研究課題/領域番号 |
23KF0235
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
生越 友樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (00447682)
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研究分担者 |
SHI TANHAO 京都大学, 工学研究科, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-11-15 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2025年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | ピラー[n]アレーン / フリーデルクラフツアシル化反応 / 大環状ピラー[n]アレーン |
研究開始時の研究の概要 |
ピラー[n]アレーンは可逆的なフリーデルクラフツアルキル化から合成されるため、熱力学的に安定なものを得ることができる。しかし、熱力学的に安定ではない大環状ピラー[n]アレーンの合成は困難である。本研究では、この課題を克服するため、フリーデルクラフツアシル化を利用する。アシル化は不可逆的であり、単一生成物が得られる。そのため、アシル化を用いピラー[n]アレーンを合成すると、得られた大環状化合物は熱力学的に安定な生成物に再配列しないと予測される。さらに、カルボニル基がブリッジに導入されるため、それを基に官能基化が可能と期待される。ブリッジ官能基化ピラー[n]アレーンを用いた超分子集合体を形成する。
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研究実績の概要 |
フリーデル・クラフツ(FC)反応は、基礎的に用いられる有機化学での反応の1つである。FCアルキル化は可逆的な反応(動的共有結合)であり、最も安定した生成物が熱力学的支配下で生成される。一方FCアシル化は不可逆な反応であり、二種の化合物間の反応により、単一の生成物が生成される。ピラー[n]アレーンは、これまでFCアルキル化反応を用いて行われてきた。しかし大環状ピラー[n]アレーンの合成では、FCアルキル化反応を用いると、熱力学的に安定なピラー[5,6]アレーンを主生成物が得られるとともに、速度論的コントロールで形成した大環状ピラー[n]アレーンが様々な環サイズの混合物として副生成物として得られ、これらを単離するために煩雑な精製が必要であった。そこで本研究では、二種の鎖状オリゴマーを不可逆なFCアシル化を使用して連結することで、特定サイズのピラー[n]アレーンの合成を試みた。その結果、カルボン酸基を末端に有するオリゴマーと電子豊富なオリゴマーとの反応は、オリゴマーの長さによってリングサイズが決定され、サイズ選択的に大環状ピラー[n]アレーンが中程度の収率で合成可能であることが分かった。具体的には、トリマーとカルボン酸末端トリマーの反応により、[3+3]反応によりピラー[6]アレーンが選択的に得られた。テトラマーとカルボン酸末端トリマーからは[3+4]反応によりピラー[7]アレーンが選択的に得られた。同様にして[4+4]反応、[4+5]反応、[5+5]反応により、対応するピラー[8,9,10]アレーンを選択的に得ることに成功した。これら大環状ピラー[n]アレーンのFCアシル化による収率は20%~27%であり、環化収率はFCアルキル化(収率<3%)から10~30倍増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ピラー[n]アレーンの構成単位となるオリゴマーを合成し、フリーデルクラフツ(FC)アシル化反応による連結にとって、大環状ピラー[n]アレーンを中程度の収率(20%~27%)で得ることができた。またFCアシル化反応では、ブリッジに2か所、位置選択的にカルボニル基を導入することができた。カルボニル基の反応性を利用することで、様々な官能基をブリッジに導入することも可能となった。これらにより、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ブリッジの機能化による水溶性ピラー[n]アレーンの合成 ピラー[n]アレーンの上下に水に溶けるイオン性官能基やノニオン性のオリゴエチレン鎖を導入すると、水に可溶なピラー[n]アレーンを合成することが可能である。一方で、この設計では、上下にイオン性・ノニオン性官能基が存在することから、疎水性空間は制限されたものとなってしまい、疎水性相互作用が効率的に働かないといった問題点があった。本研究では、前年度までの成果により、ブリッジの2か所に機能性官能基を導入することが可能となった。これを利用し、ブリッジに水溶性のイオン性官能基やノニオン性オリゴエチレン鎖を導入する。これにより水溶化が達成されれば、ピラー[n]アレーンの上下にはイオン性・ノニオン性官能基が存在しないことから、より発達した疎水性空間を作り出すことができると期待される。得られた水溶性ピラー[n]アレーンのホスト―ゲスト特性について評価を行い、上下に官能基を入れた場合との違いを明らかとする。
ヤヌス型ピラー[n]アレーンの合成 前年度に達成することのできたFCアシル化反応を活用して、親水性と疎水性が半々になったヤヌス型環状分子を合成する。六角柱のピラー[6]アレーンを合成する場合は、3ユニットが親水性基、3ユニットが疎水性基の両親媒性のヤヌス型環状分子となる。親水性ゲスト分子と疎水性ゲスト分子といった、通常は混ざり合わないゲスト分子を混ぜ合わせる相溶化剤としての活用を試みる。
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