研究課題/領域番号 |
23KJ0018
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分35010:高分子化学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
江部 陽 北海道大学, 総合化学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | マクロロタキサン / 環状高分子 / ポリジメチルシロキサン |
研究開始時の研究の概要 |
環状分子と線状高分子が共有結合を介さずに繋がったポリロタキサンは、超弾性を示すエラストマー材料を構築する構造体として注目されている。環状分子と線状分子の両成分が高分子鎖で構成されたロタキサン(マクロロタキサン)は、既存のロタキサンを凌駕する機能化が期待できる一方、これまで単一分子として合成された例は一つもない。そこで本研究では、マクロロタキサンを単一分子として合成する方法論の確立、構造・物性評価を行い、機能性材料への応用を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、環状高分子と線状高分子で構成されたロタキサン(マクロロタキサン)を単一分子として合成する方法論の確立と機能性材料への応用である。これを達成するため、当該年度はマクロロタキサンを単一分子として合成する方法論を検討した。具体的には、モデルポリマーとして常温で液体であるポリジメチルシロキサン(PDMS)を採用し、単環状PDMSと線状PDMS、ストッパー分子にかご状オリゴシルセスキオキサン(POSS)を用いたマクロロタキサンの合成を行った。まず、先行研究において架橋PDMS中にロタキサンの形でトラップされることが確認されている単環状PDMSを準備するため、市販のPDMS両末端をビニル基へ変換し続く閉環メタセシス反応を行った。得られた単環状PDMS中の二重結合をチオールエン反応に供することで蛍光標識分子であるピレンを結合させた。また、線状PDMSは市販のPDMSから3ステップの末端変換を行うことで両末端に複数の三重結合を有する構造として合成した。
次に、巨大なストッパー分子であるPOSSと線状PDMSの結合反応を検討するため、チオール官能基化POSSと線状PDMS末端の三重結合を用いたチオールイン反応を行った。結合反応の定量的な進行は1H NMR測定とサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定により確認した。続いて、目的であるマクロロタキサンを合成するため、単環状PDMSの存在下でPOSSと線状PDMSの結合反応を検討した。その結果、単環状PDMSの非存在下で行った結合反応の生成物と比較してSEC溶出ピークはより高分子量側へシフトしたことが確認された。したがって、単環状PDMSに線状PDMSが貫通した状態でPOSSによる封止が行われたことでマクロロタキサンが合成され、単環状PDMSの分だけ生成物の分子量が増加したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況として、単環状高分子を用いたマクロロタキサンの合成を達成した。しかし、準備した各種PDMSの分散度が広く、生成物のマクロロタキサンの分散度も広くなった。一方、開環重合によって分散度の狭い線状PDMSを調製し、分散度の影響をなるべく排除するだけでこの問題は解決できるため、今後より詳細な合成の確認と構造・物性評価を行うことができる。以上より、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、合成したマクロロタキサンの詳細な合成確認と物性測定を行う。具体的には、ロタキサン形成による熱物性の変化や、動的粘弾性測定から力学特性の変化を調査する。これにより合成的側面だけでなく物性的側面からもマクロロタキサンの合成を確認する。また、上記研究の発展として複数の環状ユニットを有する多環状PDMSを用いた場合のロタキサン合成も検討し、環の数や環の分子量を変数として合成した多環状PDMSを用いた一連のマクロロタキサンの動的粘弾性を調査する。以上を通して、任意の構造でマクロロタキサンを合成する方法論の確立を目指し、既存ポリロタキサン架橋等を凌ぐ力学特性を付与するための新たな形態のロタキサンとして材料開発へ展開する。
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