開始時の研究の概要 |
ジルコニアセラミックス内部に形成される粒界や転位は、ジルコニアの力学特性やイオン伝導特性に決定的な役割を果たすことが知られている。ジルコニア内部の欠陥における機能発現メカニズムを本質的に理解し、材料科学に立脚したな材料設計を行うことにより、ジルコニア材料特性を飛躍的に向上させることが期待できる。 本研究では多様な先端走査透過電子顕微鏡法を高度に融合し、ジルコニア欠陥における局所原子構造、異種元素偏析構造、電子状態を直接計測することで、欠陥における材料特性発現メカニズムの解明し、新規高性能ジルコニアの創製を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究ではジルコニアセラミックスのモデル欠陥や単結晶を対象に、多様な先端走査透過電子顕微鏡法を高度に融合し、その局所原子構造、異種元素偏析構造、電子状態を直接計測することで、ジルコニアにおける特性発現メカニズムを解明し、高機能ジルコニアセラミックスの創製を目指す。当該年度は下記の成果が得られた。 ①単斜晶ジルコニア多結晶体の焼結:本研究では単斜晶ジルコニア粉末を用いて、異なる温度条件で単斜晶ジルコニア多結晶体の焼結を試みた。その結果、1200度の条件下で相対密度約90%の焼結体を作製することに成功した。相対密度を向上させるため、さらに高温条件で焼結を行ったが、作製された焼結体はすべて割れた。この原因として、焼結過程中に高温から冷却される際に、ジルコニアが高温安定相である正方晶から単斜晶へ相変態が発生し、それに伴う体積膨張が割れの原因と考察される。そこで本研究では冷間静水圧成形法(CIP)を用いて成形体を作製し、再度焼結温度1200度で焼結を試みた。その結果、相対密度97%の単斜晶ジルコニア焼結体を作製することに成功した。 ②正方晶ジルコニア単結晶の合成:本研究ではY2O3無添加の単斜晶ジルコニア粉末と10mol% Y2O3添加立方晶ジルコニア単結晶を接触させ、1600度で熱処理することでYの拡散を意図的に制御し、正方晶ジルコニアモデル単結晶の作製を試みた。しかし、結果として単結晶が割れており正方晶構造は確認されなかった。この問題の原因として、熱処理過程において高温から冷却される際に、ジルコニア粉末が正方晶から単斜晶へ相変態し、その結果、粉末と接触する単結晶側では粉末の体積変化による応力を受け、割れが発生したと考察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で記述したように、単斜晶ジルコニア多結晶体の焼結は既に成功している。またその構造解析も現在進行しており、当初の計画通りに研究を進めることができると判断した。また、「今後の研究の推進方策」に記述されるように、正方晶ジルコニア単結晶の合成に関する対策を計画しており、全体的な研究計画はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き正方晶ジルコニア単結晶の合成を試みる。初年度の知見を踏まえて、3mol% Y2O3添加正方晶ジルコニア粉末を使用する予定である。正方晶ジルコニア粉末を用いることにより、熱処理過程における正方晶から単斜晶への相変態を回避でき、立方晶ジルコニア単結晶の割れを防ぐことが期待できる。、得られたモデル試料に対してADF,ABF,EDS, EELSなどの先端原子分解能電子顕微鏡法を用いて粒界における原子構造・化学組成・原子状態の解析を行い、ジルコニア特性との相関性を明らかにする予定である。
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