研究課題/領域番号 |
23KF0290
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 外国 |
審査区分 |
小区分16010:天文学関連
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
石垣 美歩 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (30583611)
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研究分担者 |
KUZMA PETE 国立天文台, ハワイ観測所, 外国人特別研究員
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研究期間 (年度) |
2023-11-15 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2025年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | Globular clusters / The Milky Way Galaxy / Optical photometry |
研究開始時の研究の概要 |
天の川銀河ハローの球状星団は、年齢100億年を超える古い恒星種族からなり、それらの潮汐破壊が銀河系形成に主要な役割を果たしたと考えられている。銀河系の潮汐力で本体から引き剥 がされた星による外縁部構造を持つ星団は、潮汐破壊の過渡期にあると考えられ、 銀河成長過程を直接解明できる格好の天体である。本研究課題では、すばる望遠鏡Hyper Suprime Camと、星の化学組成に敏感な狭帯域フィルターを組み合わせて、球状星団外縁部の系統的な撮像探査を実施する。外縁部の形状、化学組成、銀河系内の軌道情報を組み合わせることで、星団潮汐破壊メカニズムを解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、天の川銀河初期の形成史解明の鍵となる球状星団の形成環境と化学動力学進化を明らかにすることを目的とする。天の川銀河におよそ150見つかっている球状星団は、多くが100億年を超える年齢を持ち、銀河系内部で形成されたもの、もしくは別の銀河でできてのちに銀河系に取り込まれたものなど、様々な起源を持つと考えられる。本研究では、球状星団の外縁部構造を深い撮像・分光観測で探査し、天の川銀河の潮汐力の影響、および星団自身の化学力学進化に制限を与えることを目指す。 本年度は、天の川銀河ハロー内部およそ15kpc以内に位置する球状星団について、最新の天の川銀河恒星系の広域撮像カタログで公開された、星の固有運動、年周視差、元素組成の推定値をもとに、外縁部の空間分布・元素組成分布を正確に導出することを試みた。星団に所属する星以外の混入の影響を最小限にするため、広帯域・狭帯域フィルターによる撮像データを組み合わせて、k近傍法のアルゴリズムを適用し、星団に所属している確率を計算する手法を検討した。これによって、混入の影響を抑えられることを確認し、星団の中心から離れた位置で、星団にかつて所属していた天体の候補を同定することができた。また狭帯域フィルターのデータを暗い星まで含めて大幅に拡充すると共に外縁部に付随する星の運動情報を得るため、新たにすばる望遠鏡を用いる観測提案を2件提出した。また3月に行われた関連分野の研究会で研究発表を行い、参加者との議論を通して、狭帯域フィルターの較正について有益な助言を得ることができた。 来年度以降、天の川銀河の広域分光探査がいくつかの国際共同プロジェクト(WEAVE, すばる望遠鏡Prime Focus Spectrograph)で計画されていることを踏まえ、本年度の成果を踏まえた球状星団の追観測の戦略について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、星の空間分布、固有運動、化学組成などの素性が過去の研究からよくわかっている比較的近傍の球状星団で、外縁部構造を正確に求める手法を確立することに注力した。2023年に出版された天の川銀河恒星系の広域撮像カタログから取得できる情報に、機械学習のアルゴリズムを適用することで、星団外縁部の星団メンバー星を同定できることを確認した。以上の成果をもとに、同様の狭帯域フィルターを8m望遠鏡で使えるすばる望遠鏡への観測提案を、2本提出することもできている。最新のデータを最大限活用しつつ、必要な観測データを取得するための観測提案提出を達成することができたため、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は(1)近傍の球状星団およそ50天体について、Pristineサーベイによる広帯域・狭帯域撮像データ、Gaia衛星による最新位置天文データを組み合わせて、本年度に開発した手法を適用し、結果の妥当性を評価する。特に撮像サーベイ観測のバイアス、金属量推定値の誤差、天の川銀河前景星の混入等を定量的に評価することが直近の課題である。この評価を踏まえて、星団外縁部構造を精度良く決定し、結果を論文にまとめる。(2)天の川銀河外部ハローに付随する遠方の球状星団について、新たにすばる望遠鏡等で狭帯域撮像データ、分光データを取得し、同様の解析を行う。天の川銀河内部と外部で球状星団の外縁部構造に系統的な違いが見られるかを明らかにする(3)観測の結果をN体シミュレーションと比較し、星団の銀河系との力学相互作用と星団内部の力学進化について制限を得る。(4)進行中の分光サーベイプロジェクトWEAVEおよびPFSで取得される分光データを解析し、外縁部や星団から離れた位置でのストリーム構造の有無を調べる。 (2)および(4)に含まれる分光観測については、観測提案の採否、分光サーベイプロジェクトの進捗状況によっては計画通り進まない可能性がある。その場合は近傍の球場星団サンプルについて(1)、(3)に注力し、投稿論文としてまとめた上で、(2)の戦略を再検討する。 2024年11月に予定されている国際研究会「IAU Symposium 395: Stellar populations in the Milky Way and beyond」で初期成果を発表するため、予稿を提出済みである。
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