研究課題/領域番号 |
23KJ0008
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45020:進化生物学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
細木 拓也 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 種分化 / 交雑 |
研究開始時の研究の概要 |
生命の多様化を理解する上で、種分化の過程を解き明かすことは重要な課題である。近年、ヒトを含め、多くの生物のゲノム上に“種間交雑の痕跡”が次々と同定されてきた。すなわち、種分化は常に分化が拡大するとは限らず、しばしば交雑によりゲノムが混合しうる。一方で、ゲノムが混合した後に、遺伝的に異なる種が再分離する帰結も明らかとなってきた。交雑後の対比的な帰結を理解することは、二つの集団が交雑しつつも二つの種として確立するかどうか、すなわち種分化を完成するかどうかを規定する要因に迫れるため、重要な課題といえる。本課題では、トゲウオ種間の雑種集団を材料に、交雑後も遺伝的分化が維持される機構を追究する。
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研究実績の概要 |
種はいかにして完成するのだろうか?種分化とは、一つの集団から互いに遺伝的交流のない二つの集団の分化に至るまでの連続的な過程である。種分化の過程では、常に二集団の分化が拡大する方向に進化が進むとは限らない。例えば、交雑は二集団を遺伝的に均一化し、それまでに進行した分化を逆行させる。一方で近年、いったん交雑しても、雑種集団が均一化したままではなく、二つの遺伝的に異なる集団に再度分離する二種も同定されている。交雑後も種間の遺伝的分化が維持される要因の追究は、二つの集団が、交雑しつつも生殖隔離が完全に成立した二つの種として確立するかどうか、すなわち種分化が完成しているかどうかを左右する要因が何であるかを理解する上で、重要な課題である。本課題では、「完全に均一化するか、それとも再分離するか」という対比的な帰結を決定する生態的・内因的要因を追求することを目的とし、雑種集団の集団遺伝学解析と野外進化実験を行った。 本年度では、第一に、岩手県大槌町の津波跡地に生息するイトヨとニホンイトヨ間の雑種集団から得た個体の全ゲノムシークエンスを実施することで、交雑の帰結に至る進化的要因をゲノムワイドに検証できる基盤が整った。第二に、北海道内でトゲウオ複数種が同所的に生息している地域から網羅的に標本を採集し、ddRAD-seqから雑種集団の検出を試みた。「完全に均一化するか、それとも再分離するか」という対比的な帰結に至った集団があるか、その原因は何であるか、追究する基盤が整った。第三に、人工進化実験を始動することに成功した。まず、北海道大学苫小牧研究林に淡水から汽水までの環境勾配を模した人工生態系を構築した。次いで、イトヨ・ニホンイトヨ種間の雑種を作成し、人工生態系に導入した。人工生態系内と野外集団の間にみられる共通点を探索することで、交雑の帰結に至る進化的要因を追究可能なシステムが立ち上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然環境下に存在する複数の雑種集団を対象とした集団遺伝解析に着手できたため。また、そのシークエンスを得ている過程にあるため。加えて、雑種の人工進化実験に着手でき、野外での進化パタンと人工進化実験の結果を比較可能な系を立ち上げることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
岩手県大槌町の津波跡地に生息するイトヨとニホンイトヨ間の雑種集団について、シークエンスが得られ次第、ゲノムワイドな交雑パタンを推定する。次いで、北海道内でトゲウオ複数手段について、シークエンスが得られ次第、雑種集団の検出と、ゲノムワイドな交雑パタンを推定する。加えて、人工生態系に導入した雑種を回収し、ゲノム解析を実施するほか、再放流ののちに人工生態系内での自然繁殖を誘導し、人工進化実験に着手する。
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