研究課題/領域番号 |
23KJ0052
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分37010:生体関連化学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
浦上 彰吾 北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | MALDI / O結合型糖鎖 / 質量分析 / 糖タンパク質 / O抗原 |
研究開始時の研究の概要 |
糖鎖の構造変化は疾患の予測や診断における重要な指標(バイオマーカー)であり、特にシアル酸・硫酸など酸性成分含有O結合型糖鎖の異常は、様々な疾患に伴うバイオマーカーの対象として期待されている。本研究では、硫酸・シアル酸など酸性成分を有するO結合型糖鎖に対し、迅速かつ精密な網羅的解析法を開発する。これまでの研究で開発した手法である糖鎖選択的MALDI-ISD MSを利用し、新たに酸性成分を有する低分子領域の測定に適したマトリックスを開発することで、上記課題に取り組む。
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研究実績の概要 |
本研究では、糖鎖選択的MALDI-ISDを用いることで、硫酸・シアル酸などの酸性成分の欠損を防ぐ、迅速かつ精密なO結合型糖鎖の網羅的な解析法を確立することを目的とした。そこで、まずは中性成分のO結合型糖鎖を有する糖ペプチド・糖タンパク質に対し、MALDIマトリックスの最適化を行った。分析物は、当研究室で合成されたコア1構造のO結合型糖鎖を有する糖ペプチド、そしてブタ胃由来のムチン型の糖タンパク質を利用した。これらの分析物に対し、DHB、CHCA、SA、DANなどを含めた数百種類の組み合わせのマトリックスを作成し、測定・解析を行った。測定結果は、検出されるO結合型糖鎖のピーク数・感度・強度・S/N比・ノイズ低減・分解能等、分析条件の各要素に分割して系統的に評価を行った。これらの各要素を基にマトリックスの最適化を行った。その結果、様々なマトリックスにおいて、糖鎖選択的MALDI-ISDを用いた、O結合型糖鎖の迅速な測定が可能であるということが新たに判明した。インソース分解によって切断されたO結合型糖鎖は、BイオンとCイオンの二つに分割され検出された。O結合型糖鎖の検出を可能にしたマトリックスの中で、AHB/NaというマトリックスはS/N比・ノイズ低減・分解能という要素において特に優れており、O結合型糖鎖の測定に適したマトリックスであることが判明した。これらの成果は、国内学会での口頭発表、そして査読付き論文への掲載を行った。また、糖鎖を選択的に検出する技術を応用し、微生物のO抗原における新規測定法の開発を行った。分析物として、O1、 O6、O157のO抗原を持つ大腸菌株を用意し、迅速にO抗原を解析する前処理方法を検討した。その結果、一時間以内に大腸菌のO抗原糖鎖パターンを検出することに成功した。以上の内容について、国際学会でポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、タンパク質に結合するO結合型糖鎖に対し、①MALDI-ISD MSによる測定の実現②切断パターンの解明③マトリックスの最適化の三つを計画していた。本期間では酸性成分の測定には対応できていないものの、中性成分のO結合型糖鎖に対し、迅速・簡便な測定を達成した。 また、今回得られたMALDI法による糖鎖測定の知見を活かし、大腸菌のO抗原(O1, O6, O157)の測定を行った。その結果、コロニーから一時間以内にO抗原を直接測定することに成功した。O抗原は臨床現場における重要な検査対象である。本手法はプローブを利用しないO抗原同定法であり、従来の生化学試験やPCR試験による抗原同定法からの転換が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
申請書に記載した研究計画に大きな変更はなく、今回得られたマトリックスの知識を活かし、酸性成分の測定に適したマトリックスの探索に取り組む。 また、選択的に糖鎖成分を検出する技術を基に、広範な生物種や対象サンプルに対する、迅速・簡便な測定法を探索していく。
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