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注意欠如・多動症(ADHD)のモデルを身体性の視点から構築する―病態から治療まで

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ0064
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分59030:体育および身体教育学関連
研究機関北海道大学

研究代表者

河野 友勝  北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
キーワードADHD / 認知科学の哲学 / 身体性認知 / 現象学 / ボディーワーク / 身体教育 / フェルデンクライス・メソッド / マインドフルネス
研究開始時の研究の概要

20世紀後半以降の心の科学的研究の高い生産性を支えてきたのは、計算機のメタファーという概念枠組みであった。そこでは脳は計算機のハードウェア(CPUやメモリ)に、心はソフトウェアに喩えられる一方、脳以外の身体は単なる入出力装置にすぎないとして、しばしば軽視・捨象されてきた。現代の心の科学的研究の多くはこの概念枠組みの影響下にあり、注意欠如・多動症(ADHD)の研究も例外ではない。 本研究では、ADHDの病態を身体性(の認知科学および哲学)の視点からモデル化し、さらにその病態モデルに基づいてADHDの新たな治療論の構築を試みる。

研究実績の概要

本研究の目的は、身体性の認知科学の哲学の理論的視点、および身体教育(ボディーワーク)の実践的視点から、実証的(実験心理学的)に検証可能なADHDの病態モデル、および、そのモデルに基づいた治療論を構築することにある。
2023年度は、(A) フェルデンクライス・メソッドなどの具体的な身体教育技法を学ぶことを通じて、ADHD者を含むヒトの身体性についての実践的理解を深める;(B) 「身体性の認知科学の哲学」の視点からADHDの病態についての理論的考察を深める;(C) 2024年度に予定されている実験心理学系の研究室への留学のための準備を行う、の3つを研究計画としていた。

(A)に関して、本年度中、研究代表者はフェルデンクライス・メソッドの身体教育セッションを継続的に受講した。また、研究の一環として、昨年度に取得した身体教育の民間資格のもと約30名のクライアントに対し身体教育のセッションを行う経験を得た。これらの実践の積み重ねからは、焦燥感などの一般には心理的なものとされている諸症状が、実のところは身体に由来するものであり、それゆえ身体教育技法によって改善する可能性がある、ということが示唆された。
(B)については、研究代表者は受入研究者のほか、東海大学の田中彰吾教授と定期的にディスカッションを行い、現象学や身体性の認知科学などの哲学的視点からADHDの病態についての今後の研究に繋がるアイディアを得ることができた。一例として、「メルロ=ポンティの身体図式論の視点からADHDの身体経験を捉える」という新たなアイディアが得られた。
(C)について、ベルギー・Gent大学の認知心理学者・Jan R Wiersema教授のもとで数日間の研究滞在を行い、研究代表者の研究についてディスカッションする機会を得ることができた。また、この短期滞在を足掛かりとして、次年度の長期滞在の許可も得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度の目標は【研究実績の概要】で述べたとおり:(A) フェルデンクライス・メソッドなどの具体的な身体教育技法を学ぶことを通じて、ADHD者を含むヒトの身体性についての実践的理解を深める;(B) 「身体性の認知科学の哲学」の視点からADHDの病態についての理論的考察を深める;(C) 2024年度に予定されている実験心理学系の研究室への留学のための準備を行う、の3つであった。

(A)については、昨年度に取得していた身体教育技法の民間資格のもとでクライアントに対して自らベーシックな身体教育セッションを実施できる程度の実践的理解にひとまず達することができた。なおかつ身体教育セッションの自験例についての学会症例発表も実現できた。
(B)については、「身体性の認知科学の哲学」の古典であるメルロ=ポンティ(MP)の『知覚の現象学』を、「ADHDの身体性」という本研究固有の現代的な問題意識に引きつけながら読み進めていった結果、MPの身体図式論がADHDの病態を深く理解する上で有用な理論であるという可能性に気がつくことができた。それと同時に、「運動学習」のような体性神経系に関連する身体経験のみを考察対象としていたMPの身体哲学(身体図式論)は、ADHD者の身体経験を十全に捉えるための理論としては限界があるため、「休息」や「ストレス反応」のような自律神経系に関連する身体経験をも扱える形にアップデートする必要があるということにも気がつくことができた。言い換えれば、本研究の基盤となりうる理論的枠組みそれ自体の持つ限界や課題を認識することができた。
(C)については、今後の本研究推進にとってのキーパーソンの一人であるGent大学・Wiersema教授より2024年度秋の長期研究滞在の許可を得ることができた。
以上から、本研究はおおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

本研究の目的は、身体性の認知科学の哲学の理論的視点、および身体教育(ボディーワーク)の実践的視点から、実証的(実験心理学的)に検証可能なADHDの病態モデル、および、そのモデルに基づいた治療論を構築することにある。

2024年度前半は、2023年度から引き続き東海大学・田中彰吾教授の協力を得つつ、「身体性の認知科学の哲学の理論的視点」からADHDの身体性についての英語学術論文の執筆を進め、英語圏の哲学系論文誌に投稿することを目標とする。

更に2024年度後半には、研究のフェーズを理論的・哲学的なフェーズから「実証的(実験心理学的)に検証可能なADHDの病態モデルの構築」という実証的なフェーズへと徐々移してゆく予定である。このために、【研究実績の概要】に記した通り、べルギー・Gent大学の認知心理学者・Jan R Wiersema教授のもとで長期研究滞在を行うことが決まっている(2024年秋に3ヶ月間の滞在を予定)。現時点で研究代表者は「自律神経系」と「認知的努力」の2つが、ADHDの身体性を実験心理学的な視点から明らかにしていく上で鍵となる概念だと予想している。Wiersema教授はADHDを専門とする実験心理学者であり、なおかつADHDの自律神経系や認知的努力に関連する心理学的な研究業績を有しており、また、Cognitive Effort Projectという認知的努力についての研究グループの長を務めてもいる人物である。そのような研究者・研究グループのもとで研究を行うことで、本研究課題の実現可能性がより高まってゆくことが期待できる。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Reduction of a depressed mood and anxiety in a previously healthy 23-year-old male university student: A Yielding Embodiment(R) Orchestration case report2023

    • 著者名/発表者名
      Tomokatsu Kono, Masanori Nakahara
    • 学会等名
      40th Annual International Human Science Research Conference
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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