研究課題/領域番号 |
23KF0214
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野海 俊文 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (30709308)
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研究分担者 |
MEDEVIELLE MAXIME 東京大学, 大学院総合文化研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-11-15 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2025年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
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キーワード | 弦理論 / ランドスケープ / スワンプランド / T双対性 |
研究開始時の研究の概要 |
弦理論を用いて数多くの素粒子論・宇宙論模型が構成されており、その多様性は「弦理論のランドスケープ」と呼ばれている。その一方で、従来の弦理論の枠組みでは「加速膨張宇宙」の記述が容易でなく、弦理論が「この宇宙を記述する量子重力理論」として成功するにはこの点を克服する必要がある。 これを踏まえ本研究では、特別研究員らが提案した「レベルマッチング条件を緩めた閉弦の場の理論」の成果を発展させ、弦理論の新たなランドスケープの開拓を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では弦理論のランドスケープを精査することで、量子重力と無矛盾な素粒子論・宇宙論の絞り込みおよび「この宇宙を記述する量子重力理論」の構築を目指す。特に、弦理論の双対性や量子重力の整合性条件(スワンプランド条件)などの視点から多角的な議論を展開する。特別研究員が来日した2023年11月以降の5ヶ月間の成果を以下にまとめる。 来日後のはじめの3ヶ月間は、特別研究員が博士課程で指導教員と行ってきた共同研究を論文にまとめる作業を主に行った。当該論文で特別研究員らは、ブラックホール時空や宇宙論的時空に現れるキリングホライズンのT双対を調べた。T双対性を低エネルギー有効理論の枠組みで記述する「ブッシャー則」を「複数のモジュライ場と相互作用するアインシュタイン・マクスウェル理論」のブラックホール時空や宇宙論的時空に適用することにより、キリングホライズンのT双対がモジュライ空間の端に対応し、特に張力を持たない弦が現れることを示した。このことは、T双対側の見方ではアインシュタイン重力理論を用いた解析が破綻し、弦理論に基づく解析が必要になることを示している。当該論文はarXiv上で発表され、論文雑誌で現在査読中である。 これと並行し、受入教員らとの共同研究にも着手した。スワンプランド条件の1つとして提案されている「弱い重力予想」は「極限ブラックホールの質量電荷比がある種の単調性に従う」ことを示唆している。この単調性が現象論模型への有用な示唆を与えるかを明らかにするため、現在、電弱理論におけるブラックホールのスペクトルを重力の量子効果まで考慮して解析している。そのほか、近年進んでいる「機械学習に基づく弦理論のランドスケープの研究」を暗黒物質の現象論に応用する可能性も現在模索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では、博士課程で指導教員と行っていた共同研究を来日前に仕上げる予定であった。しかし、当該研究に遅れが生じたため、本研究のメインテーマである「弦理論のランドスケープ」に関する受入教員との共同研究への着手が遅れた。既に具体的な解析を始められており、次年度以降に挽回できる程度ではあるが、これをもってやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、電弱理論における荷電ブラックホールの極限条件に関する研究をまずは行う。このテーマは受入教員らの先行研究の自然な拡張であり、研究遂行上の大きな困難は無いと見越している。このテーマで研究を1つ仕上げることにより、特別研究員と受入教員の間で、共同研究の進め方などについてお互いに慣れることもできると期待している。 それと並行して、特別研究員が新たな研究の方向性として着目している「機械学習に基づくランドスケープ研究の暗黒物質模型への応用」についても議論を進める。今年度は先行研究の調査や研究手法の習得、解析対象とする模型の絞り込みをメインで行ったが、次年度からは具体的な解析に着手したい。
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