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その場観察技術による多成分系拡散現象の解明とリチウム電析機構の包括的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ0054
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分36020:エネルギー関連化学
研究機関北海道大学

研究代表者

亀水 豪  北海道大学, 工学院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
2025年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2024年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2023年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
キーワードリチウム / 次世代電池 / 拡散現象 / その場観察
研究開始時の研究の概要

本研究の観察対象は、次世代蓄電池材料として最も有望視されているLi金属である。本研究によりLi電析現象の包括的な理解が得られれば、金属Li負極を用いたLi硫黄電池やLi空気電池などの次世代蓄電池実現に向けて大幅な技術的前進が見込まれる。本研究が基礎となり、日本での再生可能エネルギーを用いたスマートグリッド構築やカーボンニュートラル実現にも寄与するものと考えられる。

研究実績の概要

充放電反応に伴う電解質中の物質移動現象を理解することは、高エネルギー密度を有する次世代蓄電池を開発する上で不可欠である。本年度ではまず、ホログラフィック干渉法を使用し、印加電流停止後の濃度勾配緩和の様子をリアルタイム観察した。濃度プロファイルの解析により、アノード/カソード両電極近傍における溶質の拡散係数を算出した。セルのカソード側よりもアノード側の方が拡散係数が小さかった。これは、拡散層内の電解質の粘度によるものであると考えられる。この粘度効果により、濃度勾配の緩和中に濃度プロファイルが非対称になる原因となった可能性がある。
次に、電流の逆転および再逆転の下で、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(LiFSA)とテトラグリム(G4)の等モル混合物からなる高濃度電解質(HCE)内のLi+の輸送について調査した。Li電極から0-600 μmの距離の電解質の濃度プロファイルは、in-situレーザー干渉法を用いて得られた。これらのプロファイルから、Li+の輸率とLiFSAの拡散係数を算出した。ラマン分光法により、電解質内のLi+イオンを取り巻く配位構造が輸率に寄与していることが示唆された。一次元の非定常拡散方程式および有限差分法が、濃度プロファイルを見積もるために採用された。測定値と見積もり値の間の最大誤差率は約3%だった。干渉計測の精度と妥当性を確認した。HCE内のLiイオン転送に関する我々の所見は、電解質の高いカチオン移動数および充放電率を有する高エネルギー密度Liイオン電池の合理的な設計を促進することができるであろう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

特別研究員として立案した研究は、当初の計画を上回る速度で進展している。金属電析における核形成モデルでは、溶液中をイオンが拡散し、電極表面で電子を得て吸着した原子が表面拡散をし、ステップやキンクに辿り着くことで核発生・結晶成長、デンドライトへと発達する。本研究では観察対象をリチウム(Li)とし、反応の起点であるリチウムイオン(Li+)の拡散現象やそのイオン配位構造が、核形成やLiデンドライト成長、またSEI皮膜形成に及ぼす影響を解明することを目的としている。当初、特別研究員初年度の令和5年度(本年度)は拡散現象のみを考察する予定であった。しかし、研究が予想以上に進展したため、令和6年3月現在、令和6年度に実施予定だったLi析出物観察に取り掛かっている。本年度分の成果をまとめた論文は現在、学術雑誌による査読中である。翌年度の早い段階で受理されるものと見込んでいる。また本年度は10月初旬から1月中旬まで3か月半、研究のため、イギリスのオックスフォード大学に滞在した。海外の研究者との議論を通じて専門領域に関する理解を深め、彼らとの交流を通じて共同研究を実現させるのが目的であった。海外渡航の予算には、特別研究員として支給された研究奨励金、および科学研究費を原資とした。それらだけでは金額が不足し、最終的には身銭を数万円程度切った。イギリスでの研究経験が日本帰国後における研究活動の更なる加速に貢献するものと期待した上での出資である。実際、今までにない視点からの指摘を受けて自身の研究に新たな展開をもたらせられたり、研究意欲が昂じて論文執筆や専門知識の収集が一段と加速したりするなどといった好影響があった。令和6年度も5年度に引き続き、国民の皆様からの期待に応えられるよう、研究分野の最全線にて研究成果を出していきたい。

今後の研究の推進方策

今後の研究方針は、金属電析における核形成モデルをさらに深化させることにある。特にリチウムイオン(Li+)の拡散現象や配位構造に注目し、それが核形成、Liデンドライト成長、SEI皮膜形成にどのように影響を及ぼすかを解明することを目的とする。そのために、電流密度、印加電圧、電解液組成などの変数を詳細に調査し、Liデンドライト化のメカニズムを明らかにする。また、国内外での学会参加や論文発表を通じて、研究成果の共有とフィードバックの獲得を目指す。イギリスのオックスフォード大学での研究滞在経験を活かし、国際的な研究ネットワークを更に強化し、共同研究の機会を増やしていく。得られた知見を基に、実用化に向けた応用研究へと展開していく計画である。研究の進展とともに、科学技術の発展に貢献し、社会的な課題の解決に寄与することを目指している。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] In situ observation of the formation and relaxation processes of concentration gradients in a lithium bis(fluorosulfonyl) amide-tetraglyme solvate ionic liquid using digital holographic interference microscopy2023

    • 著者名/発表者名
      Go Kamesui, Kei Nishikawa, Mikito Ueda, Hisayoshi Matsushima
    • 雑誌名

      Electrochemistry Communications

      巻: 151 ページ: 107506-107506

    • DOI

      10.1016/j.elecom.2023.107506

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 干渉計による電気化学反応に伴う溶媒和イオン液体中での濃度分布測定とLi+輸率の算出2023

    • 著者名/発表者名
      亀水 豪, 西川 慶, 上田 幹人, 松島 永佳
    • 学会等名
      2023電気化学会秋季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 高濃度電解液中でのリチウム電析に伴う電極近傍での濃度場測定2023

    • 著者名/発表者名
      亀水 豪, 西川 慶, 上田 幹人, 松島 永佳
    • 学会等名
      2023年度日本金属学会・日本鉄鋼協会両北海道支部合同サマーセッション
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] In-Situ Observation of the Formation and Relaxation Processes of Concentration Gradients in a Lithium Bis(fluorosulfonyl) Amide-Tetraglyme Solvate Ionic Liquid Using Digital Holographic Interference Microscopy2023

    • 著者名/発表者名
      Go Kamesui, Kei Nishikawa, Mikito Ueda, Hisayoshi Matsushima
    • 学会等名
      244th ECS Meeting
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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