研究課題/領域番号 |
23KJ0039
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分47060:医療薬学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
上田 一奈太 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | アルデヒドオキシダーゼ / 肝細胞癌 / がん幹細胞 / バイオマーカー |
研究開始時の研究の概要 |
アルデヒドオキシダーゼ (AOX) は生体内物質の生成に広く寄与する代謝酵素であり、がんの増悪、生存率の低下と関連することが示唆されている。しかしながらAOXの発現変動に伴いがんが増悪するメカニズム、並びにAOXの調節機構および機能については不明な点が多い。また特徴的な遺伝子発現プロファイルを示すがん幹細胞 (CSC) は、自己複製能および多分化能を有することが知られている一方で、CSCにおけるAOXの役割を評価した報告は皆無である。そこでCSCにおけるAOXの発現量および機能を調査することで、がんの予後を評価する新規バイオマーカーおよび治療標的としての有用性の評価を行う。
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研究実績の概要 |
正常組織におけるアルデヒドオキシダーゼ (AOX) の発現量が最も多い肝臓に着目し、がんの発生並びに増悪におけるAOXの機能を評価することを目的とした。これまでに、がんゲノムデータベースであるTCGA-LIHCの解析により、がん細胞では正常細胞と比較してAOXのmRNA量が減少しており、またAOXの発現量と生存率には正の相関が見られることを確認している。また、肝臓がん由来細胞株であるHepG2 細胞では、ヒト新鮮肝細胞であるPXB 細胞と比較しAOXのタンパク質発現量が低下していることを明らかとしている。 そこでAOX過剰発現HepG2細胞を作製し、浸潤能並びに細胞増殖に与える影響を評価した。その結果、AOX遺伝子の導入に伴う発現量の増加を確認できた一方で、増殖能およびマトリゲルを基底膜とした際の浸潤能は変化しないことが示唆された。また血清飢餓培地における生存率および肝がん薬物治療に用いられるシスプラチン、ソラフェニブに対する感受性を評価したが、いずれもAOX過剰発現による変化は見られなかった。そこでマイクロアレイにより得られた遺伝子発現情報を用い、Pathway解析並びにGO解析を行うことで、AOXの過剰発現に伴う機能変化を調査した。その結果、DNA修復機構および脂質代謝に関わる遺伝子群に変動が起こる可能性を見出した。 また肝がん細胞におけるAOXの発現量の調節機構を解明すべく、DNAメチル化阻害剤であるアザシチジンを添加することでHepG2細胞におけるAOX 発現量が増大することを確認した。このことから、肝臓組織のがん化に伴うAOX量の変化にはエピジェネティクスの異常が影響していることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
がん細胞におけるAOX発現量の調整機構の一部を明らかにしている一方で、これまでの細胞モデルの評価に注力していたため、当初の研究計画に記載していた、肝がん幹細胞におけるAOXの発現並びに機能の検討が予定より遅れている状況である。現在マイクロアレイにより得られた知見を踏まえ、引き続きAOXの生理的機能の検討を行うと共に、がん幹細胞特性を有する細胞群におけるAOX発現の評価を行うためのモデル作製を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として1)AOXの発現に伴うアポトーシス並びに細胞周期、脂質代謝能への影響および2)ヒト正常肝細胞におけるAOXノックダウンに伴う生理機能変化を評価することで、がんの増悪およびがんの発生に関わる疾病との関連も含めて検討を進める。また3)既知のがん幹細胞マーカーを発現するがん幹細胞群におけるAOX発現量との相関、並びに4)AOXの発現に関わる遺伝子領域におけるメチル化レベル並びに転写因子の調査を目的として、肝がん幹細胞におけるAOXの機能について種々検討を進める予定である。またこれまでの研究成果を論文や学会発表により公表していきたいと考えている。
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