研究課題/領域番号 |
23KJ0014
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
野口 真司 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | 金属窒化物 / 局在表面プラズモン共鳴 / core-shell粒子 / 構造色 / Stober process |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、金属窒化物の局在表面プラズモン共鳴と酸窒化物形成による吸収帯の変化を利用することで、構成物の光吸収と構造による干渉の二つの要素を制御することよって発色する「融合発色体」の構築を行う。構成物の吸収帯と粒径を制御した際の粒子積層体の発色を評価し、天然物のような低角度依存性、特定の波長領域の光反射、高い彩度を有する構造体の構築を目指す。また、外部刺激応答能を粒子に付与し、外部刺激に対して動的な発色能を有する構造体の作製を行う。粒子の粒径、集積状態、発色性の評価に加え、耐久性の評価を行い、構成物の光吸収と構造による干渉によって発色する彩色デバイスとしての実用化を目指す。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、局在表面プラズモン共鳴を示す金属窒化物ナノ粒子をプラズモン吸収源とし、酸化物と組み合わせたコア-シェル型粒子の作製に取り組んだ。ZrNナノ粒子をプラズモン吸収源として用い、SiO2-ZrN core-shell粒子、および、ZrN-SiO2 core-shell粒子を作製することに成功した。 作製したSiO2-ZrN core-shell粒子はプラズモン吸収を示すことを確認した。SiO2-ZrN core-shell粒子積層膜は、コアとして用いたSiO2粒子の粒径増加に伴い反射スペクトルにおける極大波長が長波長側にシフトすることを確認した。さらに、反射スペクトルにおける極大波長がShellとして用いているZrNナノ粒子の吸収波長である700 nmに近づくほど、反射率が低下することが分かった。このことから、SiO2-ZrN core-shell粒子積層膜は、構成する粒子の積層構造に基づく構造色と、プラズモン吸収による吸収が組み合わされた「混色効果」を発現する材料となることが分かった[Shinji Noguchi, et al., Advanced Optical Materials, 2024, 2400287.]。 ZrN-SiO2 core-shell粒子は、ZrNナノ粒子の周囲にSiO2を成長させることにより作製した。反応時間によってShell厚さが調整可能であり、比較的粒径の揃った真球状のZrN-SiO2 core-shell粒子が得られることが分かった。また、ZrN粒子周囲がSiO2にコートされた場合であっても、SiO2 Shellの厚さが250 nm程までの場合、ZrN-SiO2 core-shell粒子は局在表面プラズモン共鳴による波長吸収を示すことが分かった[Shinji Noguchi, et al., under revision.]。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、当該年度は金属窒化物ナノ粒子の周囲にSiO2を成長させたZrN-SiO2 core-shell粒子の作製とその光学特性を評価することを計画していたが、これに加え、SiO2粒子の周囲にZrNナノ粒子を付着させたSiO2-ZrN core-shell粒子を作製することに成功し、それぞれの作製法、および、光学特性を論文として発表することができたため。 SiO2-ZrN core-shell粒子の作製に関して、シリカ粒子の周囲に金属ナノ粒子を付着させてコア-シェル化させた研究例があるが、同様の手法では金属窒化物ナノ粒子をシリカ粒子の周囲に付着させてコア-シェル化させることは困難であった。これは金属ナノ粒子と金属窒化物ナノ粒子における表面電荷の差によるものであると考えている。しかし、本研究では、シリカ粒子への修飾法を工夫することにより、金属窒化物ナノ粒子をシリカ粒子表面に付着させ、コア-シェル粒子の作製を達成した。また、作製したSiO2-ZrN core-shell粒子は、単分散性が高く、局在表面プラズモン共鳴を示すため、粒子積層体において、構造色とプラズモン吸収が組み合わされた「混色効果」を示すことを確認することができた。 ZrN-SiO2 core-shell粒子の作製に関しては、Stober processを使用することにより、ZrNナノ粒子の周囲にSiO2を成長させた真球状のZrN-SiO2 core-shell粒子の作製を達成した。この手法は反応時間に応じてシェル厚さを調整することができ、粒径の制御を行うことが可能である。また、ZrNナノ粒子が250 nmほどのSiO2に覆われたZrN-SiO2 core-shell粒子であっても局在表面プラズモン共鳴による吸収を示すことを確認することができた。 よって、当該年度は当初の計画以上に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、プラズモン吸収源として、TiNナノ粒子、および、HfNナノ粒子を用いたコア-シェル型粒子の作製を行い、光学特性の評価を行っていく。 TiNナノ粒子、Hfナノ粒子の作製に関しては、これまでにZrNナノ粒子を合成する手法として用いてきた固相合成によって作製することを検討している。作製したTiNナノ粒子、および、HfNナノ粒子の分散液を調製し、吸収スペクトルを測定することによって局在表面プラズモン共鳴による吸収を示すことを確認する。局在表面プラズモン共鳴を示すTiNナノ粒子、および、HfNナノ粒子をプラズモン源とし、コア-シェル化によって構造色を示す粒子の作製を行っていく。 コア-シェル化に関してはプラズモン源としてZrNナノ粒子を用いた場合と同様に、金属窒化物ナノ粒子をコアとしたコア-シェル粒子と、金属窒化物ナノ粒子をシェルとしたコア-シェル粒子の両方の作製を目指す。金属窒化物ナノ粒子をコアとしたコア-シェル粒子の作製では、液相法でコア粒子の周囲に酸化物を成長させることによりコア-シェル化を狙う。反応条件を調整することで、構造色を示すコア-シェル粒子を作製し、光学特性の評価を行う。金属窒化物ナノ粒子をシェルとしたコア-シェル粒子の作製では、コアとして用いる粒子の表面を修飾し、金属窒化物ナノ粒子を付着させることによってコア-シェル化を行う。 以上の方法によってコア-シェル粒子の作製を行い、プラズモン源として用いる金属窒化物の種類や金属窒化物の割合などが光学特性に与える影響を調べる。また、粒子を積層させることによって構造色の発現を目指し、含まれている金属窒化物によるプラズモン吸収と積層構造による構造色が組み合わされることによって生じる「混色効果」の影響を調査していく予定である。
|