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液体の動的濡れ広がり過程時に生じる局所的熱流をミクロから解き明かす

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ0090
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分19020:熱工学関連
研究機関東北大学

研究代表者

楠戸 宏城  東北大学, 流体科学研究所, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
キーワード動的濡れ現象 / 分子動力学法 / 熱流解析 / すべり
研究開始時の研究の概要

撥水・親水といった言葉で評価される濡れ現象幅広い工学分野で現れる現象であり,特に近年ではナノスケールにおける濡れの動的挙動の制御が求められている.動的濡れ,すなわち接触線が固体壁面上を動的に移動する際に前進側と後退側でその接触角が異なることは知られるが,その支配原理は完全には解明されておらず,ミクロスケールとマクロスケールを矛盾なく接続する動的濡れモデルは未だない.そこで本研究では,現実世界への知見の還元を踏まえ水といった実在流体を用いた分子動力学解析を行い,接触線の前進・後退の差異を,熱的観点から明らかにする.

研究実績の概要

マクロスケールの平衡状態の濡れ,すなわち静的濡れにおいては,固体表面上における固気液三相の交線である接触線に対して固気・気液・固液の界面張力がつり合うことで固体面と気液界面の成す角である静的接触角が決定される.一方,接触線が固体面上を動的に移動する動的濡れ現象においては,接触線近傍における固液の摩擦力や液体内部の粘性によりその動的接触角は静的接触角から変化することが知られる.これまでの研究により,非平衡分子動力学(NEMD)シミュレーションを用いたLennard-Jones(LJ)流体からなる動的接触線近傍における熱流解析により,バルク部では粘性散逸により発熱する一方,前進接触線・後退接触線では流跡線に沿った内部エネルギー変化によって各々発熱・吸熱することがわかっている.本研究では,現実世界への還元性の高い水の解析にも着手し,水からなる動的接触線近傍の温度分布を解析することで,LJ流体の場合と同様の発熱・吸熱現象が生じることがわかった.
さらに,ナノスケールにおける物質輸送において重要である固液界面におけるすべりに関する解析も進めており,特に固体と液体間の速度差であるすべり速度と摩擦力の比である固液摩擦係数の算出が重要である.Couette流系を用いたNEMD解析では,摩擦力とすべり速度を直接計算することで摩擦係数の算出が可能となるが,ミクロな系ではすべり速度の定義には任意性がある.そのため本研究では,固液間の摩擦力による散逸に関してミクロスケールとマクロスケールを接続することで,Couette流系で熱的観点からすべり速度・固液摩擦係数を定義する方法を提案した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

通常は偏微分で記述されるマクロのエネルギー保存則を,物質微分を用いて書き換えることで,流体の発熱・吸熱現象は応力の仕事だけでなく流跡線に沿った内部エネルギー変化によることが分かった.さらに,Lennard-Jones(LJ)流体からなる動的接触線について,さまざまな濡れ性・壁面速度においても,バルク部では前者の粘性散逸が支配的である一方,動的接触線近傍においては後者の内部エネルギー変化の項が支配的であることを示した.この研究成果については国際学会誌で発表済みである.また,水からなる動的接触線の解析について,LJ流体とは異なり,Coulomb力に起因する電気的影響の考慮が難しいが,前述の流跡線に沿った内部エネルギー変化に起因する発熱・吸熱項は流体分子の持つエネルギーおよび軌跡がわかれば計算可能であるため,解析を進めている段階である.
以上により,動的濡れ現象特有の熱輸送現象に関する解析だけでなく,固液界面のすべりに関する解析も進めている状況であるため,本研究はおおむね順調に進展している.

今後の研究の推進方策

本年度の研究で,水からなる動的接触線近傍で生じる発熱・吸熱現象は,温度分布を計算することで定性的にはわかったが,定量的な解析には至っていない.そこで次年度は,前述の流跡線に沿った内部エネルギー変化に起因する発熱・吸熱項は流体分子の持つエネルギーおよび軌跡がわかれば計算可能であるため,その解析を引き続き進める.
また,本年度の研究では,平滑面上の濡れ・滑りしか取り扱えていないため,次年度は,凹凸を有するようなより実在的な壁面上の現象を取り扱う.

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] リヨン第一大学(フランス)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] The receding contact line cools down during dynamic wetting2023

    • 著者名/発表者名
      Kusudo Hiroki、Omori Takeshi、Joly Laurent、Yamaguchi Yasutaka
    • 雑誌名

      The Journal of Chemical Physics

      巻: 159 号: 16 ページ: 161102-161102

    • DOI

      10.1063/5.0171769

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] NEMD系における固体流体間のすべり速度の抽出(ミクロスケールとマクロスケールにおける摩擦熱の表式)2023

    • 著者名/発表者名
      楠戸宏城,大賀春輝, 山口康隆
    • 学会等名
      日本機械学会 熱工学コンファレンス2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] NEMD系の固体液体界面における散逸に基づいた摩擦係数の抽出2023

    • 著者名/発表者名
      楠戸宏城,大賀春輝, 山口康隆, 菊川豪太
    • 学会等名
      第37回数値流体力学シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Thermal difference in advancing and receding contact lines: insight from MD simulation2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroki KUSUDO, Takeshi OMORI, Laurent JOLY
    • 学会等名
      ASME-JSME-KSME Joint Fluids Engineering Conference 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Thermal distinction in advancing and receding contact lines: Insight from MD simulation2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroki KUSUDO, Takeshi OMORI, Laurent JOLY
    • 学会等名
      8th Micro and Nano Flows Conference
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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