研究課題/領域番号 |
23KF0233
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田中 貴浩 京都大学, 理学研究科, 教授 (40281117)
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研究分担者 |
RAHMAN MOSTAFIZUR 京都大学, 理学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-11-15 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2025年度: 600千円 (直接経費: 600千円)
2024年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2023年度: 300千円 (直接経費: 300千円)
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キーワード | 宇宙物理 / 重力波 / 新粒子 / 修正重力 / 巨大ブラックホール / ブラックホール摂動 |
研究開始時の研究の概要 |
将来の重力波観測からブラックホールを理解するための理論を整備することが本研究の目的である。 具体的には、1) 質量比の大きな超巨大ブラックホールと恒星質量のコンパクト天体の連星(EMRI)からの重力波を用いた、新物理の探索、2) 軽い粒子の場が作るブラックホール周りの雲のEMRIへの影響、3) 階層的3体がEMRI形成にあたえる影響、などの研究を進める。
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研究実績の概要 |
将来の重力波観測からブラックホールを理解するための理論を整備することが本研究の目的である。 具体的には、1) 質量比の大きな超巨大ブラックホールと恒星質量のコンパクト天体の連星(EMRI)からの重力波を用いた、新物理の探索、2) 軽い粒子の場が作るブラックホール周りの雲のEMRIへの影響、3) 階層的3体がEMRI形成にあたえる影響、などの研究を進める。1)に関しては、軽いスカラー場やベクトル場が存在する際の放射による反作用を取り入れた簡単な重力波波形モデルは存在するが、将来の観測を見据えた精密なモデルの作成をめざす。 この研究は未知の軽い粒子が発見された際、その正体を探る強力な手段となる。2)の研究も観測的制限を得る上で必要な理論的基礎を築く研究である。3)は、共鳴による非自明な連星進化自身が面白い研究対象であるとともに、EMRI形成シナリオを明らかにする上でも重要となる。 初年度は、これまでRahman氏が行ってきたブラックホール準固有振動の安定性に関する研究について、その改善点について議論を深めた。この点につじては特にこれ以上の進展は見込めないという結論に至った。Rahman氏は共同研究者とともに論文を準備している。加えて、当初から予定していた軽いベクトル場とスカラー場の区別がつけられるかどうかの研究を進めた。フィッシャー解析のための数値計算はおおむね完成しており、計算のチェックを経て論文執筆に至る予定である。また、スカラー場の電荷として多重局モーメントを持つようなコンパクト天体にかんするEMRIの軌道への影響を議論した。これについても今後の計算の筋道について議論を行った。 これに加えてRahman氏は一般の変形して高次のモーメントを持つコンパクトオブジェクトを質量差の大きい連星からの重力波信号で見分ける方法についても議論をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究ではフィッシャー解析を用いているが、計算結果を得るためには計算コストを下げるための工夫が必要であることがわかり、その改善に時間がかかっている。しかし、最終的な結果である、区別がつけられるか否か、また、どのような重力波源があれば区別がつけられるかの答えが得られそうな段階にきており、概ね順調である。近いうちに論文にまとめることができると考えている。 このプロジェクトに続く次のテーマについても内容が具体化しており、計算を進めればよいという段階に入っている。 ブラックホール準固有振動の安定性に関する研究については、安定性の指標の選び方によって安定であるか不安定であるかが変わることは避けられないという結論に至っている。これは考えている安定性が程度問題の問題であるがゆえに、不定性は避けられないのは最初から明白であるが、指標に対してなんらかの意味付けが可能であるかを模索した。結果として、あまり意味のある結果は得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている重力波波形の修正が、ベクトル場によって引き起こされているものか、スカラー場によるものかの判別可能性について、研究を完成させて論文にまとめる。 さらに、EMRIの文脈で、dynamical Chern-Simons理論のような双極子チャージをもつコンパクト天体を考えた場合の波形に対する影響を調べる。これまでにも類似の研究はあるが、物理的に想定される場合の計算になっていないので、この点を改善する。 加えて、当初の予定通り、回転ブラックホールの周りにスカラー雲を形成するアクシオン粒子について研究する。連星系では、潮汐相互作用が雲のエネルギー状態の共鳴遷移、特に超微細共鳴を引き起こす。さらに、重力波の放出や逆反応効果もこの散逸を促進し、雲の質量を大きく減少させる。我々は特に、大きな離心率を持つ大質量比インスパイラル(EMRI)系に付随するスカラー雲を考察する。これは、天体物理学的なEMRIがしばしば高い離心率を示すため、雲の消滅の周波数範囲が広くなり、特徴的な重力波のシグネチャーが残るという点で重要である。これらの研究は、重力波観測によるアクシオン雲の検出に示唆を与えるとともに、アクシオン粒子の性質についての洞察を与えるものである。
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